意味
「好事魔多し(こうじまおおし)」とは、うまくいっているときほど、思わぬ邪魔が入りやすいということです。
「好事」は良いこと、「魔」は物事を妨げるものを指し、順調なときこそ気を緩めるなという戒めとしても使われます。
語源・由来
「好事魔多し」の語源は、中国の元時代に書かれた戯曲『琵琶記』などに見られる「好事多磨」という言葉にあります。
「魔」という漢字は、仏教において修行者の心を惑わし、善行を妨げる存在を指します。
中国の原文の「磨」は困難や妨げを意味する字でしたが、日本では「魔」の字が当てられ、邪魔の意味からさらに災難の意味へと広がりました。
使い方・例文
成功を確信した直後にトラブルに見舞われた際や、慢心しそうな自分や周囲を律する場面で用いられます。
例文
- 優勝目前でエースが負傷するとは、まさに好事魔多しだ。
- 好事魔多しと言うから、契約が終わるまで気を抜かないようにしよう。
- 昇進が決まった翌日に大病を患い、好事魔多しを実感した。
類義語・関連語
「好事魔多し」と似た意味を持つ言葉には、以下のようなものがあります。
- 花に嵐(はなにあらし):
美しい桜に嵐が吹き付けるように、良いことには邪魔が入りやすいことのたとえ。 - 月に叢雲花に風(つきにむらくもはなにかぜ):
名月には雲がかかり、花には風が吹く。良い状態はとかく長続きしないというたとえ。 - 寸善尺魔(すんぜんしゃくま):
良いことはわずか(一寸)だが、悪いことは非常に多い(一尺)ということ。
対義語
「好事魔多し」とは対照的に、悪い状況が好転する意味の言葉には以下があります。
- 禍を転じて福と為す(わざわいをてんじてふくとなす):
身に降りかかった災難を逆手に取り、有利な状況に変えること。 - 雨降って地固まる(あめふってじかたまる):
揉め事の後は、かえって以前より基盤がしっかりすることのたとえ。
英語表現
「好事魔多し」を英語で表現する場合、以下の定型句があります。
There’s many a slip ‘twixt the cup and the lip
直訳「カップを唇に運ぶ間にも、多くの失敗がある」
物事が完全に終わるまでは、直前で何が起こるか分からないという戒めの言い回し。
Don’t celebrate just yet; there’s many a slip ‘twixt the cup and the lip.
(まだ祝うのは早い。好事魔多し、と言うだろう。)
『琵琶記』で「好事多磨」と嘆いたのは宰相の娘
『琵琶記』は、元の終わりごろに高明が書いた戯曲です。
主人公の蔡伯喈は、故郷に妻と両親を残したまま都で科挙(役人の登用試験)に受かり、宰相に押し切られてその娘と結婚させられます。
父を諫めることを題にした段で、宰相の娘は、夫と一緒に夫の故郷へ行かせてほしいと父に願い出ますが、父は怒って聞き入れません。
そのあと娘は、夫の蔡伯喈に向かってこう嘆きます。
我見你毎毎咨嗟要調和。誰知好事多磨起風波。
(あなたがいつもため息をついているのを見て取りなそうとしたのに、よいことには邪魔が多いもので、かえって波風を立ててしまった)
よかれと思って動いた話が、思わぬ横やりでこじれた、という「好事魔多し」の使いどころが、もとの句が出てくる場面にすでにそろっています。











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