意味
「悪銭身につかず(あくせんみにつかず)」とは、盗みや博打などの不正な手段で得たお金や、大した苦労もせずに手に入れたお金は、つまらないことに使ってしまったり、すぐに失ったりして手元に残らないという意味です。
語源・由来
かつての日本では、私鋳銭と呼ばれる品質の劣る「悪銭」が市場に流通することがありました。
こうした銭は、破損したり摩滅したりした銭とともに、支払いの際に受け取りを拒まれることがありました。
ただし、このことわざの「悪銭」は貨幣の質のことではなく、盗みや賭け事など正当でない手段で得た金銭を指します。
使い方・例文
不正な手段でお金を稼ごうとする人をいさめたり、棚ぼたで得た金を使い果たした人を皮肉ったりする場面で使われます。
- パチンコで勝った三万円は、その晩の飲み代と翌日の負けで消えた。悪銭身につかずだ。
- 客をだまして稼いだ金で豪遊していた男は、一年もたたずに無一文になった。悪銭身につかずとはこのことだ。
- 楽にもうかる話に乗りかけた私に、父は「悪銭身につかずと言うだろう」と首を振った。
類義語・関連語
「悪銭身につかず」と似た意味を持つ言葉には、以下のようなものがあります。
- あぶく銭は身につかぬ(あぶくぜにはみにつかぬ):
努力せずに得たお金は、泡のようにすぐに消えてしまうということ。
対義語
「悪銭身につかず」とは対照的な意味を持つ言葉は以下の通りです。
- 勤倹貯蓄(きんけんちょちく):
仕事に励み、無駄遣いをせずにコツコツとお金を蓄えること。 - 正直の儲けは身につく(しょうじきのもうけはみにつく):
正直に働いて得たお金は、むだに消えずに手元に残るということ。
英語表現
「悪銭身につかず」を英語で表現する場合、以下の定型句がよく使われます。
Easy come, easy go
「簡単に手に入ったものは、簡単に去っていく」という意味の非常に有名なフレーズです。
I lost all my winnings in an hour. Easy come, easy go.
(勝ち金を1時間で全部すってしまった。まあ、悪銭身につかずだ。)
Ill-gotten gains never prosper
「不正に得た利益は決して長続きしない」という、より教訓的なニュアンスを持つ表現です。
He started a business with money he had swindled, but it failed within a year. Ill-gotten gains never prosper.
(だまし取った金で始めた彼の事業は、1年ともたなかった。まさに悪銭身につかずだ。)
「悪銭身につかず」の古い例は幕末の歌舞伎に
この言葉の古い用例はあまり残っておらず、江戸時代のものとしては、1860年(安政7年)初演の歌舞伎『三人吉三廓初買』(河竹黙阿弥作)の序幕の台詞が知られる程度です。
広く使われるようになったのは、明治に入ってからのようです。
悪銭は身に附かずとはよく申したもの、僅二月たつかたたぬにみんな耗ってしまひました
(悪銭は身につかないとはよく言ったもので、ふた月たつかたたないかのうちに、すっかり使ってしまいました)
芝居の筋も、この言葉を地でいきます。
盗まれた百両は人の手から手へ渡り、どの持ち主のもとにも落ち着きません。
金をなくした商家の手代も、その金を届けられた老人も、百両の奪い合いから義兄弟になった三人の盗賊も、最後はみな命を落とします。













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