夫婦喧嘩は犬も食わぬ

ことわざ
夫婦喧嘩は犬も食わぬ(ふうふげんかはいぬもくわぬ)

13文字の言葉ふ・ぶ・ぷ」から始まる言葉
夫婦喧嘩は犬も食わぬ 【個別】ことわざ・慣用句・四字熟語

「夫婦喧嘩は犬も食わぬ」の意味 – 介入無用な内輪のいざこざ

「夫婦喧嘩は犬も食わぬ」とは、夫婦間の喧嘩は一時的なものであり、すぐに仲直りすることが多いので、他人が心配したり仲裁に入ったりするようなものではない、という意味のことわざです。

また、犬でさえ見向きもしないほど、つまらなく、ばかばかしいものである、というニュアンスも含まれます。
当事者にとっては深刻でも、傍から見れば些細なこと、あるいは、他人が関わるべきではない内輪の問題であることを示唆しています。

このことわざは、主に二つの側面を伝えています。

  1. 夫婦喧嘩の性質: 夫婦の喧嘩は根本的な対立ではなく、感情的なものが多く、時間が経てば自然と解決することが多い。
  2. 第三者の介入への戒め: 他人が善意で仲裁しようとしても、かえって問題をこじらせたり、夫婦双方から疎まれたりすることがあるため、静観するのが賢明である。

「夫婦喧嘩は犬も食わぬ」の語源 – なぜ「犬」も食わないのか?

このことわざの正確な語源や初出は定かではありません。

しかし、「犬も食わぬ」という表現が鍵となっています。
昔から(俗説として)犬は何でも食べるものと考えられてきました。
その犬でさえ見向きもしない、食べようとしないということは、それほど「くだらない」「つまらない」「価値がない」ものである、という比喩表現です。

夫婦喧嘩は、激しく言い争っていても、翌日にはけろっとしていたり、根本的な愛情で繋がっているためすぐに和解したりすることが珍しくありません。
そのような夫婦喧嘩の「一時的で、本質的でない」性質を、「犬も食わぬ」という少しユーモラスで痛烈な比喩で表現した、生活の中から生まれた言葉と考えられます。

「夫婦喧嘩は犬も食わぬ」の使用される場面と例文 – そっとしておくのが一番

「夫婦喧嘩は犬も食わぬ」は、隣家や友人夫婦などが喧嘩しているのを見聞きした際に、「あまり口出ししない方が良い」と自分や他人を戒めたり、その喧嘩の些細さを表現したりする場合に使われます。

また、喧嘩をしている当事者自身が、自分たちの喧嘩を「どうせすぐ仲直りするから」と自嘲気味に、あるいは客観的に言うこともあります。

例文

  • 「隣の家から大きな声が聞こえるけど、夫婦喧嘩は犬も食わぬって言うし、そっとしておこう。」
  • 「友人の夫婦喧嘩の仲裁に入ろうとしたら、『夫婦喧嘩は犬も食わぬと言うだろう?放っておいてくれ』と逆に言われてしまった。」
  • 「またつまらないことで言い争っちゃったね。まあ、夫婦喧嘩は犬も食わぬ、気にしないでおこう。」
  • 「部長夫妻、昨日あんなに険悪だったのに、今日は仲良くランチだって。まさに夫婦喧嘩は犬も食わぬだね。」

「夫婦喧嘩は犬も食わぬ」の類義語 – 似た状況を表す言葉

  • 恋の喧嘩は犬も食わぬ(こいのけんかはいぬもくわぬ):夫婦だけでなく、恋人同士の喧嘩も同様に、他人が口出しすべきではないという意味。
  • 痴話喧嘩は犬も食わぬ(ちわげんかはいぬもくわぬ):主に男女間の他愛ない、色恋がらみの喧嘩について言う。

「夫婦喧嘩は犬も食わぬ」の関連語 – 関係性の変化を示す言葉

  • 雨降って地固まる:揉め事や悪いことがあった後、かえって基礎がしっかり固まり、良い状態になることのたとえ。喧嘩を通じて夫婦の絆が深まることもある、という点で関連する。
  • 内輪揉め(うちわもめ):組織や家族など、内部での争い。夫婦喧嘩も内輪揉めの一種と言える。

「夫婦喧嘩は犬も食わぬ」の対義語 – 介入が必要な状況

「夫婦喧嘩は犬も食わぬ」に直接対応する明確な対義語となることわざは見当たりません。
このことわざは「介入すべきでない些細な内輪揉め」を指すため、反対の状況としては「第三者の介入が必要な深刻な問題」や「社会全体で関心を持つべき事柄」などが考えられますが、それを一言で表す定型句は一般的ではありません。

しいて言えば、喧嘩がエスカレートする状況を表す以下のような言葉は、結果的に「犬も食わぬ」では済まされない状況を示唆するかもしれません。

  • 売り言葉に買い言葉(うりことばにかいことば):相手から挑発的な言葉を言われたのに対して、こちらも言い返してしまうこと。喧嘩が大きくなる原因。

「夫婦喧嘩は犬も食わぬ」の英語での類似表現 – 英語圏での戒め

英語にも、他人の問題、特に痴話喧嘩などに深入りすべきではない、というニュアンスを持つ表現があります。

  • Let sleeping dogs lie.
    直訳:寝ている犬は寝かせておけ。
    意味:厄介ごとや面倒な問題にわざわざ触れて、波風を立てるな、という意味。他人の喧嘩に口出ししない方が良い、という文脈で使われることがある。
  • It’s just a lovers’ quarrel.
    意味:それはただの恋人たちの痴話喧嘩さ。取るに足らないことだ、気にするな、という意味合い。
  • Mind your own business.
    意味:余計なお世話だ、自分のことだけ気にしていろ。直接的に他人の問題への介入を拒否する表現。

まとめ – 「夫婦喧嘩は犬も食わぬ」が示す距離感の大切さ

「夫婦喧嘩は犬も食わぬ」ということわざは、夫婦という特別な関係性とその中で起こるいざこざの性質を、ユーモラスに、そして的確に捉えています。
多くの場合、夫婦喧嘩は一時的な感情のもつれであり、当人同士で解決できる(あるいは自然と解決する)問題です。

この言葉は、他人の家庭の問題に軽々しく介入することへの戒めを含んでいます。
善意のつもりが、かえって状況を悪化させたり、当人たちを不快にさせたりする可能性を教えてくれます。

もちろん、すべての夫婦喧嘩が「犬も食わぬ」ものとは限りません。
深刻な問題が隠れている場合もあります。
しかし、日常的な些細な言い争いに対しては、少し距離を置いて見守る姿勢が、時には最も賢明な対応なのかもしれません。
夫婦間のデリケートな問題に対する、適切な距離感の重要性を示唆してくれることわざと言えるでしょう。

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