犬猿の仲

慣用句
犬猿の仲
(けんえんのなか)
短縮形:犬猿

7文字の言葉け・げ」から始まる言葉
個別解説
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顔を合わせるたびに反発し合い、極めて険悪な空気が漂う関係性。
このような深い対立状態を表すのが、「犬猿の仲」(けんえんのなか)です。

意味

「犬猿の仲」とは、お互いに激しく憎み合い、非常に仲が悪い状態という意味です。
単に気が合わないというレベルを超え、宿敵のように深い敵意や反発心を抱いている間柄を指します。

  • 犬猿(けんえん):犬と猿。転じて、極めて仲が悪いことの例え。
  • (なか):人と人との間柄。

語源・由来

「犬猿の仲」という言葉は、特定の書物に由来するものではなく、昔の日本の農村で見られた動物たちの実際の関係性から生まれました。

古くから農村部において、山から下りてきて農作物を荒らす猿は、人々にとって厄介な存在でした。
そのため農民たちは、畑や家を守るために番犬を飼育し、猿を追い払わせていました。
人間の生活圏を守ろうとする犬と、食べ物を求める猿が顔を合わせるたびに激しく威嚇し合い、喧嘩を繰り広げる姿は、当時の人々にとって日常的な光景でした。

こうした農作物をめぐる激しい対立の様子が人々の記憶に深く刻み込まれ、ひどく仲が悪い状態を表す言葉として定着しました。

また、犬と猿の不仲を表すものとして十二支の伝承が存在します。
「申(さる)」と「戌(いぬ)」の間に「酉(とり)」が入っているのは、仲の悪い両者が喧嘩しないように鳥が間に入って仲裁しているためだ、という内容です。
これは言葉の語源そのものではなく、人々の間で定着していた「犬と猿は相性が悪い」というイメージを面白おかしく説明した、後付けの解釈です。

使い方・例文

「犬猿の仲」は、長年にわたって反目し合っている個人や組織の関係性を表す場面で使われます。

  • あの二人の営業マンはライバル意識が強すぎ、今や犬猿の仲だ。
  • 隣り合うA社とB社は、長年の顧客争奪戦により犬猿の仲である。
  • かつて親友だった彼らも、些細な金銭トラブルから犬猿の仲になった。

類義語・関連語

「犬猿の仲」と同様に、互いの性質が合わず対立する関係を持つ言葉には以下のようなものがあります。

  • 水と油(みずとあぶら):
    性質が全く合わず、どうしても混じり合わない様子。
  • 氷炭相容れず(ひょうたんあいいれず):
    氷と炭火のように性質が相反し、互いに打ち消し合って調和しない状況。
  • 呉越同舟(ごえつどうしゅう):
    仲の悪い者同士が同じ場所に居合わせたり、共通の目的のために協力する状態。

「犬猿の仲」と類義語の違い

「犬猿の仲」と「水と油」はどちらも関係性の悪さを示しますが、対立の理由に決定的な違いがあります。「犬猿の仲」が激しい敵意や反発を伴うのに対し、「水と油」は単に性質や性格が合わない状態を指します。

語句対立の理由感情の度合い
犬猿の仲明確な敵意や反発激しい憎悪
水と油性質や価値観の不一致冷静な不和

対義語

「犬猿の仲」とは対照的に、非常に親密で離れがたい関係を表す言葉として以下が挙げられます。

  • 水魚の交わり(すいぎょのまじわり):
    魚と水のように、切っても切れない非常に親密な関係。
  • 竹馬の友(ちくばのとも):
    幼い頃から一緒に遊んだ、気心の知れた親しい友人。
  • 肝胆相照らす(かんたんあいてらす):
    互いに心の底まで打ち明けて、深く理解し合う間柄。

英語表現

「犬猿の仲」を英語で表現する場合、動物を使った以下のような表現が使われます。

like cats and dogs

英語圏では犬と猫が不仲の象徴であることから、喧嘩ばかりしている関係を示す表現。

They fight like cats and dogs over every little thing.
(彼らは些細なことでいつも犬猿の仲のように喧嘩する。)

at loggerheads

意見が真っ向から対立し、互いに一歩も譲らず不和の状態にあることを指すフレーズ。

The two nations have been at loggerheads for decades.
(その二国間は数十年にわたって犬猿の仲のままだ。)

なぜ桃太郎の「犬と猿」は仲が良いのか

極めて仲の悪い関係を示す「犬猿の仲」ですが、日本の昔話『桃太郎』では、犬と猿とキジが力を合わせて鬼退治に向かいます。
これは十二支の配置において、鬼門(北東の丑寅)に対抗する裏鬼門(南西の申酉戌)の動物が選ばれたという「陰陽五行説」に基づきます。
陰陽五行説とは、自然界のすべてのものを陰と陽、そして五つの要素に分けて考える古代中国の思想です。

言葉の世界では激しく反発し合う関係性であっても、魔除けという特定の配置においては最強のチームとして機能しました。
言葉の持つイメージと、思想体系の中で動物に割り当てられた役割が、全く異なる関係性を生み出しているのは興味深いことです。

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