ことわざ 慣用句

腹が減っては戦ができぬ

(はらがへってはいくさができぬ)

空腹では十分な力が発揮できず、物事がうまくいかないこと。

異形:腹が減っては戦はできぬ

14文字の言葉 / 「は・ば・ぱ」から始まる言葉
腹が減っては戦ができぬ ことば
スポンサーリンク

意味

「腹が減っては戦ができぬ(はらがへってはいくさができぬ)」とは、空腹の状態では十分な力が出せず、何事もうまくいかないという意味の言葉です。

ここでの「戦いくさ」は、現代においては単なる合戦のことではなく、仕事、勉強、スポーツの試合など、心身を尽くして取り組むべきあらゆる「勝負どころ」や「困難な状況」を指します。
大きな目標を達成するためには、根性や精神論だけでなく、まずは食事をとって体調を整えるといった物理的な準備が不可欠であるという教訓を伝えています。

語源・由来

「腹が減っては戦ができぬ」の「戦」は、文字どおり戦争や合戦のことです。
ただし、武士の間で生まれた言葉かどうかははっきりしません。
「戦」を使った今の形は、明治より前の用例が見当たりません。
江戸末期の歌舞伎『与話情浮名横櫛よわなさけうきなのよこぐし』(1853年初演)では、駕籠かごかきが飯を食べながら「腹が減つちやァ仕事は出来ねえ」と言っています。
身近な「仕事」を、命がけの「戦」に言い換えて大げさにした形と見る説もあります。

特定の人物が言い出した言葉として伝わるものではありません。
ナポレオンの言葉として知られているのは、英語の似た言い回し「An army marches on its stomach」のほうです。

使い方・例文

「腹が減っては戦ができぬ」は、これから重要な作業に取り掛かろうとする時や、周囲に無理をして働いている人がいる際、まず食事をとろうと促す場面で使われます。

例文

  • 会議の前に、腹が減っては戦ができぬとおにぎりを頬張る。
  • 腹が減っては戦ができぬ。夜食を食べてから宿題に取り組む。
  • 試合の直前、腹が減っては戦ができぬとバナナを口にする。

注意点

「腹が減っては戦ができぬ」は日常的に広く親しまれている言葉ですが、目上の人に対して使う場合には注意が必要です。
相手が多忙で食事を抜いている際などに「腹が減っては戦ができぬですよ」と声をかけるのは、文脈によっては「子供扱いしている」あるいは「不謹慎」と受け取られるリスクがあります。
上司や目上の方には「お体のためにも、まずは何か召し上がってはいかがでしょうか」といった丁寧な表現に留めるのが無難です。

スポンサーリンク

類義語・関連語

「腹が減っては戦ができぬ」と似た意味を持つ言葉には、以下のようなものがあります。

  • 民は食を以て天と為す(たみはしょくをもっててんとなす):
    民にとっては食べることが何より大切だということ。『史記』に見える「王者は民を以て天と為し、民は食を以て天と為す」から。

対義語

「腹が減っては戦ができぬ」とは対照的な状況を示す言葉には、以下のようなものがあります。

  • 武士は食わねど高楊枝(ぶしはくわねどたかようじ):
    武士は貧しくて食事ができなくても、食べたふりをして優雅に楊枝を使う。
    空腹などの個人的な苦しみを表に出さず、気位を高く保つこと。実利よりも面目や精神を重んじる姿勢。

英語表現

「腹が減っては戦ができぬ」を英語で表現する場合、以下の定型句がよく使われます。

An army marches on its stomach

ナポレオンの言葉として知られていますが、本人の記録には見当たりません。
もっとも古い確かな例は、トマス・カーライルが1858年から刊行した『フリードリヒ大王伝』で、フリードリヒ2世の言葉として紹介した「軍隊は蛇のように腹で進む(an Army, like a serpent, goes upon its belly)」という形です。
「軍隊は胃袋(食料)を頼りに前進する」という意味で、組織や個人が機能するための基盤は食料であることを示しています。

We need to arrange lunch for the team. An army marches on its stomach, after all.
(チームのために昼食を手配しよう。なんといっても、腹が減っては戦ができぬだからね。)

忍者の兵糧丸はニッキ味の砂糖菓子

布の上に置かれた琥珀色の丸い兵糧丸5つと、脇に添えた桂皮と薬用人参の絵

伊賀や甲賀の忍術の伝書には、兵糧丸ひょうろうがん・飢渇丸きかつがん・水渇丸すいかつがんという携帯食の作り方が残っています。
三重大学の久松眞名誉教授らが、これを史料に沿って再現しています。
兵糧丸は氷砂糖に薬用の人参や桂心けいしん(ニッキ)などの生薬を加えて煮詰めた砂糖菓子でした。
飢渇丸はでん粉に生薬を合わせた団子、水渇丸は梅干しの果肉に砂糖と生薬を練り込んだ、のどの渇きを抑える丸薬でした。

再現した丸は一つ20〜30グラムほどで、熱量は50〜150キロカロリーでした。
そこから久松名誉教授は、兵糧丸や飢渇丸は一度に食べる弁当ではなく、緊張の続く任務の合間に少しずつ口に入れる食べ物だったと見ています。

スポンサーリンク

コメント

URLをコピーしました