「壮大な計画を立ててみたけれど、なんだか現実味がない……」
「見た目は立派だけど、実際には何の役にも立たないもの」
そんな状況に出くわしたことはありませんか?
「絵に描いた餅」とは、まさにそうした状況を的確に表すことわざです。
この言葉が持つ正確な意味や背景、そしてどのような場面で使われるのかを、具体的に見ていきます。
「絵に描いた餅」の意味・教訓
「絵に描いた餅(えにかいたもち)」とは、見た目は立派でも実際には役に立たない物事や、実現する見込みのない計画のことを指すことわざです。
餅は本来、食べることができ、力もつくものです。
しかし、それが「絵に描かれたもの」であれば、どんなに美味しそうに見えても、食べることはできず、何の価値もありません。
このことから、実体を伴わない見かけ倒しのものや、非現実的な計画・理論を批判的、あるいは自嘲的に表す際に使われます。
この言葉には、「計画や理想は、実行可能性が伴ってこそ価値がある」という教訓が含まれています。
「絵に描いた餅」の語源
この言葉の由来にはいくつかの説がありますが、有力なのは中国の故事「画餅充飢(がべいじゅうき)」から来ているという説です。
「画餅充飢」とは、「餅の絵を描いて、それで飢えを満たそうとする」という意味です。
当然ながら、絵の餅では空腹を満たすことはできません。
この故事から、むなしい慰めや、役に立たないことのたとえとして使われるようになり、日本で「絵に描いた餅」という形のことわざとして定着したと言われています。
使用される場面と例文
「絵に描いた餅」は、ビジネスシーンでの非現実的な企画会議、個人の壮大すぎる夢物語、あるいは口先だけで実行が伴わない約束など、さまざまな場面で使われます。
例文
- どれほど立派な経営戦略も、実行できなければ「絵に描いた餅」に過ぎない。
- 彼はいつも大きな夢を語るが、具体策がないので「絵に描いた餅」で終わりそうだ。
- マイホームの計画を立ててみたが、予算を考えると、今のままでは「絵に描いた餅」になってしまう。
類義語・言い換え表現
「絵に描いた餅」と似た意味を持つ言葉は多くあります。それぞれのニュアンスの違いを見てみましょう。
- 画餅(がへい):
「絵に描いた餅」を漢字二文字で表した四字熟語。ほぼ同じ意味で使われます。「計画が画餅に帰す(=ダメになる)」といった使われ方もします。 - 机上の空論(きじょうのくうろん):
頭の中(机の上)だけで考えた、現実離れした理論や計画のこと。「絵に描いた餅」が計画や物自体を指すのに対し、こちらは特に「理論」や「議論」に焦点が当たることが多いです。 - 砂上の楼閣(さじょうのろうかく):
砂の上に建てた立派な建物のように、基礎が不安定で長くは続かない物事のたとえ。「実現不可能」というよりは「脆さ・不安定さ」に焦点を当てた表現です。 - 取らぬ狸の皮算用(とらぬたぬきのかわざんよう):
まだ手に入れてもいない不確かな利益をあてにして、計画を立てること。計画が「非現実的」である点よりも、「期待が早すぎる」「あてが外れる」点に重点があります。
対義語
「絵に描いた餅」が「実行・実現が伴わない計画」であるのに対し、対義語としては「実行」や「堅実さ」を表す言葉が挙げられます。
- 有言実行(ゆうげんじっこう):
言ったことを必ず実行すること。「言うだけ」「計画だけ」で終わる「絵に描いた餅」とは正反対の状態です。 - 地に足がつく(ちにあしがつく):
考え方や行動が堅実で、現実的であるさま。非現実的で浮ついた「絵に描いた餅」とは対照的な態度を表します。 - 隗より始めよ(かいよりはじめよ):
大きな計画は、まず言い出した本人や身近なところから実行し始めるべきだ、という意味の故事成語。計画を実行に移すことの重要性を示す点で対照的です。
英語での類似表現
「絵に描いた餅」の「実現不可能な計画」というニュアンスは、英語でも似た表現で表されます。
- a pie in the sky
- 意味:「空に浮かぶパイ」。実現不可能な計画、かなわぬ夢、当てにならない話。
- 解説:「絵に描いた餅」と非常に近いニュアンスで使われる表現です。美味しそうだが手の届かないもの、というイメージが共通しています。
- 例文:
His plan for a flying car is just a pie in the sky.
(彼の空飛ぶ車の計画は、まさに絵に描いた餅だ。)
- ### empty promises
- 意味:「空っぽの約束」。実行されない口先だけの約束。
- 解説:「絵に描いた餅」が、特に「約束」の文脈で使われる場合にこの表現が近くなります。
- 例文:
The politician was accused of making empty promises to the voters.
(その政治家は、有権者に空約束(絵に描いた餅)をしたとして非難された。)
「絵に描いた餅」に関する豆知識
日本では古来、「餅」は単なる食べ物ではなく、お正月や祝い事などで食べられる「ハレの日」の特別な食べ物であり、生命力や力を与える神聖なものとも考えられてきました。
そのような文化的背景があるため、「餅」という言葉には「価値あるもの」「望ましいもの」という強いイメージがあります。
だからこそ、「それが“絵に描いた”ものでしかない」という事実が、理想と現実のギャップ、そして「役に立たない」ことの皮肉さや虚しさを、より一層際立たせていると言えるでしょう。
まとめ – 計画を現実に変えるために
「絵に描いた餅」は、実体を伴わない計画や、見かけ倒しのものを指すことわざです。
もちろん、壮大な夢や理想(=餅の絵を描くこと)を持つこと自体は、決して悪いことではありません。
大切なのは、その「絵」をどうやって本物の「餅」に変えていくか、です。
計画が「絵に描いた餅」で終わらないよう、具体的な行動や実行可能性を常に意識していきたいものですね。



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