ことわざ 慣用句

人の口に戸は立てられぬ

(ひとのくちはとはたてられぬ)

世間の噂話は防ごうとしても防ぎきれないということ。

異形:人の口に戸が立てられない

13文字の言葉ひ・び・ぴ」から始まる言葉
人の口に戸は立てられぬ ことば
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意味

「人の口に戸は立てられぬ」とは、どんなに隠そうとしても、他人が話す噂までは止められないという意味です。

家の入り口には戸を立てて人目を遮ることができますが、人間の口には物理的な戸を立てて封じることはできません。
一度漏れた言葉は次々と他人の口へ伝わり、瞬く間に広がってしまうという世の常(つね)を言い表しています。

語源・由来

「人の口に戸は立てられぬ」の由来は、物理的な「戸(扉)」と、形のない「口」を対比させた比喩表現にあります。

家の中を隠したいときには戸を閉めれば済みますが、他人の口は自分の意志で閉ざさせることは不可能です。

使い方・例文

「人の口に戸は立てられぬ」は、秘密が漏れてしまったことを嘆く場面や、情報の拡散力の強さを指摘する際に使われます。

誰かを直接攻撃するのではなく、「噂とはそういうものだ」という諦めや客観的な視点を持って語られることが多い表現です。

例文

  • 隠しておきたい失敗だったが、人の口に戸は立てられぬで翌日には噂だった。
  • 人の口に戸は立てられぬ、不用意な発言に気をつけなさい」と注意された。
  • 社内恋愛は秘密のつもりだったが、人の口に戸は立てられぬで周知の事実だ。

類義語・関連語

「人の口に戸は立てられぬ」と似た意味を持つ言葉には、以下のようなものがあります。

  • 世間の口には戸は立てられぬ(せけんのくちにはとはたてられぬ):
    世間の人々が勝手に噂をするのを止める方法はないということ。
  • 壁に耳あり障子に目あり(かべにみみありしょうじめあり):
    密談をしていても、どこで誰が聞いているかわからないという戒め。
  • 悪事千里を走る(あくじせんりをはしる):
    悪い行いや評判は、あっという間に遠くまで知れ渡ってしまうということ。

対義語

「人の口に戸は立てられぬ」とは対照的な意味を持つ言葉は、明確な定型句としては存在しません。

噂を防げるという内容の慣用句はありませんが、情報を漏らさないための心得として以下の言葉が挙げられます。

  • 言わぬが花(いわぬがはな):
    口に出さないほうが、差し障りもなく趣(おもむき)があるということ。
  • 口は災いの元(くちはわざわいのもと):
    うかつな発言は自分自身に災いを招くため、慎むべきだという戒め。

英語表現

「人の口に戸は立てられぬ」を英語で表現する場合、以下の定型表現が用いられます。

People will talk

直訳は「人々は噂をするものだ」で、どんなに隠そうとしても世間の人々はあれこれと話し始めるものだ、というニュアンスで使われる最も一般的な表現。

No lock can hold a tongue

直訳は「どんな鍵も、舌(言葉)を留めることはできない」で、日本語の「戸」を「lock(鍵)」に置き換えた、より比喩的な表現。

浄瑠璃の一場面にもう使われていた言葉

「人の口に戸は立てられぬ」という言い回しは、近代になって生まれたものではなく、浄瑠璃の演目「最明寺殿百人上臈」の中にすでに使われていたとされています。

浄瑠璃は三味線の伴奏に合わせて物語を語る芸能で、江戸時代に庶民の娯楽として広まりました。
「最明寺殿百人上臈」もそうした演目の一つで、家の戸を閉てても人の口までは閉じられないという言い回しが、すでに台詞として使われていたことになります。

「最明寺殿百人上臈」は、100以上の浄瑠璃作品を残した近松門左衛門の手によるものとされています。
江戸を代表する劇作家の台詞にこの言い回しが使われていたことは、当時すでに広く通じる比喩だったことをうかがわせます。

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