意味
「絵に描いた餅(えにかいたもち)」とは、見た目だけ立派で実際には役に立たないもの、あるいは実現の見込みがない計画のたとえです。
どれほど美味しそうに描かれた餅でも、それを食べることはできず、空腹を満たすこともできません。
このことから、実体を伴わない空論や、実行不可能な理想論を批判する際に使われます。
語源・由来
「絵に描いた餅」のもとになった「画餅」は中国の古い書物に見える言葉で、なかでも歴史書『三国志』に記された、地面に描いた餅のたとえがよく知られています。
魏の皇帝である明帝が、役人を選ぶときに評判だけで人を選んではならないとして、「名は地に画きて餅を作るが如く、啖うべからざるなり」(評判は地面に描いた餅のようなもので、食べることはできない)と述べたという話です。
日本では、江戸時代前期の仮名草子に、すでに「絵にかける餅飢を癒さず」という形が出てきます。
ただ、江戸時代を通じて使われた例はそれほど多くありません。
現代ではよく使われ、とくに計画倒れの意味で新聞の社説などにも出てきます。
使い方・例文
実現性が乏しい提案を指摘したり、自分の目標が遠すぎると反省したりする際に用いられます。
ビジネスだけでなく、日常生活の些細な計画に対しても使われる表現です。
例文
- どれほど立派な経営戦略も、社員が動けなければ絵に描いた餅だ。
- 予算を考えないマイホーム計画は絵に描いた餅だと、妻にたしなめられた。
- 資格をいくつ取っても、仕事に生かせなければ絵に描いた餅だ。
誤用・注意点
「絵に描いたような幸せ」のような「絵に描いたよう」(= 理想的で申し分ない)と混同して、「絵に描いた餅のように幸せな二人」のように使うのは誤りです。
「絵に描いた餅」は、役に立たないものを批判する言葉です。
類義語・関連語
「絵に描いた餅」と似た意味を持つ言葉には、以下のようなものがあります。
- 画餅(がべい):
「絵に描いた餅」と同じことを漢語で表した言い方。
「計画が画餅に帰す」のように、努力が水の泡になる文脈でも使う。 - 机上の空論(きじょうのくうろん):
頭の中だけで考えた、現実離れした理論のこと。特に「議論」や「考え」の不備を指摘する際に適している。 - 砂上の楼閣(さじょうのろうかく):
砂の上に建てた建物のように、基礎が不安定で長くは続かないこと。
実現性よりも「脆さ」に焦点がある。 - 取らぬ狸の皮算用(とらぬたぬきのかわざんよう):
手に入るか分からない利益をあてにすること。
期待が先行しすぎている状況で使う。
対義語
「絵に描いた餅」とは対照的な意味を持つ言葉は以下の通りです。
- 有言実行(ゆうげんじっこう):
言ったことを必ず実行すること。とくに、先に口に出して宣言してからやり遂げることをいう。 - 地に足がつく(ちにあしがつく):
考え方や行動が堅実で、現実的であるさま。浮ついた計画ではない、確かな様子。 - 隗より始めよ(かいよりはじめよ):
遠大な計画こそ、まずは身近なところから実行すべきだという教え。実行の大切さを説く言葉。
英語表現
「絵に描いた餅」を英語で表現する場合、以下のようなフレーズが使われます。
pie in the sky
直訳は「空のパイ」で、当てにならない約束や、実現しそうにない夢を表す表現。
もとは1911年のアメリカの労働歌の一節で、「死んだら天国でパイがもらえる」と説くばかりで目の前の空腹を顧みない説教への皮肉。
His plan to become a billionaire overnight is just pie in the sky.
(一夜にして億万長者になるという彼の計画は、まさに絵に描いた餅だ。)
empty promises
直訳は「空っぽの約束」で、実行される見込みのない、中身のない口先だけの約束を指す際に使われる表現。
We are tired of the government’s empty promises.
(私たちは政府の空約束にはうんざりしている。)
三国志の「餅」は小麦粉の食べ物

(写真:Xiaopihar、Wikimedia Commons/CC BY-SA 4.0)
明帝が「地面に描いた餅」と言ったときの「餅」は、日本のもちとは別の食べ物です。
中国で「餅(ピン)」といえば、小麦粉をこねて平たく丸く作ったもので、焼いたものも蒸したものも煮たものも含みます。
中秋節に食べる月餅も、この仲間です。
一方、もち米を蒸してついた日本のもちのような食べ物は、中国では主に南の地方のもので、「糍」や「餈」という別の字で呼ばれます。
もち米をついたものに「餅」の字をあてるのは日本独自の使い方で、日本人が「絵に描いた餅」と聞いて思い浮かべるもちは、明帝のたとえの「餅」とは別の物です。
















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