意味
「逃がした魚は大きい(にがしたさかなはおおきい)」は、あと少しのところで逃したものほど、実際よりずっと価値があるように思えてしまうという意味です。
異形として「逃げた魚は大きい」とも言います。
語源・由来
釣りで、針に掛けた魚を取り逃がした場面にたとえた言葉です。
同じ場面をそのまま言う「釣り落とした魚は大きい」という言い方もあります。
釣り上げる直前で糸が切れて逃げられた魚は、実際の大きさを確認できないため、釣り人は手応えだけを頼りに「あれは大物だった」と想像の中で過大評価してしまいます。
この感じ方を、釣りに限らず、手に入れそこなったもの全般に当てはめて使います。
使い方・例文
「逃がした魚は大きい」は、好機を逃して後悔している場面で使われます。
- 振った相手の結婚を知り、逃がした魚は大きいと悔やむ。
- 見送ったマンションが値上がりし、逃がした魚は大きいと嘆く。
- 契約寸前で失注した案件に対し、逃がした魚は大きいと引きずる。
類義語・関連語
「逃がした魚は大きい」と似た意味を持つ言葉には、以下のものがあります。
- 隣の芝生は青い(となりのしばふはあおい):
自分の手元にない他人のものが、自分自身のものより良く見える心理状態。 - 死んだ子の年を数える(しんだこのとしをかぞえる):
過ぎ去ったことや取り返しのつかない過去の出来事をいつまでも嘆く愚かさのたとえ。
対義語
「逃がした魚は大きい」と反対の意味を持つ言葉には、以下のものがあります。
- 釣った魚は餌をやらない(つったさかなはえさをやらない):
手に入れるまでは尽くすが、自分のものになった途端に価値を見失い冷たく扱う態度。
英語表現
The one that got away
直訳:逃げたもの
意味:逃がした好機や結ばれなかった恋人を過大評価する心理
She is the one that got away.
(彼女は、逃がした魚です。)
Distance lends enchantment to the view
直訳:距離は景色に魔法をかける
意味:手元にないものや遠くにあるものは実際よりも美しく見えるという心理
It is true that distance lends enchantment to the view.
(遠くから見ると美しく見えるというのは本当です。)
川柳から国木田独歩まで、「逃がした魚」の古い用例
江戸時代の川柳集『誹風柳多留』に、「釣落す魚の咄のたいそうさ」という句があります。
「たいそう」は大げさという意味で、釣り落とした魚の話ほど大げさになる、と詠んでいます。
取り逃がした魚を大きく語る釣り人は、江戸時代から川柳の題材でした。
ことわざの形では、明治時代の諺の本に載っています。
1893年(明治26年)の『古今俚諺類聚』は「釣落した魚は大きし」の形で収め、1906年(明治39年)の『俚諺辞典』には、「釣り落した魚は大きい」とともに「迯がした魚は大きい」の形も見えます。
国木田独歩の短編「第三者」(『独歩集』1905年所収)では、去っていったお鶴を忘れられない、語り手の友人の江間に、語り手が「矢張逃げた魚は大きいのだ」と言い、「釣り上げて見給へ、矢張唯だの小さい魚だから」と続けます。
江間の返事は「小さくても刺れても僕は逃げた魚を望む」でした。
手に入れていたら「唯だの小さい魚」だったはずだという語り手の言い分は、このことわざの意味そのものです。











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