古くから「山の神」として恐れ敬われ、凄まじい突進力を持つ「猪」。
干支の亥は、日本では勇猛な猪を指しますが、発祥地の中国などでは家畜の豚を象徴する動物です。
本記事では、猪の力強さを表す言葉から、豚にまつわる身近な教訓、さらには文化的な背景まで、「猪・豚」に関する多彩な表現を一覧で紹介します。
もくじ
勢いや性質を表す言葉
- 猪突猛進(ちょとつもうしん):
周囲を顧みず、目標に向かって猛烈な勢いで突き進む様子。前漢の時代、王莽が組織した「猪突豨勇」という軍隊の名に由来するとされる。 - 猪武者(いのししむしゃ):
勇気はあるが思慮に欠け、がむしゃらに突き進むだけの人。前後を顧みず一直線に走る猪の習性を、向こう見ずな武士に重ねた呼び方である。 - 手負いの猪(ておいのいのしし):
猟師に撃たれるなどして手負いになった猪は凶暴化し、死に物狂いで襲いかかってくる。追い詰められた者の必死の反撃を指す言葉としても使われる。
価値や戒めを表す言葉
- 豚に真珠(ぶたにしんじゅ):
価値の分からない者に貴重なものを与えても、全く無駄であるたとえ。新約聖書のマタイ伝で、聖なるものを豚の前に置くなと戒めた一節に由来する。 - 豚もおだてりゃ木に登る:
能力のない者でも、おだてられれば普段できないことさえやってのける。福島県会津地方の言い回しが、アニメ「ヤッターマン」を通じて全国に広まったとされる。 - 遼東の豕(りょうとうのいのこ):
ありふれたものを自分だけ珍しいと思い込み、自慢する独りよがり。遼東で生まれた白頭の豚を珍重し都へ献上に向かったが、他の土地ではありふれていて恥をかいたという故事にちなむ。
文化や風習に関する言葉
- 猪鹿蝶(いのしかちょう):
花札の役の一つで、物事がトントン拍子に運ぶ幸運な状態。萩に猪、紅葉に鹿、牡丹に蝶という三枚の絵札の組み合わせから生まれた呼び名である。 - 山鯨(やまくじら):
獣肉食が禁じられていた江戸時代、猪の肉を魚扱いの鯨に見立てて呼んだ隠語。当時の店はこの名を看板に掲げ、大っぴらに獣肉を提供していたという。 - 猪口(おちょこ):
酒を飲むための小さな器。形が猪の口先に似ているという説のほか、「ちょっとしたもの」を意味する言葉への当て字とする説もある。
学びや欲望を表す四字熟語
- 一竜一猪(いちりゅういっちょ):
努力して学ぶ者と怠ける者の間には、竜と豚ほどの大きな差ができる教え。唐の詩人・韓愈が子への教訓として詠んだ詩「符読書城南」の一節に由来する。 - 封豕長蛇(ほうしちょうだ):
大きな猪は何でも食い尽くす貪欲さを、長い蛇は獲物を丸呑みにする残酷さを表す。中国の史書「春秋左氏伝」に見える、侵略者を非難する言葉である。
英語圏における豚の表現
- Cast pearls before swine:
価値の分からない者に貴重なものを与える無駄を表す、聖書由来の表現。 - When pigs fly:
豚が空を飛ぶ時、つまり「絶対にあり得ないこと」を指す皮肉な慣用句。 - Buy a pig in a poke:
中身をよく確かめずに、衝動的に商品を買うことを戒める言葉。
日本はイノシシ、世界はブタが「亥」である理由
十二支の「亥」は、他の漢字文化圏では一般的に「豚」を指しますが、日本だけが「猪」に置き換わっています。
これは伝来当時の日本で家畜としての豚が普及しておらず、野生の猪の方が身近で神聖な存在だったためとされています。
中国では豚が富の象徴とされる一方で、日本では猪が勇猛さの象徴とされるなど、同じ干支でも文化によって異なる願いが込められています。
過去・未来の亥年年表
| 西暦 | 和暦 | 干支(十干十二支) |
|---|---|---|
| 1947年 | 昭和22年 | 丁亥(ひのとのい) |
| 1959年 | 昭和34年 | 己亥(つちのとのい) |
| 1971年 | 昭和46年 | 辛亥(かのとのい) |
| 1983年 | 昭和58年 | 癸亥(みずのとのい) |
| 1995年 | 平成7年 | 乙亥(きのとのい) |
| 2007年 | 平成19年 | 丁亥(ひのとのい) |
| 2019年 | 平成31年/令和元年 | 己亥(つちのとのい) |
| 2031年 | 令和13年(予定) | 辛亥(かのとのい) |
| 2043年 | 令和25年(予定) | 癸亥(みずのとのい) |
| 2055年 | 令和37年(予定) | 乙亥(きのとのい) |
| 2067年 | 令和49年(予定) | 丁亥(ひのとのい) |
| 2079年 | 令和61年(予定) | 己亥(つちのとのい) |
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