過ちては改むるに憚ること勿れ

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ことわざ 故事成語
過ちては改むるに憚ること勿れ
(あやまちてはあらたむるにはばかることなかれ)

21文字の言葉」から始まる言葉

思わぬミスをしてしまったとき、つい自分を正当化したり、隠したくなったりする心の揺れを感じるものです。
気まずさやプライドが邪魔をして、素直になれない瞬間は誰にでもあります。
しかし、大切なのは失敗そのものではなく、その後の振る舞いにある。
そんな潔い生き方を説いたのが、
「過ちては改むるに憚ること勿れ」(あやまちはあらたむるにはばかることなかれ)という言葉です。

意味・教訓

「過ちては改むるに憚ること勿れ」とは、間違いを犯したと気づいたなら、メンツやプライドにこだわらず、即座に改めるべきであるという教訓です。

この言葉は、以下の4つの要素から成り立っています。

  • 過ちて(あやまちて):間違いを犯してしまったら。
  • 改むるに(あらたむるに):それを正し、改めること。
  • 憚ること(はばかること):ためらうこと。遠慮すること。
  • 勿れ(なかれ):〜してはいけない。〜するな。

つまり、「失敗したことを恥ずかしいと思ってグズグズするのではなく、勇気を持ってすぐに正しなさい」と背中を押してくれる言葉です。

語源・由来

「過ちては改むるに憚ること勿れ」の出典は、中国の儒教の経典である『論語』(ろんご)の学而(がくじ)編です。

古代中国の思想家、孔子が弟子たちに向けて説いた教えの中に登場します。
孔子は「過ちを犯しながら、それを改めないことこそが、本当の過ちである」とも述べています。

当時の社会においても、人間が間違いを犯すことは避けられないものと考えられていました。
だからこそ、聖人君子(徳の高い立派な人)と一般の人を分ける境界線は、失敗の有無ではなく「失敗した後にどう動くか」にあると説いたのです。
この教えは、時代を超えて日本にも伝わり、武士道や商人の心得、教育の現場などで広く重んじられてきました。

使い方・例文

「過ちては改むるに憚ること勿れ」は、自分のミスを認める勇気が必要な場面や、他人の誠実な対応を称賛する際によく用いられます。

自分の非を認めることは勇気がいりますが、この言葉を意識することで、より良い人間関係や結果に繋げることができます。

例文

  • 自分の意見が間違っていたと気づき、「過ちては改むるに憚ること勿れ」の精神ですぐに訂正した。
  • 先輩から「ミスは誰にでもある。過ちては改むるに憚ること勿れだ」と励まされた。
  • 料理の塩加減を間違えたが、過ちては改むるに憚ること勿れと考え、作り直すことに決めた。
  • 部活動で後輩の指摘を素直に受け入れた部長の姿は、まさに過ちては改むるに憚ること勿れを体現していた。

誤用・注意点

この言葉は、あくまで「間違いに気づいた後の迅速な行動」を促すものです。
「どうせ後で改めればいいのだから、いくら失敗しても構わない」といった、無責任な態度の免罪符として使うのは誤りです。

また、「憚る(はばかる)」を「遠慮する」という意味で捉えるのは正しいですが、目上の人に対して「早く改めてください」とこの言葉を突きつけるのは、非常に失礼にあたるため注意が必要です。
基本的には自分への戒めや、親しい間柄での励ましとして使うのが無難です。

類義語・関連語

「過ちては改むるに憚ること勿れ」と似た意味を持つ言葉には、以下のようなものがあります。

  • 過ちて改めざる、これを過ちという(あやまちはあらためざる、これをあやまちという):
    間違いを犯しても改めないことこそが、真の過ちであるという意味。
  • 過ちを改むるに如かず(あやまちをあらたむるにしかず):
    過ちを犯したときは、素直に改めるのが一番だということ。
  • 善く後を追う者はこれを継ぐ(よくあとをおうものはこれをつぐ):
    過去の失敗に学んで、それを改善し続けていくことの重要性を説く。
  • 君子は豹変す(くんしはひょうへんす):
    本来は「徳のある人は間違いだと分かれば、豹の紋様が変わるように鮮やかに考えを改める」という良い意味で使われます。

対義語

「過ちては改むるに憚ること勿れ」とは対照的な意味を持つ言葉は以下の通りです。

  • 過ちを飾る(あやまちをかざる):
    自分の失敗を認めず、言葉巧みに言い逃れをしたり、取り繕ったりすること。
  • 非を認める(ひをみとめる):
    ※この対義語として「非を認めない」という態度がありますが、慣用句としては「過ちを飾る」が最も適当です。

英語表現

「過ちては改むるに憚ること勿れ」を英語で表現する場合、以下の定型句が使われます。

It is never too late to mend.

  • 意味:「改めるのに遅すぎることはない」
  • 解説:一度失敗したり、悪い習慣がついたりしても、それを直そうと決意するのに遅すぎることはないという、非常に有名なことわざです。
  • 例文:
    Don’t give up on your study. It is never too late to mend.
    (勉強を諦めてはいけない。改めるのに遅すぎることはないのだから。)

Better late than never.

  • 意味:「遅くても、やらないよりはマシ」
  • 解説:間違いを正したり、何かを始めたりするのが遅れたとしても、全くしないよりはずっと良いという意味で日常的に使われます。
  • 例文:
    I finally apologized to him. Well, better late than never.
    (ようやく彼に謝った。まあ、遅くてもしないよりはマシだよね。)

補足トリビア

『論語』の中には、この言葉とセットで覚えたい一節があります。
それは「過ちて改めざる、是を過ちと謂う」という言葉です。

人は誰しも、うっかりミスをしたり、判断を誤ったりするものです。
孔子は、それを「罪」とは呼びませんでした。
本当の「罪(過ち)」とは、それが間違いだと分かっているのに、プライドを守るために嘘をついたり、放置したりする「心の弱さ」にあると考えたのです。

この考え方は、現代のビジネスにおける「リスク管理」や「コンプライアンス」の精神にも通じています。
小さなミスを隠したことが、後に取り返しのつかない大きな問題に発展することは珍しくありません。
二千年以上前の教えが、今の私たちの生活においても極めて実用的であることは、驚くべきことと言えるでしょう。

まとめ

「過ちては改むるに憚ること勿れ」という言葉は、私たちに「素直さ」と「勇気」の大切さを教えてくれます。

間違いを認める瞬間は、誰にとっても苦しいものです。
しかし、その苦しさを乗り越えて即座に軌道修正できる人こそが、周囲からの信頼を得て、さらに成長していくことができるのでしょう。

日々の生活の中で、もし「あ、間違えたかな」と感じる瞬間があったなら、この言葉を思い出してみてください。
スマートに、そして誠実に自分をアップデートしていくための、大きな支えになってくれることでしょう。

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