卵を見て時夜を求む

ことわざ 故事成語
卵を見て時夜を求む(たまごをみてじやをもとむ)

12文字の言葉た・だ」から始まる言葉
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まだ手に入れてもいないのに、未来の利益をあれこれと計算してしまった経験はありませんか。
そんな、少し気が早すぎる状況を的確に表すことわざが「卵を見て時夜を求む」です。

今回は、「卵を見て時夜を求む」の正しい意味や語源、現代における使い方を、具体的な例文とともに分かりやすく解説します。
類義語や対義語、英語表現もあわせてご紹介しますので、この機会に言葉の理解を深めていきましょう。

「卵を見て時夜を求む」の意味・教訓

「卵を見て時夜を求む(たまごをみてじやをもとむ)」とは、物事がまだ実現していないうちから、それを当てにして早まった期待を抱くことの愚かさを戒めることわざです。

手元にある「卵」が鶏になり、朝を告げる「時夜(じや)」(夜明けを知らせる鶏の鳴き声)を性急に期待する様子から、順序を飛び越えて結果を求める浅はかさを諭しています。
計画性も大切ですが、時期尚早な期待は禁物であるという教訓が込められています。

「卵を見て時夜を求む」の語源

このことわざの出典は、中国の戦国時代の思想書『荘子(そうじ)』の「斉物論(せいぶつろん)」にある一節です。

原文には、人間がいかにせっかちで、物事の一面だけを見て判断しがちかを示すたとえとして、「卵を見れば時を告げる鶏を期待し、弾き弓を見れば鳥の丸焼きを期待する」といった内容が記されています。
この部分から、あまりに気が早いことのたとえとして使われるようになりました。

使用される場面と例文

ビジネスシーンで性急な利益計算を諫めたり、日常生活で不確かな未来に期待しすぎる人を諭したりする場面で使われます。少し硬い表現ですが、計画の甘さや時期尚早な判断を指摘する際に効果的です。

例文

  • 「まだ契約も済んでいないのに、利益の分配を話すのは『卵を見て時夜を求む』の類だよ。」
  • 「宝くじを1枚買っただけで当選後の生活を計画するのは、まさに『卵を見て時夜を求む』だね。」
  • 「企画書が承認されただけで、プロジェクトの成功を確信するなんて、『卵を見て時夜を求む』というものだ。」

類義語・言い換え表現

「卵を見て時夜を求む」には、似た意味を持つ言葉がいくつかあります。それぞれのニュアンスの違いを理解して使い分けましょう。

  • 捕らぬ狸の皮算用(とらぬたぬきのかわざんよう):手に入るかどうかも分からない不確かな利益を当てにして、様々な計画を立てること。金銭的な計算のニュアンスが強い表現。
  • 飛ぶ鳥の献立(とぶとりのこんだて):まだ捕まえてもいない空を飛ぶ鳥を、どう料理しようかと考えること。実現性が極めて低いことに対する計画を指す。
  • 絵に描いた餅(えにかいたもち):見た目は立派だが、実際には役に立たないもののたとえ。計画が具体的でなく、実現可能性が低い状況を指す。

対義語

性急な期待とは反対に、慎重さや事前の準備の大切さを示すことわざが対義語として挙げられます。

  • 石橋を叩いて渡る(いしばしをたたいてわたる):非常に用心深く物事を進めることのたとえ。
  • 転ばぬ先の杖(ころばぬさきのつえ):失敗しないように、前もって十分に準備をしておくことの重要性を説く言葉。
  • 備えあれば患いなし(そなえあればうれいなし):普段から準備を万全にしておけば、万一の事態が起きても心配することはないという意味。

英語での類似表現

英語にも、このことわざと非常によく似た意味を持つ表現があります。

Don’t count your chickens before they hatch.

文字通り「卵が孵化する前に鶏を数えるな」という意味で、「卵を見て時夜を求む」や「捕らぬ狸の皮算用」に相当する最も一般的な英語表現です。

  • 例文
    She was already planning how to spend the prize money, but I told her, “Don’t count your chickens before they hatch.”
    (彼女はもう賞金の使い道を計画していたが、私は彼女に「捕らぬ狸の皮算用はやめなよ」と言った。)

まとめ – 「卵を見て時夜を求む」から学ぶ現代の知恵

「卵を見て時夜を求む」は、物事の順序を無視して性急に結果を求めることの愚かさを教えてくれる、示唆に富んだことわざです。

未来を予測し計画を立てることは、目標達成のために不可欠です。しかし、不確かな要素が多い段階で過度な期待を抱けば、現実とのギャップに落胆しかねません。
この言葉は、一歩一歩着実に進むこと、今なすべきことに集中する大切さを、現代の私たちにも思い起こさせてくれます。

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