意味
「前車の轍を踏む(ぜんしゃのてつをふむ)」とは、前の人がした失敗を、自分も同じように繰り返してしまうことです。
単に「後を追う」という意味ではなく、前の車が転倒した危険な通り道(わだち)をそのまま進んでしまい、自分も同じように転倒してしまうという、「失敗の反復」を指す戒めの言葉です。
- 前車(ぜんしゃ):
先を行く車。転じて、先人や先輩のこと。 - 轍(てつ):
車輪が通った後に残る溝。わだち。
語源・由来
「前車の轍を踏む」の由来は、中国の歴史書『漢書(かんじょ)』の「賈誼伝(かぎでん)」に見られる一節です。
漢の時代の政治家・賈誼(かぎ)は、前の王朝である秦(しん)が滅びた原因を分析し、世間のことわざ「前車覆るは後車の戒め」を引いて皇帝に警告しました。
これは、「前の車がひっくり返ったのを見たならば、後ろの車はそれを自分たちの教訓とし、同じ道を通ってはならない」という教えです。
賈誼は続けて、秦がすぐに滅んだ跡を「轍跡」(車の通った跡)と呼び、それが見えているのに避けないことを戒めています。
先人が失敗した原因を無視して、同じ過ち(轍)をなぞってしまう愚かさを説いたこの言葉は、やがて「轍を踏む」という表現で定着しました。
使い方・例文
「前車の轍を踏む」は、過去の事例があるにもかかわらず失敗を繰り返すことへの警告や、自らの不手際を反省する場面で使われます。
例文
- 前任者の失敗を知りながら、また前車の轍を踏む。
- 過去を学ばず、競合他社と同じ前車の轍を踏む。
- 前車の轍を踏む結果となり、事業は失敗に終わった。
- 同じ前車の轍を踏むまいと、入念な事前調査を行う。
類義語・関連語
「前車の轍を踏む」と似た意味を持つ言葉には、以下のようなものがあります。
- 二の舞を演じる(にのまいをえんじる):
前の人と同じ失敗を繰り返すこと。 - 覆轍を踏む(ふくてつをふむ):
先人の失敗を繰り返すこと。
「覆轍」は、ひっくり返った車のわだちの跡のこと。 - 前轍を踏む(ぜんてつをふむ):
前の人と同じような失敗を繰り返すこと。「前車の轍を踏む」と同じ意味の言い方。
対義語
「前車の轍を踏む」と対照的な意味を持つ言葉は、以下の通りです。
- 他山の石(たざんのいし):
他人の誤った言動や失敗を見て、自分の人格を磨くための参考にすること。 - 前車覆るは後車の戒め(ぜんしゃくつがえるはこうしゃのいましめ):
先人の失敗を自分の教訓とすること。この言葉自体が「轍を踏む」ことへの回避を促す原典です。
英語表現
「前車の轍を踏む」を英語で表現する場合、失敗の繰り返しであることを直接的に示す言葉が用いられます。
Repeat the same mistake
「同じ間違いを繰り返す」
最もシンプルで、ビジネスや日常会話でも幅広く使われる表現です。
We must study the past so that we do not repeat the same mistake.
(前車の轍を踏まぬよう、過去を学ばねばならない。)
「前車の轍を踏む」の「轍」は「てつ」と読む
「轍」という漢字は、単体では「わだち」と読むのが一般的ですが、この慣用句においては「てつ」と音読みします。
同じ意味の「前轍を踏む(ぜんてつをふむ)」「覆轍を踏む(ふくてつをふむ)」も「てつ」と読み、「同じ轍を踏む」も「おなじてつをふむ」と読みます。
慣用句として読むときは「わだちをふむ」ではなく「てつをふむ」です。












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