烏の頭が白くなる

ことわざ 故事成語
烏の頭が白くなる(からすのあたまがしろくなる)

13文字の言葉か・が」から始まる言葉
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「絶対にありえない」「そんなことが起こるはずがない」。
私たちは時折、物事の不可能性を強調したい場面に出会います。

烏の頭が白くなる(からすのあたまがしろくなる)」とは、まさにそのような「ありえないこと」を指す、少し古風ですが強い意味を持つことわざです。

この言葉が持つ深い意味、そしてその背景にある中国の古い物語について、詳しく見ていきましょう。

「烏の頭が白くなる」の意味・教訓

「烏の頭が白くなる」とは、実際にはありえないこと、起こるはずのないことのたとえです。

烏(カラス)は全身が真っ黒であり、その頭が白くなることは自然の摂理に反すると考えられていました。そこから転じて、現実には起こり得ない物事を指すようになりました。

多くの場合、「烏の頭が白くなっても(=絶対に)〜しない」や、「烏の頭が白くなるのを待つ(=永遠に来ないものを待つ)」といった形で、強い否定や、実現不可能な待ち時間を表現するために使われます。

カラス

「烏の頭が白くなる」の語源

この言葉の直接の由来は、中国の故事成語「烏頭白く馬角を生ず(うとうしろくうまつのをしょうず)」にあります。

戦国時代の中国、燕(えん)の太子であった丹(たん)が、秦(しん)国の人質になっていました。
丹が故郷への帰国を申し出た際、秦王(後の始皇帝)は彼を引き留めようと、「烏の頭が白くなり、馬に角が生えたら帰国を許そう」と、ありえない条件を出しました。

この「ありえない条件」を指す故事が、日本に伝わり「烏の頭が白くなる」という形で定着しました。

使用される場面と例文

現代の日常会話で頻繁に使われる言葉ではありませんが、文学作品や、改まった文脈で「絶対にありえない」と強く主張したい場面などで用いられます。

例文

  • 「彼が自ら過ちを認めるのは、「烏の頭が白くなる」のを待つようなものだろう。」
  • 「たとえ「烏の頭が白くなる」ことがあっても、この信念だけは曲げられません。」
  • 「あのケチな彼が人にご馳走するなんて、「烏の頭が白くなる」ほうがまだ早いよ。」

類義語・言い換え表現

「ありえないこと」を意味する表現は、他にも多く存在します。

  • 太陽が西から昇る(たいようがにしからのぼる):
    自然の摂理に反する、ありえないことの代表的なたとえ。
  • 馬に角が生える(うまにつのがはえる):
    「烏の頭が白くなる」と同じ故事に由来する、ありえないことのたとえ。
  • 百年の河清を俟つ(ひゃくねんのかせいをまつ):
    黄河の水が澄むのを待つ意から、永遠に実現しないことを待ち続けるたとえ。
  • 石に花が咲く(いしにはながさく):
    石に花が咲くという、ありえないことのたとえ。

対義語

「ありえない」の反対、つまり「非常に簡単である」「確実である」といった意味の言葉が対照的です。

  • 朝飯前(あさめしまえ):
    朝食の前にもできるほど、非常に簡単なこと。
  • 掌を返す(たなごころをかえす):
    手のひらを裏返すように、態度などが簡単に変わること。
  • 火を見るより明らか(ひをみるよりあきらか):
    火を見るのと同じくらい、疑いようもなく明らかなこと。

英語での類似表現

英語にも「ありえないこと」を指す、ユーモラスで強調的な表現があります。

When pigs fly.

  • 意味:「豚が空を飛んだらね」。
    「ありえない」「絶対にない」という意味で使われる、最も一般的な口語表現です。
  • 例文:
    He said he’ll pay me back tomorrow, but I think that’ll happen when pigs fly.
    (彼は明日お金を返すと言ったが、まあ無理だろうね。)

When hell freezes over.

  • 意味:「地獄が凍りついたらね」。
    これも「絶対にない」という強い否定を表す表現です。
  • 例文:
    I’ll vote for him when hell freezes over.
    (彼に投票することなんて、絶対にありえない。)

「烏の頭が白くなる」に関する豆知識

故事の結末は?

「烏の頭が白くなる」の由来となった中国の故事には、実は続きがあります。

ありえない条件を突きつけられた太子丹が、天を仰いで嘆き悲しんだところ、なんと本当に頭の白い烏と角の生えた馬が出現した、というのです。奇跡が起こったことに驚いた秦王は、約束を守り、丹の帰国を許したとされています。(※諸説あり)

このため、元の故事は「ありえないこと」のたとえであると同時に、「誠意が天に通じれば奇跡も起こる」という文脈で使われることもある、非常にドラマチックな物語です。

現実の「白い烏」

ことわざでは「ありえない」とされていますが、現実世界では、ごく稀にアルビノ(先天性色素欠乏症)や白変種(はくへんしゅ)によって、全身が白かったり、部分的に白い羽毛を持ったりする烏が生まれることがあります。

これらは古来より、神聖な存在や吉兆の証として扱われることもありました。

まとめ – ありえないことの象徴

「烏の頭が白くなる」は、真っ黒な烏の姿から「絶対にありえないこと」の象徴として使われてきたことわざです。その背景には、人質となった王子の運命を左右した、中国の古い物語がありました。

現代では「太陽が西から昇る」といった表現の方が一般的かもしれませんが、この言葉は「ありえない」ということを、より古風で強い意志を込めて伝える力を持っています。

めったに起こらない奇跡を信じる心と、現実にはありえないと断言する冷静な目。このことわざは、私たちにその両面を思い起こさせてくれるかもしれませんね。

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