意味
「人の褌で相撲を取る(ひとのふんどしですもうをとる)」とは、他人の持ち物や骨折りにただ乗りして、自分だけが得をしようとするという意味です。
相撲は本来、自分自身の力と技で勝負するものですが、他人の褌(ふんどし)を借りて土俵に上がる様子にたとえた言葉です。
多くの場合、自分では汗をかかずに美味しいところだけを持っていこうとする、ずる賢い態度や他力本願な姿勢を批判するニュアンスで使われます。
語源・由来

「人の褌で相撲を取る」は、江戸時代後期のことわざ集『諺苑』(1797年)にも見える比喩表現です。
力士にとって褌は、身に付けるただ一つの、自分だけの道具です。
その褌すら自分で用意せず、他人のものを借りて土俵に上がるのは、勝負師として面目のない、厚かましいふるまいと言えます。
この「あり得ないほど図々しい状況」を、日常生活や商売の場に当てはめ、他人の資本やアイデアを勝手に利用する人々を揶揄する言葉として定着しました。
使い方・例文
他人の成果を自分のものにしたり、他人の威光を借りて有利に立ち回ったりする場面で使われます。
ビジネスの成功談だけでなく、学校の課題や家庭内の役割分担など、身近な「便乗」に対しても用いられます。
例文
- 同僚の企画を横取りして人の褌で相撲を取るのは卑怯だ。
- 兄の宿題を丸写しして人の褌で相撲を取るのはやめなさい。
- 隣町の成功事例を語り、人の褌で相撲を取るような真似をする。
- 親の威光を笠に着て、人の褌で相撲を取る商売を続けている。
誤用・注意点
この言葉には、相手を批判し、軽蔑する響きが強くあります。
本人の前で使えば、相手をひどく怒らせかねません。
また、単に「他人の力を借りる」という協力関係を指す言葉ではありません。
そこには必ず「自分は苦労せずに」「ちゃっかり利用して」「自分の手柄にする」という、否定的な意味合いが含まれます。
類義語・関連語
「人の褌で相撲を取る」と似た意味を持つ言葉には、以下のようなものがあります。
- 虎の威を借る狐(とらのいをかるきつね):
他人の権勢を背景にして威張る者のたとえ。 - 尻馬に乗る(しりうまにのる):
深い考えもなく、他人の言動に便乗して調子を合わせること。 - 人の太刀で功名する(ひとのたちでこうみょうする):
他人の刀で手柄を立てる意から、他人の物や力を利用して自分の手柄にすること。 - 人の提灯で明かりを取る(ひとのちょうちんであかりをとる):
他人の提灯の明かりを借りる意から、他人の物を利用して自分の用に役立てること。
対義語
「人の褌で相撲を取る」とは対照的な意味を持つ言葉は以下の通りです。
- 独立独歩(どくりつどっぽ):
他人に頼らず、自分の信じる道を自分の力で進んでいくこと。 - 粉骨砕身(ふんこつさいしん):
骨を粉にし、身を砕くほど、力の限り努力すること。 - 自力更生(じりきこうせい):
他人の助けを借りず、自分一人の力で生活や事業を立て直すこと。
英語表現
「人の褌で相撲を取る」を英語で表現する場合、以下の定型フレーズが使われます。
ride on someone’s coattails
「(有名人や成功した人の)上着の裾(すそ)に乗る」
他人の成功や人気に便乗して、自分も利益を得ようとすることを指す一般的な慣用句です。
He is just riding on his father’s coattails to get that position.
(彼はその地位を得るために、父親の権勢に便乗しているだけだ。)
take credit for someone else’s work
「他人の仕事の手柄を自分のものにする」
より直接的に、他人の努力を自分の手柄として主張する状況で使われます。
Don’t let him take credit for your work; you did all the research.
(彼に君の手柄を横取りさせてはいけない。調査をしたのは全部君なのだから。)
戯作者の式亭三馬は「人の褌で相撲を取る」遊び人を描いた
江戸後期の戯作者(娯楽本の作者)式亭三馬は、滑稽本『四十八癖』で、幇間(太鼓持ち)のまねをする素人を描いています。
きちんとした家業があるのに働くのを嫌い、親のすねをかじって遊び歩き、仲間にお世辞を言って回る男です。
三馬はその訳を「他の褌で角力とらんことをおもへばなり」(他人の褌で相撲を取ろうと思うからだ)と書きました。
自分の金は使わず、他人のおあまりを食べ、自分の金の出ない酒を飲みたがる、と続きます。
「他」の字で書いたこの形は、今も使われる「他人の褌で相撲を取る」に通じます。
自分は元手を出さずに人のもので遊ぶ者を責める言葉として、三馬の時代にはもう使われていたことが分かります。











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