禍を転じて福と為す

スポンサーリンク
ことわざ 故事成語
禍を転じて福と為す
(わざわいをてんじてふくとなす)
異形:禍転じて福と為す/災い転じて福となす/災いを転じて福と為す

14文字の言葉」から始まる言葉

失敗をして落ち込んだり、予期せぬトラブルに見舞われて「もうダメだ」と諦めかけたりした経験はありませんか?

そんな苦しい状況にある時、勇気と解決のヒントを与えてくれるのが「禍を転じて福と為す」という言葉です。
単なる慰めではなく、ピンチをチャンスに変えるための「攻めの姿勢」を教えてくれる故事成語です。

「禍を転じて福と為す」の意味・教訓

身に降りかかった災難や不運を、自分の知恵や努力によって活用し、かえって幸福や利益になるように取り計らうことを意味します。

ただ単に「悪いことの後に良いことがある」と運任せに待つのではなく、自らの働きかけによって事態を好転させるという、能動的なニュアンスが強い言葉です。

  • (わざわい):災難、不幸、悪い事態。
  • (ふく):幸福、利益、良い結果。
  • 為す(なす):意図的に行う、作り出す。

「禍を転じて福と為す」の語源・由来

この言葉は、古代中国の歴史書『戦国策(せんごくさく)』に由来します。

中国の戦国時代、国々が争う中で活躍した策士・蘇秦(そしん)のエピソードに関連しています。
燕(えん)の国の王に対し、蘇秦(または彼に関連する遊説家)が語った言葉の中に、以下のような一節があります。

聖人の事を制するや、禍を転じて福と為し、敗に因りて功を為す
(優れた人物が物事を治める時は、災いを転じて福となし、失敗を逆手にとって成功へと導くものである)

つまり、本来は外交や政治の手腕を説いた言葉であり、賢いリーダーはいかなる不利な状況でも、それを逆用して勝利に変える力がある、という教訓が含まれています。

「禍を転じて福と為す」の使い方・例文

ビジネスでの危機管理や、スポーツでの逆転劇、人生の困難を乗り越えた際など、ネガティブな状況をポジティブな結果に変えた場面で使われます。

例文

  • 「商品の発送ミスでクレームが来たが、誠心誠意対応したことで、かえって熱心なファンになってもらえた。まさに禍を転じて福と為すだ。」
  • 「怪我で入院中に読書に没頭し、新しいビジネスのアイデアを得た。禍を転じて福と為すとはこのことだ。」
  • 「彼は左遷されたことを嘆くことなく、地方で人脈を広げて社長にまで登り詰めた。禍を転じて福と為す生き方だ。」

文学作品での使用例

彼等は能(よ)く禍を転じて福と為すの手腕を有して居るから、仮令(たとえ)一時は失敗しても、直(すぐ)に盛り返して来る。

(中里介山『大菩薩峠』より)

この一文では、逆境に強い人物たちが持つ、しぶとさや巧みな処世術が表現されています。

「禍を転じて福と為す」の注意点・誤用

この言葉は「結果的によくなった」という場面で広く使えますが、以下の点に注意が必要です。

  • 努力の伴わない「ラッキー」には使いにくい
    たまたま運が良かっただけの場合は、「不幸中の幸い」や「怪我の功名」の方が適している場合があります。「禍を転じて福と為す」は、「為す(なす)」という動詞がある通り、本人の意思や行動が介在するニュアンスが強いためです。
  • 他人の不幸に対して使う場合は慎重に
    現在進行形で苦しんでいる人に対し、「これを転じて福と為そう」と言うのは、励ましのつもりでもプレッシャーや無責任な発言と受け取られるリスクがあります。事態が解決した後に称賛として使うのが無難です。

「禍を転じて福と為す」の類義語・関連語

不運が良い結果に繋がることを表す言葉を紹介します。

  • 怪我の功名(けがのこうみょう):
    過失や災難と思われたことが、偶然によい結果を生むこと。「禍を転じて〜」よりも偶然性が強い。
  • 雨降って地固まる(あめふってじかたまる):
    揉め事やトラブルがあった後、かえって以前より良い状態になること。人間関係の修復によく使われる。
  • 七転び八起き(ななころびやおき):
    何度失敗しても、屈せずに立ち上がること。不屈の精神を表す。
  • 人間万事塞翁が馬(にんげんばんじさいおうがうま):
    人生の幸不幸は予測できず、良いことが悪いことになり、悪いことが良いことになるかは分からないということ。
    ※「禍を転じて〜」が意図的な好転を指すのに対し、こちらは運命の予測不能さに焦点を当てています。

「禍を転じて福と為す」の対義語

悪い状況がさらに悪化することを表す言葉です。

  • 泣きっ面に蜂(なきっつらにはち):
    不幸な目にあっている時に、さらに別の不幸が重なること。
  • 弱り目に祟り目(よわりめにたたりめ):
    弱っている時に、さらに災難が降りかかること。

「禍を転じて福と為す」の英語表現

英語でも、逆境をプラスに変える精神を表す有名なフレーズがあります。

Turn a misfortune into a blessing

  • 意味:「不運を幸運に変える」
  • 解説:日本語の直訳に近く、意味が通りやすい表現です。
  • 例文:
    He turned a misfortune into a blessing.
    (彼は災いを転じて福と為した。)

When life gives you lemons, make lemonade

  • 直訳:人生がレモン(酸っぱいもの=不快なこと・欠陥品)を与えてきたら、レモネード(甘くて美味しいもの)を作れ。
  • 意味:「逆境をうまく利用して、ベストを尽くせ」
  • 解説:アメリカなどで非常によく使われるポジティブな格言です。与えられた悪い環境を、工夫次第で良いものに変えようという精神を表します。

「禍を転じて福と為す」に関する豆知識

四字熟語では「転禍為福」

このことわざを四字熟語で表すと「転禍為福(てんかいふく)」となります。
書き下し文がそのまま熟語になった形です。座右の銘として色紙に書く際などは、この四字熟語を使うと収まりが良いでしょう。

「災い」の漢字表記と「コロナ禍」

「わざわい」と読む漢字には「災い」と「禍」がありますが、このことわざでは一般的に「」が使われます。両者には以下のような使い分けがあります。

  • 災い:地震や台風など、防ぎようのない自然災害(天災)を指すことが多い。
  • :人為的な努力で避けられたかもしれない事象や、人々の不和、社会的な不幸(人災)を指すことが多い。

近年よく目にする「コロナ禍」に「禍」の字が使われているのも、単なるウイルスという自然現象そのものだけでなく、それによって引き起こされる「社会的な混乱」や「危機的状況」という意味合いが強いためです。

このことわざで「禍」の字を使うのも、単なる天災を指すのではなく、人の知恵や行動で状況を変えられる余地があるからこそと言えるでしょう。

まとめ

「禍を転じて福と為す」は、失敗やトラブルを単なるマイナスで終わらせず、次へのステップとして活用するたくましさを象徴する言葉です。

長い人生、予期せぬ「禍」は誰にでも訪れます。そんな時、ただ嘆くだけでなく「これをどうやって福に変えてやろうか」と視点を切り替えることができれば、そのピンチは最大のチャンスになるかもしれません。

スポンサーリンク

コメント