期待していた物事が、なかなか思うように進まない。そんなもどかしい状況に直面することは少なくありません。
「遅々として進まず(ちちとしてすすまず)」は、まさにそのような停滞した状況を表す慣用句です。
この言葉の正確な意味や使い方、関連する表現について解説します。
もくじ
「遅々として進まず」の意味・教訓
物事が非常にゆっくりとしか進まないこと、あるいは、ほとんど進まない状態を指す言葉です。
本来ならもっと早く進むはずだという期待や、早く進んでほしいという願望があるにもかかわらず、実際は停滞しているという、ネガティブなニュアンスで使われます。
「遅々として進まず」の語源 – 漢字の意味
この表現は、「遅々(ちち)」という言葉が中心となっています。
- 遅々(ちち):
「遅い」という意味の漢字「遅」を重ねた畳語(じょうご)で、物事が非常に遅いさま、のろのろしている様子を強調して表します。 - として:
「遅々」という状態であることを示す格助詞です。 - 進まず:
動詞「進む」の未然形に、打ち消しの助動詞「ず」が付いた形。「進まない」という意味です。
これらを組み合わせ、「非常に遅い状態で、進まない」という意味の慣用句として使われています。
「遅々として進まず」の使い方と例文
交渉、工事、作業、議論、復旧など、何らかの進捗が期待される場面で、それが停滞している状況を客観的に描写したり、非難したりする際に用いられます。特にビジネスシーンやニュースなどで、計画に対する遅れを示す際によく使われる表現です。
例文
- 「度重なる問題の発生で、新システムの開発は「遅々として進まず」、納期が危ぶまれている。」
- 「両国の交渉は条件が折り合わず、「遅々として進まず」に、すでに半年が経過した。」
- 「災害からの復旧作業は、人手不足もあって「遅々として進まず」、住民は不安な日々を送っている。」
- 「夏休みの宿題を後回しにしていたら、「遅々として進まず」に焦り始めた。」
類義語・関連語
- 牛歩(ぎゅうほ):
牛の歩みのように、物事の進み方が非常に遅いことのたとえ。 - 捗々しくない(はかばかしくない):
仕事などが順調に進まないさま。 - 停滞(ていたい):
物事が順調に進まず、とどこおること。 - 難航(なんこう):
障害が多く、物事がスムーズに進まないこと。 - 一進一退(いっしんいったい):
進んだり後戻りしたりして、なかなか進展しないこと。
対義語
- トントン拍子(とんとんびょうし):
物事が何の障害もなく、軽快に進むさま。 - 順風満帆(じゅんぷうまんぱん):
物事がすべて順調に進むことのたとえ。 - 日進月歩(にっしんげっぽ):
日に日に、また月々に、絶えず進歩すること。 - 捗々しい(はかばかしい):
物事が順調に進むさま。はかどること。(主に否定形で使われる)
英語での類似表現
make little progress / make slow progress
- 意味:「ほとんど進展がない」「進展が遅い」
- 解説:最も一般的で直接的な表現です。「遅々として進まず」のニュアンスをよく表します。
- 例文:
We are making slow progress on this project.
(私たちはこのプロジェクトの進捗が遅々として進んでいない。)
be at a standstill
- 意味:「停滞している」「行き詰まっている」
- 解説:「進まず」の部分、つまり「全く動いていない」状態を強調する表現です。
- 例文:
The negotiations are at a standstill.
(交渉は遅々として進まず、停滞している。)
move at a snail’s pace
- 意味:「カタツムリのペースで進む(非常に遅い)」
- 解説:「牛歩」にも近い比喩表現で、極端な遅さを表します。
- 例文:
The traffic was moving at a snail’s pace.
(渋滞で、車は遅々として進まなかった。)
まとめ – 「遅々として進まず」の状況
「遅々として進まず」は、物事が停滞しているもどかしい状況を表す言葉です。この言葉が使われるときは、多くの場合、何らかの障害や問題点が潜んでいます。もし自分の関わる事が「遅々として進まず」の状態にあるならば、その原因を見極め、対策を講じる必要があるというサインかもしれません。




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