ことわざ 慣用句

寝た子を起こす

(ねたこをおこす)

すでに解決して落ち着いている物事に余計な手出しをして、再び厄介な騒ぎを引き起こすこと。


7文字の言葉 / 「ね」から始まる言葉
寝た子を起こす ことば
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意味

「寝た子を起こす(ねたこをおこす)」とは、そのままにしておけば何ごともなかったはずなのに、余計な手出しをしたせいで、収まっていた厄介ごとを再び引き起こしてしまうという意味です。
単にトラブルを作るだけでなく、「せっかく収まっていたのに」という、周囲の落胆やあきれた気持ちが含まれるのが特徴です。静かにしておくのが一番であるという教訓も込められています。

語源・由来

「寝た子を起こす」は、ぐっすりと眠っている子供を起こす日常の光景から生まれた言葉です。

すやすやと眠っている赤ん坊や子供を無理に起こせば、機嫌を損ねて激しく泣きわめき、再びあやすために多大な労力が必要になります。
この様子を、社会的なトラブルや人間関係のいざこざに例え、静かに収まっている問題には手を出さないのが一番であるという戒めとして使われるようになりました。

使い方・例文

「寝た子を起こす」は、余計な一言や不必要な行動によって、平穏な空気が壊される場面で使われます。
特に「わざわざ」「今さら」といった、お節介であることを強調するニュアンスを伴うことが多い言葉です。

  • 終わった議題を蒸し返して寝た子を起こすような真似は避けるべきだ。
  • 「過去の失敗を責めるのは、寝た子を起こすだけだよ」と友人をたしなめた。

誤用・注意点

この言葉はネガティブな結果を招く行為に対して使われるため、「眠っている才能を開花させる」といった肯定的な意味で使うのは誤りです。

また、周囲の人に対して直接使うと「あなたのせいで事態が悪化した」という強い非難の意味になってしまうため、相手との関係性や発言する場には注意が必要です。

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類義語・関連語

「寝た子を起こす」と似た意味を持つ言葉には、余計な行いを戒める表現が並びます。

  • 藪をつついて蛇を出す(やぶをつついてへびをだす):
    余計なことをして、自ら災いを招くこと。
  • 触らぬ神に祟りなし(さわらぬかみにたたりなし):
    関わりさえしなければ災いを受けることはないので、余計な手出しはしないほうがよいということ。
  • 蒸し返す(むしかえす):
    一度解決した事柄を、再び問題にすること。
  • 波風を立てる(なみかぜをたてる):
    もめごとを起こすこと。

英語表現

Let sleeping dogs lie

直訳:寝ている犬はそのままにしておけ。
意味:わざわざ波風を立てるな、余計な手出しはするな。

I decided to let sleeping dogs lie and didn’t mention her past mistake.
(私は寝た子を起こさないことに決め、彼女の過去の失敗については触れなかった。)

差別問題で言われた「寝た子を起こすな」

大正時代に山口県社会事業協会が出した冊子『同胞融和どうほうゆうわ』(1925年)は、部落差別(歴史的に形づくられた身分差別により、特定の地域の出身であることなどを理由に受ける差別)の解消を説く中で、地方の役人たちがよく口にする言葉を書き留めています。
役人たちは、自分の村では差別はもうほとんど無くなっているので、「そんな話が出ると却つて惡るい、寢た子を起すやうなものだ」(そんな話が出るとかえって悪い、寝た子を起こすようなものだ)と言うのです。
冊子は、差別はもう無いと言うこと自体が、差別の心が取れていない証拠だと反論しています。

差別は話題にせず放っておけば自然に消える、というこの考え方は「寝た子を起こすな」論と呼ばれてきました。
1965年の同和対策審議会どうわたいさくしんぎかいの答申も、「寝た子をおこすな」式の考えに同意できないと退けています。
2016年に施行された部落差別解消推進法も、第1条で「現在もなお部落差別が存在する」と述べています。
収まった騒ぎを蒸し返すなという意味のことわざが、ここでは、まだ解決していない問題を収まったものとみなす言い方として批判されてきました。

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