自分に合った環境や得意な分野に身を置いたとき、人は普段とは別人のように生き生きと能力を発揮するものです。
それまで元気がなかった人が、あるきっかけで急に活気を取り戻す様子を見ると、周囲まで明るい気持ちになります。
「水を得た魚」の意味
自分に合った環境や活躍できる場を与えられ、生き生きとしている様子のたとえです。
魚は陸上では動けませんが、水に戻れば自由に泳ぎ回ることができます。このことから、場所や状況を得て、その人の能力や持ち味が存分に発揮される状態を指します。
「水を得た魚」の語源・由来
中国の歴史書『三国志』に登場する逸話に由来します。
三国時代の「蜀(しょく)」の皇帝となる劉備(りゅうび)と、天才軍師として知られる諸葛亮(しょかつりょう/孔明)のエピソードです。
劉備が「三顧の礼」をもって諸葛亮を軍師として迎え入れた当初、二人は非常に親密になりました。しかし、古くからの義兄弟である関羽や張飛は、新参者の諸葛亮が重用されることを面白く思っていませんでした。
不満を漏らす彼らに対し、劉備はこう諭しました。
「私に孔明(諸葛亮)がいるのは、魚に水があるのと同じことなのだ。頼むから二度と文句を言わないでくれ」
この言葉を聞き、関羽と張飛は納得したと伝えられています。
本来は君主と臣下の「なくてはならない親密な人間関係」を表す言葉でしたが、現在では転じて、「環境を得て能力を発揮する様子」を表す言葉として広く定着しました。
「水を得た魚」の使い方・例文
日常生活において、その人が「輝いている瞬間」を表現する際によく使われます。
得意なスポーツをしている時、趣味の話をしている時、自分の専門知識を活かせる場面など、「その人らしさ」が全開になっているポジティブな状況で使うのが一般的です。
例文
- 普段は大人しい彼だが、サッカーコートに立つとまるで水を得た魚のように走り回る。
- 昔から鉄道が大好きな息子は、博物館に着くと水を得た魚になって解説を始めた。
- 緊張していた新入部員も、バットを握った途端に水を得た魚のような活躍を見せた。
「水を得た魚」の類義語・関連語
状況が整い、勢いづく様子を表す言葉です。
- 得手に帆を揚げる(えてにほをあげる):
得意な分野で好機をつかみ、張り切って事を行うこと。
追い風を受けて帆を上げる様子から。 - 鬼に金棒(おににかなぼう):
強いものが何かを得て、さらに強くなること。
「水を得た魚」は「本来の力を取り戻す」ニュアンスが強いのに対し、こちらは「強さの加算」に焦点がある。 - 虎に翼(とらにつばさ):
「鬼に金棒」と同様、強いものにさらなる威力が加わること。
「水を得た魚」の対義語
環境が合わずに能力を発揮できない様子を表す言葉です。
- 陸に上がった河童(おかにあがったかっぱ):
水の中では強い河童も、陸上では力がなくなってしまうこと。
自分に合わない環境で無力になる様子の最も適切な対義語。 - 青菜に塩(あおなにしお):
元気がなくなり、しおれている様子。
「水を得た魚」の英語表現
英語でも「魚と水」の関係を用いた同様の表現が存在します。
like a fish in water
- 意味:「水の中の魚のように」
- 解説:日本語と全く同じ発想で、自分の環境に馴染んで生き生きしている様子を表します。
- 例文:
She is like a fish in water when she is on stage.
(彼女はステージに立つと、水を得た魚のようだ。)
in one’s element
- 意味:「本領を発揮して」
- 解説:”element” は「自然な環境」「本来の領域」を指します。
- 例文:
He is really in his element when he’s cooking.
(彼は料理をしている時、まさに水を得た魚だ。)
「水を得た魚」に関する豆知識
「水魚の交わり」との違い
由来の項目で解説した通り、「水を得た魚」は劉備の言葉から生まれました。
この故事は、もう一つの有名な四字熟語「水魚の交わり」(すいぎょのまじわり)の語源でもあります。
- 水魚の交わり:
離れることのできない、親密な人間関係や友情のこと。 - 水を得た魚 :
環境を得て、生き生きと活躍すること。
同じ逸話から生まれた言葉ですが、現代では明確に使い分けられています。「二人は水を得た魚の仲だ」と言うと誤用になりかねないため、関係性を表す場合は「水魚の交わり」を使いましょう。
まとめ
「水を得た魚」は、その人が最も輝く場所にいることを祝福するような、ポジティブな響きを持つ言葉です。
誰にでも、得意なことや心からリラックスできる場所があるはずです。
自分自身が「水を得た魚」になれる環境を見つけることはもちろん、周囲の人がそのような状態にあるときに、この言葉を使ってその活躍を称えるのも素敵なことでしょう。








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