呉越同舟

四字熟語 故事成語
呉越同舟(ごえつどうしゅう)

8文字の言葉こ・ご」から始まる言葉
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「犬猿の仲」と言われるほど仲の悪い二人が、偶然同じ会議室に居合わせたり、同じ電車に乗り合わせたりして、気まずい思いをした場面を見たことはありませんか。

「呉越同舟(ごえつどうしゅう)」とは、まさにそのような、仲の悪い者同士が同じ場所に居合わせること、さらに転じて、敵対していても共通の利害のために一時的に協力することを意味する言葉です。

「呉越同舟」の意味・教訓

「呉越同舟」は、二つの主要な意味を持っています。

  1. 仲の悪い者同士が、偶然同じ場所に居合わせること。
    (例:ライバル同士が同じクラスになる、敵対する政治家が同じ委員会に所属する)
  2. 仲の悪い者同士が、共通の困難や利害のために、一時的に協力し合うこと。
    (例:ライバル会社が業界全体の危機を乗り越えるために一時的に手を組む)

もともとは2の意味合いが強い言葉でしたが、現代では1の「単に同じ場所に居合わせる」という意味で使われることも非常に多くなっています。

「呉越同舟」の語源

この言葉は、中国・春秋時代の兵法書(へいほうしょ)である『孫子(そんし)』の「九地篇(きゅうちへん)」に由来する故事成語です。

当時の中国において、「(ご)」と「(えつ)」は、国境を接する宿敵同士であり、激しく憎み合っていました。

『孫子』には、「呉の人と越の人が同じ舟(舟)に乗り合わせて(同)いたとして、もしそこで大嵐に遭えば、彼らは(いがみ合っている場合ではなく)お互いに左右の手のように連携して助け合うだろう」という記述があります。

この「宿敵同士でも、共通の危機に際しては協力する」という例えが、「呉越同舟」の語源となりました。

孫子 (書物) - Wikipedia

「呉越同舟」の使い方と例文

仲が悪い二者(二人や二つのグループ)が、同じ空間にいる気まずい状況や、逆に、共通の敵や問題に対処するために一時的に手を組む状況の両方で使われます。

例文

  • 「犬猿の仲の二人が同じ部署に配属され、まさに呉越同舟の気まずい雰囲気だ。」【意味1】
  • 「あの二人が同じ飛行機に乗り合わせるなんて、呉越同舟とはこのことだ。」【意味1】
  • 「ライバル同士のA社とB社が、海外企業の市場参入に対抗するため手を組んだ。まさに呉越同舟だ。」【意味2】
  • 「共通の敵を倒すため、彼らは呉越同舟の(一時的な)契約を結んだ。」【意味2】

類義語・関連語

  • 同床異夢(どうしょういむ):
    同じ場所にいながら、内心では違う考えや目的を持っていること。「呉越同舟」が「仲が悪い」点に焦点があるのに対し、「同床異夢」は「考えが違う」点に焦点があります。
  • 犬猿の仲(けんえんのなか):
    非常に仲が悪いこと。「呉越同舟」は、そのような仲の悪い二者が「同じ場所にいる」または「協力する」という特定の「状況」を指す言葉です。

対義語

  • 水魚の交わり(すいぎょのまじわり):
    水と魚のように、切り離せないほど親密な関係のたとえ。
  • 一致団結(いっちだんけつ):
    多くの人々が同じ目的のために、心を一つにしてまとまること。「呉越同舟」の協力はあくまで一時的・利害関係に基づく点で異なります。
  • 肝胆相照らす(かんたんあいてらす):
    お互いが心の底まで打ち明け合い、深く信頼し合っている関係。

英語での類似表現

Strange bedfellows

  • 意味:「奇妙な同衾者(どうきんしゃ)、意外な仲間」
  • 解説:本来なら仲間になるはずがない(利害が対立する)人々が、一時的な共通の目的のために協力している状況を指します。「呉越同舟」の「共通の利害のために一時的に協力する」という意味合いに非常に近いです。
  • 例文:
    The alliance between the two rival companies made them strange bedfellows.
    (その二つのライバル会社間の同盟は、彼らを奇妙な(呉越同舟の)仲間にした。)
  • 補足:
    有名な “Politics makes strange bedfellows.”(政治は奇妙な仲間を生む=政治の世界では敵同士が手を組むことも珍しくない)という成句もあります。

まとめ – 呉越同舟から学ぶ「状況と協力」

「呉越同舟」は、中国の兵法書『孫子』に由来し、仲の悪い者同士が同じ場所にいたり、一時的に協力したりする状況を表す故事成語です。

宿敵であった呉と越の人々も、嵐という共通の危機の前では憎しみを忘れて助け合ったように、人間関係は絶対的なものではなく、置かれた「状況」によって変化しうることを示しています。

普段は反目し合っていても、より大きな問題の前では協力できる可能性が人間にはある、という現実的かつ深い洞察を含んだ言葉と言えるでしょう。

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