泥棒を捕らえて縄を綯う

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ことわざ
泥棒を捕らえて縄を綯う
(どろぼうをとらえてなわをなう)
短縮形:泥縄(どろなわ)/泥縄式
異形:泥棒を見て縄を綯う

14文字の言葉と・ど」から始まる言葉
【個別】ことわざ・慣用句・四字熟語

試験の前日になって慌てて教科書を開いたり、旅行の当日の朝になってパッキングを始めたり……。そんな「もっと早くやっておけばよかった!」というドタバタ劇を経験したことはありませんか?

「泥棒を捕らえて縄を綯う」は、そんな私たちの「準備不足」や「一夜漬け」の危うさを、ユーモラスかつ痛烈に指摘することわざです。

「泥棒を捕らえて縄を綯う」の意味

事が起こってから、慌ててその対策や準備を始めることのたとえ。

  • 綯う(なう):糸やわらをより合わせて、縄や紐を作ること。

本来であれば、泥棒を捕まえる前に、縛るための縄を用意しておかなければなりません。しかし、泥棒を取り押さえた後になってから「さて、縛る縄を作ろうか」とわらを編み始める様子から、準備が悪く、間に合わないことや、手遅れであることを意味します。

このことわざは、一般的に「泥縄(どろなわ)」と略して使われることが非常に多い言葉です。
「泥縄式の勉強」や「泥縄作業」といった表現は、ここから来ています。

「泥棒を捕らえて縄を綯う」の語源・背景

特定の書物や歴史上のエピソードが由来ではありませんが、江戸時代以前の庶民の生活風景が背景にあります。

当時、縄はホームセンターで買うものではなく、各家庭でわらを使って手作り(綯う)するものでした。しかし、縄を綯う作業は時間がかかります。暴れる泥棒を必死で押さえつけている最中に、悠長に縄を編み始める姿を想像してみてください。
その滑稽さと愚かさが、準備不足への強烈な皮肉となっているのです。

また、別の言い方として「泥棒を見て縄を綯う」と言う場合もありますが、意味は同じです。

「泥棒を捕らえて縄を綯う」の使い方・例文

日常会話やビジネスシーンで、計画性のなさや、行き当たりばったりの対応を批判・自嘲する際によく使われます。

例文

  • 明日がプレゼン本番なのに、今から資料を作り始めるなんて、まさに「泥棒を捕らえて縄を綯う」だ。
  • 災害が起きてから避難グッズを買いに走るのは、「泥棒を捕らえて縄を綯う」ようなものだ。
  • 今回の対応は「泥棒を捕らえて縄を綯う」式で、現場は大混乱に陥った。

誤用に注意

この言葉は「結果オーライ(間に合った)」という場面では使いません。「なんとか間に合った」としても、そのプロセスが非効率で危なっかしい場合や、結局手遅れになった場合に使われます。「泥縄でなんとかなった」と自虐することはあっても、推奨される行動ではありません。

「泥棒を捕らえて縄を綯う」の類義語

準備不足や手遅れを表す言葉は他にもあります。

  • 渇して井を穿つ(かっしていをうがつ):
    喉が渇いてから井戸を掘り始めること。準備が遅すぎて役に立たないことのたとえ。
  • 戦を見て矢を矧ぐ(たたかいをみてやをはぐ):
    戦いが始まってから、慌てて矢を作り始めること。「矧ぐ」は矢を作ること。
  • 難に臨みて兵を鋳る(なんにのぞみてへいをいる):
    災難や戦争が起きてから、武器を鋳造すること。
  • 一夜漬け(いちやづけ):
    試験などの直前に、徹夜で詰め込み勉強をすること。「泥縄式」と同義。

「泥棒を捕らえて縄を綯う」の対義語

事前の準備を重んじる言葉です。

  • 転ばぬ先の杖(ころばぬさきのつえ):
    失敗しないように、前もって準備しておくこと。
  • 濡れぬ先の傘(ぬれぬさきのかさ):
    雨が降る前に傘を用意するように、手遅れになる前に備えておくこと。
  • 常在戦場(じょうざいせんじょう):
    常に戦場にいるような心構えで、平時から緊張感を持って事に当たること。長岡藩(新潟県)の藩風としても有名。

「泥棒を捕らえて縄を綯う」の英語表現

英語圏でも、時すでに遅しという状況を表す表現があります。

Lock the barn door after the horse is stolen.

  • 直訳:馬が盗まれた後に納屋の鍵をかける。
  • 意味:「後の祭り」「手遅れの対策」
  • 解説:泥棒に入られてからセキュリティを強化するような、まさに「泥縄」と同じ状況を描写したことわざです。

Dig the well before you are thirsty.

  • 直訳:喉が渇く前に井戸を掘れ。
  • 意味:「渇して井を穿つなかれ(早めに準備せよ)」
  • 解説:こちらは教訓の形で、泥縄にならないよう戒める表現です。

「泥棒を捕らえて縄を綯う」に関する豆知識

実際に「縄を綯う」にはどれくらいかかる?

現代人には馴染みが薄いですが、「縄を綯う」作業は熟練の技が必要です。
両手のひらで2束のわらを擦り合わせるようにして捩(よ)っていくのですが、素人がやるとすぐに解けてしまったり、太さが不均一になったりします。ましてや人間を縛り上げるための丈夫な縄を作るとなると、相当な長さと強度が必要です。

泥棒を捕まえた状態で、片手で泥棒を押さえながら、もう片方の手や足を使って縄を綯う……どう考えても不可能です。このことわざは、単なる「遅い」というだけでなく、「物理的に無理で滑稽な状況」を描くことで、準備不足の愚かさを強調しているのです。

まとめ – 準備は「心の余裕」を作る

「泥棒を捕らえて縄を綯う」状態に陥ると、焦りからミスを連発し、さらに状況が悪化するという悪循環に陥りがちです。
逆に言えば、事前に「縄」を用意しておくだけで、いざという時に冷静に対処でき、心に余裕が生まれます。

「泥縄」で冷や汗をかくのはもう卒業し、次は余裕を持ってトラブルを迎え撃てるよう、早めの準備を心がけたいものです。

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