危急存亡の秋

故事成語
危急存亡の秋(ききゅうそんぼうのとき)

11文字の言葉き・ぎ」から始まる言葉
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「このままでは会社が倒産してしまう…」
「この一戦に負ければ、チームは解散だ…」

組織や国家が、まさに生きるか死ぬかの瀬戸際に立たされることがあります。
そのような絶体絶命の状況を表す、重々しくも格調高い言葉が「危急存亡の秋(ききゅうそんぼうのとき)」です。

今回は、この言葉の正しい意味と読み方、そしてその由来となった有名な歴史的背景、使い方までを詳しく解説していきます。

「危急存亡の秋」の意味・教訓

「危急存亡の秋」とは、組織や国家などが、存続できるか滅亡してしまうかという、極めて重大な局面や瀬戸際にあることを意味します。

単なる個人の危機ではなく、共同体全体の運命がかかった、非常に深刻で差し迫った状況を指す言葉です。
ここで注意すべきは、最後の「秋」を「あき」ではなく「とき」と読む点です。

「危急存亡の秋」の語源

この言葉は、中国の三国時代、蜀(しょく)の天才軍師として名高い諸葛亮(しょかつりょう)が皇帝に奉った『出師の表(すいしのひょう)』という文章の一節に由来します。

蜀が強敵である魏(ぎ)を討つため、諸葛亮が出陣する際に、国の将来を憂い、皇帝に送ったのがこの文章です。その中で彼は、「今天下三分し、益州は疲弊す。
此れ誠に危急存亡の秋なり(今、天下は三つに分かれ、我が国は疲弊しています。
これは誠に、国が存続するか滅びるかの重大な時であります)」と述べ、国を挙げて困難に立ち向かう必要性を訴えました。

ここでの「秋」は季節のことではなく、「物事にとって非常に大切な時期・時点」を意味します。
収穫の秋が一年で最も重要な時期であることから転じた用法です。
この諸葛亮の悲壮な覚悟と国への忠誠心が込められた言葉が、後世に故事成語として伝わりました。

使用される場面と例文

国家の危機、会社の経営不振、チームの存続問題など、組織全体の運命を左右するような、極めて深刻な状況で用いられます。

例文

  • 「度重なる不祥事により、我が社の信頼は地に落ち、まさに危急存亡の秋を迎えている。」
  • 「監督は試合前、『この一戦は、我々のクラブにとって危急存亡の秋である』と選手たちに伝えた。」
  • 「敵国の大軍が国境に迫り、王国はまさに危急存亡の秋にあった。」

類義語・言い換え表現

存続が危ぶまれる、非常に危険な状況を表す言葉です。

  • 風前の灯火(ふうぜんのともしび):風の前の灯火のように、いつ消えてもおかしくない、非常に危険な状態のたとえ。
  • 崖っぷち(がけっぷち):これ以上後がない、追い詰められた状況。より口語的な表現。
  • 瀬戸際(せとぎわ):生きるか死ぬか、成功するか失敗するかの分かれ目。
  • 国家存亡の危機(こっかそんぼうのきき):特に国家の危機に限定して使われる言葉。

対義語

危険がなく、平和で安定している状態を表す言葉が対義語となります。

  • 平穏無事(へいおんぶじ):変わりなく、穏やかで安らかなこと。
  • 順風満帆(じゅんぷうまんぱん):物事がすべて順調に進んでいることのたとえ。
  • 安泰(あんたい):無事で変わりなく、穏やかなこと。

英語での類似表現

英語で「危急存亡の秋」の極めて重大な局面というニュアンスを伝えるには、以下のような表現があります。

a critical juncture

「重大な岐路」「決定的な局面」という意味のフォーマルな表現です。組織や国家の運命が決まる、まさにその時を指します。

  • The nation was at a critical juncture in its history.
    (その国は、歴史上、危急存亡の秋にあった。)

a moment of life and death

直訳すると「生と死の瞬間」となり、文字通り、生きるか死ぬかの瀬戸際であることを強調する表現です。

  • For the company, this negotiation is a moment of life and death.
    (その会社にとって、この交渉は危急存亡の秋である。)

まとめ – 「危急存亡の秋」から学ぶ現代の知恵

「危急存亡の秋」は、蜀という一国の運命を背負った諸葛亮の、悲壮な覚悟から生まれた言葉です。
それは単なる危機的状況を指すだけでなく、その局面に向き合う者の責任の重さと真剣さをも内包しています。

この言葉が持つ重みを知ることで、私たちは歴史や物語の中で描かれる組織の重大な転換点や、現代の企業や国家が直面する困難の深刻さを、より深く理解することができるでしょう。

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