「水清ければ魚棲まず」という言葉を聞いたことがありますか。清廉潔白であることは一般的に美徳とされますが、このことわざは、行き過ぎた「清さ」がもたらす意外な側面を教えてくれます。
この言葉の正確な意味や由来、現代社会における使い方、さらには類語、英語での表現までを分かりやすく解説します。
「水清ければ魚棲まず」の意味・教訓
「水清ければ魚棲まず(みずきよければうおすまず)」とは、あまりに清廉潔白すぎたり、厳格すぎたりする人のもとには、かえって人が集まらない(親しまれない・寄り付かない)というたとえです。
また、転じて、規則やルールで厳しく縛りすぎると、息苦しさから人が離れてしまったり、不正や「抜け道」を探す者が出てきたりするといった意味でも使われます。
水の清さ(清廉さ)と魚(人々)の関係に例え、適度な寛容さや「濁り(人間的な弱さや遊び)」も、人や組織をまとめる上では必要であるという教訓を含んでいます。
「水清ければ魚棲まず」の語源
この言葉の出典は、中国・前漢の時代の学者である戴聖(たいせい)がまとめた『礼記(らいき)』とされていますが、一般的には後漢の時代の歴史家である班固(はんこ)が著した『漢書(かんじょ)』の「東方朔伝(とうほうさくでん)」にある以下の記述が有名です。
「水至って清ければ則ち魚無く、人至って察(さつ)なれば則ち徒(と)無し」
(水が清すぎると魚はいないし、人があまりに(アラを探すように)厳格すぎると仲間はいない)
ここでの「察」とは、細かな点まで厳しく観察し、すべてを明らかにしようとする態度を指します。
この言葉が日本に伝わり、「水清ければ魚棲まず」ということわざとして定着しました。
「水清ければ魚棲まず」の使い方と例文
現代では、個人の性格(潔癖すぎる人)を評する時や、組織や社会のあり方(ルールが厳しすぎる職場や社会)を論じる時など、幅広い場面で使われます。
例文
- 「彼は非常に優秀だが潔癖すぎるところがある。まさに水清ければ魚棲まずで、部下が萎縮してしまっている。」
- 「あの部署はルールが厳格すぎて、水清ければ魚棲まずの状態だ。もう少し柔軟な対応が必要だろう。」
- 「あまりに清廉潔白を求めすぎると、水清ければ魚棲まずと言うように、かえって窮屈な社会になってしまう。」
- 「昔の親分は少々悪いところもあったが、水清ければ魚棲まずというように、人を惹きつける度量があった。」
類義語・関連語
- 人至って察なれば則ち徒無し(ひといたってさつなればすなわちとなし):
上記の『漢書』が出典の言葉。人があまりに細かく厳しすぎると、仲間や部下がいなくなるという意味。このことわざの直接的な由来であり、対句表現。 - 清濁併せ呑む(せいだくあわせのむ):
心が広く、善も悪も区別なく受け入れること。「水清ければ~」とは逆に、度量の大きさ(濁りも受け入れる様)を示す。 - 水濁れば魚棲む(みずにごればうおすむ):
水が濁っている方が魚は(身を隠せるため)棲みやすい、という意味。このことわざの裏返しの表現。
英語での類似表現
A stream too clear has no fish.
- 直訳:「あまりに清すぎる流れには魚がいない」
- 意味:「水清ければ魚棲まず」
- 解説:
日本語のことわざをそのまま直訳した表現ですが、英語圏でも文脈によっては意味が通じることがあります。 - 例文:
He is too strict, and no one follows him. As they say, a stream too clear has no fish.
(彼は厳しすぎて誰もついていかない。水清ければ魚棲まず、とはよく言ったものだ。)
He that blows his nose too hard makes it bleed. (古い英語のことわざ)
- 直訳:「鼻をあまりに強くかむ者は、血を出させる」
- 意味:「何事もやりすぎは良くない」
- 解説:
厳密な一致ではありませんが、「清廉さを追求しすぎる(=鼻を強くかみすぎる)」と「人が離れる(=血が出る)」というように、何事も極端にやりすぎることへの戒めとしてニュアンスが通じます。 - 例文:
Don’t be too critical of your staff. He that blows his nose too hard makes it bleed.
(スタッフに厳しすぎるのはよせ。何事もやりすぎは良くない。)
まとめ – 「水清ければ魚棲まず」から学ぶ寛容さ
「水清ければ魚棲まず」は、清廉さや正義も、度を越せば人を遠ざけ、組織の活力を失わせてしまう危険性があることを教えてくれることわざです。
もちろん不正や怠惰を許容すべきという意味ではありませんが、人間や社会には完璧ではない「濁り」の部分もあることを理解し、それを受け入れる「清濁併せ呑む」度量の広さもまた、リーダーや組織にとって重要な資質であることを示唆しています。




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