意味
「働かざる者食うべからず(はたらかざるものくうべからず)」とは、働く気がないのに、食べることだけは求めてはならないという戒めです。
「食うべからず」の「べからず」は「〜してはならない」という禁止を表す古い言い方で、怠け者への強い非難や、自立を促す気持ちを込めて使われます。
語源・由来
キリスト教の新約聖書に収められた「テサロニケの信徒への手紙二」という書物に登場する言葉です。
手紙には、信徒の中に少しも働かずに暮らす人々がいたことが書かれています。
キリストの再臨(=キリストが再びこの世に現れること)が近いと信じて仕事をやめた人たちだったと考えられています。
これを戒めたのが、使徒パウロの名で書かれた「働こうとしない者は、食べることもしてはならない」という一節です。
その後、ロシア革命の指導者レーニンがこの言葉を社会主義の原則として掲げ、1918年に定められたソビエト・ロシアの憲法にも盛り込まれたことで、宗教の枠を超えて広く知られるようになりました。
使い方・例文
- 大学を出ても家でごろごろしている息子に、父は「働かざる者食うべからずだ」と言ってアルバイトを探させた。
- 合宿で炊事当番をさぼった者が真っ先に箸を伸ばし、「働かざる者食うべからずだぞ」とたしなめられた。
- 手を動かさずに口だけ出す同僚が、報酬は皆と同じに欲しいと言い出し、周りは働かざる者食うべからずだとあきれた。
誤用・注意点
この言葉はあくまで「働く意志がない怠け者」を戒めるための表現です。
病気や障害、高齢などの理由で「働きたくても働けない人」に向けて使うのは、本来の趣旨から外れた、むごい非難になります。
類義語
働かずに暮らすことや、何もしないで良い結果を望むことにかかわる言葉です。
「働かざる者食うべからず」と類義語の違い
どれも「働かないこと」にかかわる言葉ですが、分け前を求めるなと戒めるのか、ただ暮らしぶりを言うのか、何もしなければ実りはないという道理を言うのかが違います。
| 語句 | 対象 | 言葉の性質 |
|---|---|---|
| 働かざる者食うべからず | 怠惰な人 | 働かない者は分け前を求めるなという戒め |
| 無為徒食 (むいとしょく) | 働かずに暮らす人 | 怠けた生活状態そのもの |
| 蒔かぬ種は生えぬ | 努力しない人 | 何もしなければ実りはないという道理 |
対義語
労せずして利益を得ることを表す言葉です。
英語表現
If a man will not work, he shall not eat
意味:働かない者は食べるべきではない。
In this community, the rule is simple: if a man will not work, he shall not eat.
(この共同体でのルールは単純です。働かざる者食うべからずです。)
北米植民地の規則「働かざる者食うべからず」、病人は除外
この言葉は、1607年に建設されたジェームズタウン(北米で最初に定着したイギリスの植民地)で、実際に規則として使われました。
入植者には肉体労働や農作業に慣れない人が多く、準備の不足や先住民の襲撃も重なって、最初に渡った104人のうち、翌年1月まで生き延びたのは38人でした。
1608年には2度の補給船で、合わせて170人ほどの入植者が新たに加わりました。
1609年の春、植民地の指導者だったジョン・スミスは、入植者に向けて「働かない者は食べてはならない」という規則を言い渡しました。
このとき「病気で働けない者は除く」と断ったうえで、30〜40人の働き者の労働を、怠けている150人を養うために費やさせはしないと理由を述べています。
病気などで働けない人には使わないという、今日の注意点と同じ線引きです。










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