意味
「雉も鳴かずば撃たれまい(きじもなかずばうたれまい)」とは、余計な一言を口にしたばかりに、自分から災いを招くことのたとえです。
不用意な発言を戒める言葉として使われます。
語源・由来
この言葉は、長柄橋などの人柱伝説とともに伝わる古歌の下の句「鳴かずば雉も射られざらまし」が、ことわざになったものです。
キジのオスは、縄張りを主張したりメスを呼んだりする際、「ケーン、ケーン」と非常に甲高い声で鳴き、羽を激しく羽ばたかせる「母衣打ち」という行動をとります。
この目立つ声と羽音が、猟師に居場所を知らせてしまいます。
古歌は、鳴いたために射落とされたキジを、余計な一言で人柱にされた父に重ねています。

(動画の一コマ:coniferconifer、Wikimedia Commons/CC BY 2.0、一部を切り出し)
使い方・例文
「雉も鳴かずば撃たれまい」という言葉は、余計な発言によって自らトラブルを招いてしまった人に対する批判や同情、または自分自身への後悔の念を込めて使われます。
- 会議で「段取りが悪い」と口を挟んだら、その段取りを丸ごと任された。雉も鳴かずば撃たれまいだ。
- 内緒話を他人に漏らして信用を失うとは、まさに雉も鳴かずば撃たれまいだ。
- ここで一言多いと幹事を押しつけられる。雉も鳴かずば撃たれまいで、黙っておこう。
誤用・注意点
この言葉が戒めているのは、言わなくてもよいことを言って災いを招くことです。
言うべきことまで黙っている理由として持ち出すと、本来の意味から外れます。
類義語・関連語
「雉も鳴かずば撃たれまい」と似た意味を持つ言葉には、以下のようなものがあります。
- 言わぬが花(いわぬがはな):
口に出してすべてを語るよりも、黙っている方が情緒があり、差し障りもないということ。 - 口は禍の門(くちはわざわいのかど):
不用意な発言は、災難を招く入り口になるということ。 - 沈黙は金、雄弁は銀(ちんもくはきん、ゆうべんはぎん):
雄弁に語ることも立派だが、沈黙を守ることはさらに価値があるということ。
対義語
「雉も鳴かずば撃たれまい」とは対照的な意味を持つ言葉は以下の通りです。
- 言わぬことは聞こえぬ(いわぬことはきこえぬ):
言葉にしてはっきりと相手に伝えない限り、自分の気持ちや考えは理解してもらえないということ。
英語表現
「雉も鳴かずば撃たれまい」を英語で表現する場合、以下の定型句がよく使われます。
A closed mouth catches no flies
意味:口を閉じていればハエは飛び込んでこない。
余計なことを言わなければ災難は避けられるという意味。
I decided to keep quiet, because a closed mouth catches no flies.
(雉も鳴かずば撃たれまいと言うように、私は黙っていることにした。)
「雉も鳴かずば」の元は長柄橋の人柱伝説
大阪市の淀川に架かる長柄橋には、悲しい人柱伝説があります。
長柄橋の架橋工事が難航していたある時、垂水の長者・巌氏が「袴に継ぎ目のある者を人柱にすればよい」と提案した結果、提案者である自分自身がそれに該当してしまい、人柱として川に沈められてしまった、という言い伝えが残っています。
のちに、父の死から口をきかなくなった巌氏の娘は、無口を理由に夫の元から実家へ送り返されることになりました。
夫に付き添われて帰路をたどる途中、夫が一羽のキジを射落としたのを目撃し、「もの言わじ 父は長柄の橋柱 鳴かずば雉も 射られざらまし(もう何も言うまい。父は一言のせいで人柱になった。キジも鳴かなければ射られなかったろうに)」と詠みました。
娘が口をきいたのを喜んだ夫は、引き返して共に暮らしたと伝えられます。
長柄橋の人柱がいつの時代の出来事とされるかは資料によって異なり、推古天皇21年(613年)の架橋時とする説と、嵯峨天皇の弘仁3年(812年)の架け替え時とする説があります。
この人柱の話は南北朝時代にはすでに東国まで知られており、当時の説話集『神道集』では、娘ではなく、幼い子を背負った妻が「ものいへば父はながらの橋柱 なかずば雉もとられざらまし」と詠んで淀川に身を投げる筋になっています。











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