意味
「悪事千里を走る(あくじせんりをはしる)」とは、どんなに隠そうとしても、悪い行いや悪い評判はたちまち遠くまで知れ渡るという意味です。
「千里」は非常に遠い距離のたとえです。
語源・由来
「悪事千里を走る」は、中国の五代から宋にかけて孫光憲が編んだ随筆『北夢瑣言』の巻六にある、次の一節が由来です。
所謂好事不出門,惡事行千里,士君子得不戒之乎?
(いわゆる「好事門を出でず、悪事千里を行く」である。立派な人は、これを戒めとせずにいられようか。)
本来は「好事門を出でず、悪事千里を行く」(こうじもんをいでず、あくじせんりをいく)という対句で記されていました。
「良い行いは門の外(近所)にさえ伝わらないが、悪い行いは千里先まで届く」という人間の心理や社会の性質を対比させたものです。
孫光憲がこの言葉を引いたのは、五代の後晋で宰相となった和凝の話です。
和凝は若いころ艶っぽい小唄を作るのが得意で、宰相になってからは人に頼んで小唄を集めて焼き捨てさせました。
しかし評判はすでに広まっており、契丹が都に攻め入ったときには「曲子相公(小唄の宰相)」と呼ばれていました。
使い方・例文
「悪事千里を走る」は、自分の失態が露呈したときや、他人のスキャンダルが広まる速さに驚いたときなど、日常のさまざまな場面で使われます。
例文
- 不適切なSNS投稿が一晩で全国に拡散され、まさに悪事千里を走るの結果となった。
- 秘密のカンニングが翌日には学級会で問題になり、悪事千里を走るを知った。
- 不用意な発言が近所中の噂になり、悪事千里を走るとはこのことだと痛感した。
誤用・注意点
「悪事千里を走る」を、単に「足が速いこと」や「遠くまで旅をすること」という意味で使うのは誤りです。
あくまで「悪い噂や行い」が広まるスピードに焦点を当てた言葉であり、ポジティブな意味での拡散(良い評判が広まるなど)には使いません。
また、目上の人の失態に対してこの言葉を使うと、揶揄しているような印象を与えるため、使用する相手や場面には注意が必要です。
類義語・関連語
「悪事千里を走る」と似た意味を持つ言葉には、以下のようなものがあります。
- 好事門を出でず悪事千里を行く(こうじもんをいでずあくじせんりをいく):
良い行いは知られないが、悪い行いはすぐに広まるということ。 - 壁に耳あり障子に目あり(かべにみみありしょうじにめあり):
秘密は漏れやすいので、言動を慎むべきだという警告。 - 隠すより現る(かくすよりあらわる):
隠そうとすればするほど、かえって世間に知れ渡ってしまうということ。
対義語
「悪事千里を走る」とは対照的な意味を持つ言葉には、以下のようなものがあります。
- 好事門を出でず(こうじもんをいでず):
良い行いはなかなか世間に知られないということ。
英語表現
「悪事千里を走る」を英語で表現する場合、以下の定型句がよく使われます。
Bad news travels fast
「悪い知らせは速く伝わる」
最も一般的で、日本語のニュアンスに非常に近い表現です。
I heard about the scandal already. Bad news travels fast, doesn’t it?
(あのスキャンダルならもう聞いたよ。悪いニュースは広まるのが早いね。)
Ill news comes apace
「悪いニュースは速やかにやってくる」
やや古風な言い回しですが、災いなどがすぐに伝わることを意味します。
Ill news comes apace; everyone in the village knows about the accident.
(悪い知らせはすぐに広まるもので、村の誰もがその事故を知っている。)















コメント