「何もかもが順調に進んでいる時ほど、なぜか予期せぬトラブルが起きる…」そんな経験はありませんか?
計画が完璧に進み、喜びに浸っていた矢先に起こる、まさかの横槍。
そんな状況をぴたりと言い表したことわざが、今回ご紹介する「好事魔多し」です。
今回は、この戒めに満ちた言葉の意味や由来、そして現代を生きる私たちがどう活かすべきかを探っていきます。
「好事魔多し」の意味・教訓
「好事魔多し(こうじまおおし)」とは、良いことには、とかく邪魔が入りやすいものだ、という意味のことわざです。
物事が順調に進んでいると、つい油断してしまったり、他人の嫉妬を招いてしまったりして、思わぬ障害に見舞われることがあります。
このことわざは、そんな人生の真理を指摘し、「良い時こそ気を引き締めて慎重に行動すべきだ」という戒めを私たちに与えてくれます。
「好事魔多し」の語源
この言葉は、中国の古い言葉「好事多魔(こうじたま)」に由来します。
「魔」という字は、悪魔や魔物だけでなく、仏教の教えでは「人の心を惑わせ、修行の邪魔をするもの」全般を指します。
つまり、良いことが続くと心に隙(=魔)が生まれやすく、それが原因で物事がうまくいかなくなる、という考え方が元になっています。
順風満帆な時こそ、油断という魔物が忍び寄りやすいのです。
使用される場面と例文
成功を目前にしたプロジェクトにトラブルが発生した時や、楽しみにしていたイベントが直前で中止になるなど、順調だった物事が急に悪い方向へ転じた際に使われます。
例文
- 「結婚式の準備は完璧だったのに、前日に大型台風が接近するなんて、まさに好事魔多しだ。」
- 「連勝記録を伸ばしていたチームが、格下の相手にあっさり負けてしまった。好事魔多しとはこのことだ。」
- 「契約成立の直前になって、先方から待ったがかかった。うまく行き過ぎだと思ったが、好事魔多しだね。」
類義語・言い換え表現
良いことには邪魔が入りやすい、というニュアンスを持つ言葉は他にもあります。
- 花に嵐(はなにあらし):満開の美しい桜も、嵐が来れば散ってしまうことから、良いことや美しいものには邪魔が入りやすいというたとえ。
- 月満つれば則ち虧く(つきみつればすなわちかく):満月も、満ちた瞬間から欠け始めるように、物事は頂点に達すると衰え始めるというたとえ。
- 好事門を出でず(こうじもんをいでず):良い行いはなかなか世間に知られない、という意味。※邪魔が入りやすい、という意味合いは薄いですが、良いことが報われにくいという点で関連語として挙げられます。
対義語
悪い状況が良い方向へ転じることを意味する言葉が、対義語として考えられます。
- 禍を転じて福と為す(わざわいをてんじてふくととなす):身に降りかかった災難を、逆に利用して自分の有利な状況に変えること。
- 雨降って地固まる(あめふってじかたまる):揉め事や悪い出来事の後は、かえって基盤がしっかりして物事がうまくいくことのたとえ。
英語での類似表現
英語にも「好事魔多し」の教訓とよく似たことわざが存在します。
There’s many a slip ‘twixt the cup and the lip.
直訳:「カップと唇の間には、多くのしくじりがある。」
意味:物事が完全に終わるまでは何が起こるか分からない、という戒めの言葉です。あと一歩というところで失敗する可能性があることを示唆します。
- The contract isn’t signed yet. Remember, there’s many a slip ‘twixt the cup and the lip.
(契約はまだ署名されていない。好事魔多し、ということを忘れるな。)
The best-laid plans of mice and men often go awry.
直訳:「ネズミと人間が立てた最善の計画も、しばしばうまくいかない。」
意味:どれだけ綿密に計画を立てても、物事は計画通りに進まないことがある、という少し諦観を含んだ表現です。
まとめ – 「好事魔多し」から学ぶ現代の知恵
「好事魔多し」は、順調な時ほど障害が生まれやすいという、人生の普遍的な真実を教えてくれることわざです。
これは決して悲観的な言葉ではなく、「成功に浮かれず、最後まで気を抜かずに物事を成し遂げなさい」という先人からの賢明なアドバイスです。
目標達成まであと一歩という時、あるいは幸せの絶頂にある時こそ、この言葉を思い出し、謙虚さと慎重さを忘れずにいたいものです。




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