「あの時、あの人の告白を受けていれば幸せになれたのに」
「あの株を売らなければ今頃大儲けだったのに」など、
手に入りそうだったチャンスを逃して、いつまでも悔やんだ経験はありませんか?
逃がした魚は大きいとは、惜しくも手に入らなかったものは、実際以上に価値があるように思えてしまい、悔しさが募る心理を表すことわざです。
「逃がした魚は大きい」の意味
一度は自分のものになりかけながら失ってしまったものは、実際よりも素晴らしく、価値があるもののように感じられるということ。
- 逃がした魚:手に入れる寸前で失った利益、好機、あるいは別れてしまった恋人など。
- 大きい:実際のサイズ(価値)よりも、主観的に「巨大だった」「最高だった」と思い込んでしまう心理。
単に「大きな損をした」という意味ではなく、「失ったがゆえに、人間の心理として過大評価してしまう」という、未練や惜しむ気持ちに焦点を当てた言葉です。
「逃がした魚は大きい」の語源・由来
このことわざに、特定の歴史的な出典や物語(中国の故事など)はありません。古くからの釣り人たちの実感から生まれた言葉だとされています。
釣りにおいて、釣り上げた魚は実際に計測できるため、現実のサイズが確定します。
しかし、針にかかったものの、釣り上げる直前で糸が切れて逃げられてしまった魚は、誰もその正体を見ていません。
釣り人はその手応えや引きの強さから、「あれは大物だったに違いない」「尺(約30cm)は超えていただろう」と、想像の中で魚をどんどん巨大化させてしまいます。
この「実体がない分、想像で理想化してしまう」という心理が、魚釣り以外の日常的な喪失体験(恋愛やビジネスなど)にも当てはまることから、広く使われるようになりました。
「逃がした魚は大きい」の使い方・例文
恋愛、ビジネス、買い物など、チャンスを逃して後悔しているあらゆる場面で使われます。
自分自身への戒めや慰めとして使うこともあれば、未練がましい相手をたしなめる際に使うこともあります。
例文
- 振った相手が出世したと聞いて、逃がした魚は大きかったと地団駄を踏んだ。
(参考:地団駄を踏む) - 迷っているうちに売り切れた限定品が、どうしても諦めきれない。まさに逃がした魚は大きいだ。
- 「あの取引さえ決まっていれば…」といつまでも嘆く部長に、部下が「逃がした魚は大きいと言いますから、次に行きましょう」と声をかけた。
「逃がした魚は大きい」の類義語
失ったものを嘆く心理や、取り返しがつかない状況を表す言葉です。
- 逃げた魚は大きい(にげたさかなはおおきい):
「逃がした」ではなく「逃げた」とする形。意味は全く同じで、こちらも辞書に掲載されている一般的な表現です。 - 隣の芝生は青い(となりのしばふはあおい):
他人のものや手に入らないものは、自分のものよりも良く見えるという心理。「自分の手元にないものを過大評価する」という点で共通しています。 - 死んだ子の年を数える(しんだこのとしをかぞえる):
亡くなった子がもし生きていたら何歳になったかと考えること。転じて、過ぎ去ったことや取り返しのつかないことを嘆く愚かさのたとえ。
「逃がした魚は大きい」の対義語
「手元にないものを過大評価する」ことの逆で、「手に入れたものの価値を軽んじる」という意味の言葉が対照的です。
- 釣った魚に餌をやらない(つったさかなにえさをやらない):
手に入れるまでは優しく尽くすが、一度自分のものにしてしまうと、安心して構わなくなること。手に入れる前は価値が高く、手に入れた後は価値が下がったように扱う態度。 - 後の祭り(あとのまつり):
時機を逸してしまってはどうしようもないこと。
(※直接的な対義語ではありませんが、「悔やんでも無駄」という文脈で対比的に語られることがあります)
「逃がした魚は大きい」の英語表現
英語圏でも、釣り由来の表現が存在します。
The one that got away.
- 意味:「逃げたやつ(魚)」
- 解説:直訳では単に「逃げたもの」ですが、慣用句として「逃がした魚は大きい(逃した好機、結ばれなかった恋人)」という意味で定着しています。
- 例文:
She is the one that got away.
(彼女は、逃がした魚[最高の女性]だった。)
Distance lends enchantment to the view.
- 意味:「遠くから見ると魔法がかかる(景色は遠くから見た方が良く見える)」
- 解説:手元にないもの、遠くにあるものは、実際よりも美しく見えるという心理を表します。
「逃がした魚は大きい」に関する豆知識
なぜ魚は大きくなってしまうのか?(心理学的背景)
このことわざが示す心理は、現代の心理学でも説明がつきます。
人間には、達成できたことよりも、達成できなかったことや中断したことのほうが強く記憶に残るという心理現象があり、これをツァイガルニク効果と呼びます。
「手に入らなかった」という未完了の状態が執着を生み、さらに「もし手に入っていたら…」という想像が加わることで、対象が記憶の中で美化され、現実以上に「大きな魚」へと成長してしまうのです。
まとめ – 未練を断ち切るための言葉
逃がした魚は大きいという言葉は、「その魚は本当に大きかったのか?」と冷静に問いかけるきっかけをくれます。
その魚が大きく見えているのは、あなたの「悔しさ」というレンズが拡大して見せているだけかもしれません。
「あれは幻の大物だったんだ」と笑って諦め、次の魚を狙いにいくほうが、精神衛生上も良く、次のチャンスを掴む近道と言えるでしょう。







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