意味
「虎に翼(とらにつばさ)」とは、強い力を持つ者にさらに別の力が加わり、敵うものがなくなることのたとえです。
「虎」は強大な力の象徴です。
その虎に、空を飛ぶための「翼」が加われば、陸からも空からも活動できる死角のない状態になります。
このイメージから、強者がさらに大きな力や地位を得てより手に負えなくなる様子を表します。
語源・由来
出典は、中国戦国時代の思想書『韓非子』の「難勢」篇です。
ただし、この言葉は韓非自身の創作ではなく、韓非がさらに古い書物である『周書』(逸周書)の一節を引用したものです。
原文には「毋爲虎傅翼、將飛入邑、擇人而食之(虎の為に翼を傅くることなかれ。将に飛びて邑に入り、人を択りてこれを食わんとす)」とあり、韓非はこれを受けて「愚かな人物(不肖人)に権勢を与えることは、虎に翼を与えるのと同じだ」と論じました。
つまり元来は「無能・凶悪な人物に権力を持たせるな」という統治上の警告です。
日本には古くから伝わっており、『日本書紀』(720年)の天武天皇即位前紀には、吉野宮に入る大海人皇子(のちの天武天皇)を左大臣らが菟道まで見送って引き返したとき、「虎著翼放之」と言う者がいたと記されています。
「虎に翼」と中国語表現の違い
同じ「虎+翼」の概念が、日中で異なるニュアンスの言葉に分化しています。
| 語句 | 言語 | 使われる意味 |
|---|---|---|
| 虎に翼 (とらにつばさ) | 日本語 | 良い意味にも悪い意味にも使う(味方の強化) |
| 爲虎傅翼 | 中国語(原典) | 悪い意味でしか使わない(悪者がさらに力をつけて手に負えなくなる) |
| 如虎添翼 (じょこてんよく) | 中国語(別表現) | 良い意味にも悪い意味にも使う。日本語の鬼に金棒に近い |

使い方・例文
「虎に翼」は、強いものがさらに強さを増す場面に使われます。
本来はネガティブな文脈が基本で、手に負えない相手がさらに強化された「恐ろしさ」を表します。
ただし日常会話では、味方の強化を表す場面で使われることもあります。
- 優秀な人材を得て、まさに虎に翼の勢いとなった。
- 頼もしい味方が加わり、虎に翼で挑める体制となった。
類義語・関連語
- 鬼に金棒(おににかなぼう):
強い鬼に、さらに武器である金棒を持たせること。 - 弁慶に薙刀(べんけいになぎなた):
怪力無双の武蔵坊弁慶が、得意とする薙刀を持っていること。 - 獅子に鰭(ししにひれ):
陸の王者である獅子に魚のヒレがつき、水中でも活動できるようになること。
対義語
- 餓鬼に苧殻(がきにおがら):
痩せ細った餓鬼が、もろくて役に立たない苧殻(麻の茎)を武器として持っていること。
極めて弱々しく、頼りにならないことのたとえ。
三淵嘉子の愛称「トラママ」と主人公「寅子」に重ねた二重の意味
『虎に翼』は、2024年4月1日から9月27日まで放送されたNHK連続テレビ小説の第110作で、脚本は吉田恵里香、主演は伊藤沙莉です。
日本で初めて女性として弁護士・判事・裁判所長のすべてを務めた三淵嘉子をモデルに、オリジナルストーリーとして制作されました。
タイトルには二重の意味が込められています。
一つは、このことわざそのものの意味。
もう一つは、「五黄(ごおう)の寅年」である1914年生まれの三淵さんが「トラママ」と呼ばれていたことと、主人公の名前「寅子」への掛け合わせです。
困難な時代に「法律」という翼を手に入れ羽ばたく女性の姿を、ことわざと名前の両面から重ね合わせたタイトルと言えます。
なお、2026年1月に映画化が発表されており、2027年公開予定です。













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