ことわざ

秋茄子は嫁に食わすな

(あきなすびはよめにくわすな)

美味しい秋茄子を嫁に与えない意地悪と、体を冷やすからという気遣いの二つの意味。

異形:秋なすは嫁に食わすな/秋茄子は嫁に食わせるな

13文字の言葉 / 「あ」から始まる言葉
秋茄子は嫁に食わすな ことば
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意味

「秋茄子は嫁に食わすな(あきなすびはよめにくわすな)」とは、秋に収穫される美味しいナスをお嫁さんには食べさせてはいけないという意味です。
「美味しいから憎い嫁には食べさせない」という意地悪の意味と、「ナスは体を冷やすから大切な嫁には食べさせない」という気遣いの意味の、正反対の二つの読み方があります。

  • 秋茄子(あきなすび):秋に収穫される味が良いナス。
  • 嫁(よめ):息子の妻。
葉と薄紫の花をつけたナスの枝の手前に、細長いナスと丸いナス、輪切りにしたナスが置かれている淡い水彩画
ナスの株と実を描いた日本の水彩画

語源・由来

意地悪と気遣い、どちらの読み方も江戸時代からありました。
ほかにも「秋のナスは種が少ないので、嫁が食べると子どもができにくくなる」という理由づけがあります。

ただ、日本各地には、秋の鯖さばや五月の蕨わらびなど、「嫁に食わすな」と言われる食べ物がたくさんあります。
その多くは「おいしいから食べさせるな」という意味なので、このことわざも意地悪の意味のほうが有力と考えられています。

ことわざとしては、江戸時代前期の1638年に出た『毛吹草けふきぐさ』という本に、もう載っています。
ある歌がもとになったという説もあり、「秋のナスを酒粕に漬けて棚にしまっても、嫁には食わせるな」という内容です。
この歌の「嫁」はネズミのことで、「棚のナスをネズミにかじられるな」という意味だった、という読み方もあります。

使い方・例文

「秋茄子は嫁に食わすな」は、食べ物の美味しさを強調する場面や、相手の体を気遣う場面で使われます。

  • 旬のうまい物はいつも息子の皿に回し、秋茄子は嫁に食わすなと言わんばかりの姑だった。
  • 姑の「秋茄子は嫁に食わすな」は意地悪ではなく、ナスで体を冷やさないようにという気遣いだった。
  • 今年のナスは格別の美味しさで、秋茄子は嫁に食わすなと言いたくなるほどだ。
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誤用・注意点

善意から生じる誤解

「体を冷やすから」という気遣いのつもりで言っても、聞いた人は「おいしいから食べさせない」という意地悪のほうを思い浮かべがちです。
気遣いで言うときは「ナスは体を冷やすから」と理由を添えれば、嫌みに取られずに済みます。

現代の価値観とのズレ

「嫁に食わすな」は言い方がきつく、冗談のつもりでも嫌な気持ちになる人がいます。
お嫁さん本人やその家族の前では、使わないほうが無難です。

類義語・関連語

「秋茄子は嫁に食わすな」と同様に、特定の季節の美味しい食材を嫁に食べさせないとする言葉には以下のようなものがあります。

  • 秋鯖は嫁に食わすな(あきさばはよめにくわすな):
    脂の乗った秋のサバは美味しいので、嫁に食べさせるのは惜しいということ。
  • 秋魣は嫁に食わすな(あきかますはよめにくわすな):
    脂が乗って美味しい秋のカマスを、嫁に食べさせるのは惜しいということ。
  • 五月蕨は嫁に食わすな(ごがつわらびはよめにくわすな):
    五月のワラビは美味しいので、嫁には食べさせるなということ。

「ナスは体を冷やす」は明の薬物書にも

ナスを体を冷やす食べ物とみる考え方は、中国・明の時代の薬物書『本草綱目ほんぞうこうもく』(1596年刊)にも見えます。
著者の李時珍りじちんはナスの性質を「甘、寒」と書き、さらに前の時代の本草書から、冷えが長く続く人は多く食べてはいけない、という説を引いています。

『本草綱目』は刊行から数年のうちに日本へ伝わり、江戸時代を通じて日本でも数多く刊行されました。
この「寒」は昔の薬物書の分類で、今の栄養学でいう性質とは別のものです。

日本では、気遣いの読み方が江戸時代中期の武家の礼法の研究家・伊勢貞丈いせさだたけの随筆『安斎随筆あんさいずいひつ』(1783年頃)に見え、「秋なすはからだを冷やして毒だから」と理由を挙げています。
ことわざが『毛吹草』に記録されてから、およそ150年後の説明です。

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