酉(とり)は古来、夜明けを告げる神聖な動物として尊ばれてきました。
日本語には、空を飛ぶ鳥の習性を人間社会の教訓になぞらえた表現や、鋭い観察眼から生まれた言葉が数多く存在します。
商売繁盛や飛躍を象徴する「酉」にまつわる多彩な言葉を、意味や由来とともに紹介します。
もくじ
成功や能力を表す言葉
- 飛ぶ鳥を落とす勢い(とぶとりをおとすいきおい):
権勢が極めて盛んで、空を飛ぶ鳥さえ圧倒されて落ちるという、並ぶ者のない勢いの様子。平家物語の記述に由来するとの説がある。 - 能ある鷹は爪を隠す(のうあるたかはつめをかくす):
実力者ほど、普段は鋭い爪を隠している鷹のように、才能をひけらかさないという教え。戦国武将・北条氏直の言葉が由来とされる。 - 一石二鳥(いっせきにちょう):
一つの行動によって、同時に二つの利益を得られること。石を一つ投げて二羽の鳥を仕留める様子を表した英語のことわざの訳語とされる。 - 鶏口となるも牛後となるなかれ(けいこうとなるもぎゅうごとなるなかれ):
大きな組織の末端にいるより、小さな組織でも長になるべきだという教え。中国の弁論家・蘇秦が、同盟を渋る韓の王を説得した言葉が起源。 - 鶴の一声(つるのひとこえ):
多くの人の議論をたちまち沈め、方針を一気に決めさせる有力者の一言。「雀の千声」と対比される、鶴の甲高く響く鳴き声にちなむ。
引き際や戒めを表す言葉
- 立つ鳥跡を濁さず(たつとりあとをにごさず):
立ち去る者は、後が見苦しくないよう始末すべきだという戒め。水辺を飛び立つ鳥の後に水が澄んだままである情景から生まれた。 - 雉も鳴かずば撃たれまい(きじもなかずばうたれまい):
余計な発言をしなければ、自ら災いを招かずに済むという戒め。橋の人柱に選ばれてしまった夫婦の悲しい民話が由来とされる。 - 鵜の真似をする烏(うのまねをするからす):
自分の能力を顧みず、安易に他人の真似をして失敗すること。潜水が得意な鵜のまねをした烏が、水に溺れる姿にたとえた言葉。 - 閑古鳥が鳴く(かんこどりがなく):
客が来ず商売がまるで流行らない、ひっそりとした寂しい様子。閑古鳥はカッコウの別名で、その物寂しい鳴き声から生まれた。 - 鳥なき里の蝙蝠(とりなきさとのこうもり):
優れた者がいない場所で、つまらない者ばかりが幅をきかせる様子。昼に活動する鳥がいない隙を狙って飛ぶコウモリの姿にたとえた表現。 - 鶏は三歩歩けば忘れる(にわとりはさんぽあるけばわすれる):
鶏は数歩歩くとすぐに前のことを忘れてしまうと俗に言われ、記憶力が極めて悪いことをたとえた言い回し。
酉にまつわる四字熟語
- 花鳥風月(かちょうふうげつ):
自然の美しい景色や、それらを愛でながら風流を楽しむ心。能楽師・世阿弥の著書「風姿花伝」に由来するという説が広く知られる。 - 比翼連理(ひよくれんり):
男女の情愛が極めて深く、仲睦まじく寄り添う様子のたとえ。白居易の詩「長恨歌」に描かれた玄宗皇帝と楊貴妃の一節にちなむ。 - 鳥窮則啄(とりきゅうすればすなわちついばむ):
窮地に追い込まれると、鳥でさえ思いがけない行動に出るという意味。転じて、追い詰められた者の必死の反撃をたとえる故事成語。
英語圏における鳥の表現
- The early bird catches the worm:
早起きや素早い行動によって、利益や好機が得られるという教訓。 - Birds of a feather flock together:
性格や好みが似ている者同士は、自然と集まるというたとえ。 - Don’t count your chickens before they hatch:
不確かな利益をあてにして、先走った計画を立てることへの戒め。
「酉」の字が表すのは鳥ではなく酒壺だった
干支の「酉」という漢字は、もともと鳥ではなく「酒壺(さかつぼ)」を描いた象形文字に由来しています。
収穫された作物が発酵し、酒が熟成する秋の時期を表す言葉でした。
後に、暦を覚えやすくするために身近な「鶏(とり)」が割り当てられ、現在の干支の表記へとつながっています。
過去・未来の酉年年表
| 西暦 | 和暦 | 干支(十干十二支) |
|---|---|---|
| 1945年 | 昭和20年 | 乙酉(きのととり) |
| 1957年 | 昭和32年 | 丁酉(ひのとのとり) |
| 1969年 | 昭和44年 | 己酉(つちのととり) |
| 1981年 | 昭和56年 | 辛酉(かのととり) |
| 1993年 | 平成5年 | 癸酉(みずのととり) |
| 2005年 | 平成17年 | 乙酉(きのととり) |
| 2017年 | 平成29年 | 丁酉(ひのとのとり) |
| 2029年 | 令和11年 | 己酉(つちのととり) |
| 2041年 | 令和23年 | 辛酉(かのととり) |
| 2053年 | 令和35年 | 癸酉(みずのととり) |
| 2065年 | 令和47年 | 乙酉(きのととり) |
| 2077年 | 令和59年 | 丁酉(ひのとのとり) |
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