長く築いてきたものが存続するか滅びるか。
その瀬戸際に立たされる極限の局面を表したのが、
「危急存亡の秋」(ききゅうそんぼうのとき)という言葉です。
意味
「危急存亡の秋」とは、国や組織が生き残れるか滅びてしまうかの重大な瀬戸際にあることです。
個人のピンチではなく、共同体全体の運命を左右するような差し迫った危機的状況を指します。
- 危急(ききゅう):危険が身近に迫っていること。
- 存亡(そんぼう):生き残ることと滅びること。
- 秋(とき):大切な時期、重要な局面。「あき」ではなく「とき」と読みます。
語源・由来
三国時代、蜀の丞相・諸葛亮(しょかつりょう)が皇帝・劉禅に奉った上奏文「出師の表(すいしのひょう)」に由来します。
魏を討つべく出陣に際して書かれたこの文章の冒頭に、
「今天下三分し、益州は疲弊す。此れ誠に危急存亡の秋なり」と記されています。
天下三分の苦境にあって国の行方を深く憂えた諸葛亮の悲壮な覚悟が込められた一節であり、ここから国家や組織の重大な危機を表す言葉として定着しました。
使い方・例文
「危急存亡の秋」は、国家の危機、長年続くお店の存続、チームの解散問題など、集団の運命が決まる極めて深刻な場面で使われます。
- 我が校の伝統ある部活動が、部員不足で危急存亡の秋を迎えている。
- 度重なる不祥事により、会社はまさに危急存亡の秋にある。
- 敵国の軍勢が国境に迫り、王国は危急存亡の秋に立たされた。
類義語・関連語
「危急存亡の秋」と似た意味を持つ言葉には、以下のようなものがあります。
- 風前の灯火(ふうぜんのともしび):
風に吹かれていつ消えてもおかしくない灯火のように、非常に危険な状態のたとえ。 - 瀬戸際(せとぎわ):
勝負が決まる、あるいは生きるか死ぬかの分かれ目。 - 絶体絶命(ぜったいぜつめい):
困難や危険からどうしても逃れられない、切羽詰まった状況。 - 土壇場(どたんば):
決断を迫られる最後の瞬間や、もう後がないギリギリの局面。
対義語
「危急存亡の秋」とは対照的な意味を持つ言葉は、以下の通りです。
- 平穏無事(へいおんぶじ):
何事もなく、穏やかで安らかな状態が続いていること。 - 順風満帆(じゅんぷうまんぱん):
追い風を受けて船が進むように、物事がすべて順調にいくこと。 - 天下泰平(てんかたいへい):
世の中が平和でよく治まり、何の不安もないこと。
英語表現
「危急存亡の秋」を英語で表現する場合、以下のようなフレーズが適しています。
a critical juncture
意味:重大な岐路、決定的な局面
組織や国家の運命が決まる、まさにその時を指すフォーマルな表現です。
- 例文:
The nation was at a critical juncture in its history.
その国は歴史上、危急存亡の秋にあった。
a matter of life and death
意味:死活問題、生きるか死ぬかの問題
文字通り、生死に関わるほどの重大な瀬戸際であることを強調する表現です。
- 例文:
For the company, this negotiation is a matter of life and death.
その会社にとって、この交渉は危急存亡の秋である。
豆知識:なぜ「秋」を「とき」と読むのか
「危急存亡の秋」の「秋」は、季節の「あき」ではなく「とき」と読みます。
「秋」という漢字には、本来の季節の意味とは別に、「大切な時期・重要な局面」という意味があります。
稲や麦などの穀物が実る秋は、農耕社会において一年で最も大切な時期でした。
その「万物が成熟する重大な時」という感覚が転じて、「秋」が「重要な時・決定的な時」を表す言葉として使われるようになったのです。
同じく「秋」を「とき」と読む例に「多事之秋(たじのとき)」があります。
こちらは事件や問題が多く起こっている不安定な時期を意味し、「危急存亡の秋」と同様の用法です。
まとめ
「危急存亡の秋」は、蜀の丞相・諸葛亮が国の命運を背負って記した「出師の表」の一節から生まれた言葉です。
単なるピンチという枠を超え、共同体が存続するか滅びるかの究極の瀬戸際を表す言葉として、現代でも重みを持って使われています。







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