意味
「人の噂も七十五日(ひとのうわさもしちじゅうごにち)」とは、世間の噂話はやがて忘れ去られるという意味です。
どれほど激しく非難されたり、あるいは熱狂的に称賛されたりした話題であっても、およそ二か月半も経過すれば人々の関心は別の対象へと移り、噂は自然と消えていく、ということです。
主に、悪い噂に悩む人を「時が解決してくれる」と励ます際や、世間の無責任さを皮肉る際に使われます。
語源・由来
「人の噂も七十五日」の「七十五日」は、昔の暦の区切りにもとづくという説があります。
昔は十五日を一節気(= 一年を二十四に分けた季節の区切り)とし、節気が五回めぐる七十五日で気候がすっかり変わることから、七十五日を一つの物事が終わるまでの長さとした、という説明です。
ただし、七十五日という数に特別な根拠は無く、ことわざでよく使われる区切りの長さだとする見方もあり、「初物七十五日」(初物を食べると寿命が七十五日延びる)にも同じ数が出てきます。
江戸時代の初めには「世の取り沙汰も七十五日」(= 世間のうわさも七十五日)という形でも言われていました。
江戸中期以降は、今の「人の噂も七十五日」の形がほとんどになります。
使い方・例文
噂の渦中にいる人への助言や、ブームの短さを評する場面で使われます。
「四十五日」「四十九日」と言い誤りやすい語ですが、正しくは「七十五日」です。
例文
- 悪い噂に落ち込む後輩を「人の噂も七十五日、じきにみんな忘れるよ」と励ました。
- 騒動が収まり、人の噂も七十五日とばかりに表舞台へ復帰した。
- あんなに行列ができていたのに、人の噂も七十五日でもう閑古鳥が鳴いている。
類義語・関連語
「人の噂も七十五日」と似た意味を持つ言葉には、以下のようなものがあります。
- 世の取り沙汰も七十五日(よのとりざたもしちじゅうごにち):
世間のうわさや評判も、七十五日ほどで消えるということ。 - 去る者は日々に疎し(さるものはひびにうとし):
親しかった人でも、離れて日が経つと次第に記憶が薄れ、忘れられていくこと。 - 喉元過ぎれば熱さを忘れる(のどもとすぎればあつさをわすれる):
苦しいことも過ぎてしまえば、その苦しみや恩義を簡単に忘れてしまうこと。
対義語
「人の噂も七十五日」とは対照的に、不名誉や記憶が長く残ることを指す言葉です。
- 末代までの恥(まつだいまでのはじ):
死んだ後や子孫の代まで語り継がれるような、決して消えることのない不名誉。
英語表現
「人の噂も七十五日」を英語で表現する場合、関心の短さを強調するフレーズを用います。
A nine days’ wonder
「九日間の驚き」
英語圏での定番表現です。
日本語の「七十五日」よりも期間が短く設定されていますが、人々の関心がいかに一時的で移ろいやすいかというニュアンスを的確に表しています。
The scandal was all over the news, but it turned out to be just a nine days’ wonder.
(あのスキャンダルは連日ニュースになったが、結局は一時的な騒ぎに過ぎなかった。)
噂の寿命、英語では九日・韓国では三か月
噂が消えるまでの長さを日数で言うことわざは、日本の外にもあります。
英語には「A wonder lasts but nine days(驚きは九日しか続かない)」という古いことわざがあり、14世紀のイギリスの詩人チョーサーも、物語詩『トロイルスとクリセイデ』でほぼ同じ言い回しを使っています。
英語表現の「A nine days’ wonder」は、ここから生まれた言い方です。
韓国には「남의 말도 석 달(ナメ マルド ソク タル、他人の噂も三か月)」ということわざがあり、こちらは日本の七十五日に近い長さです。
もっとも英語のほうは「噂」ではなく「驚き」、つまり珍しい出来事への熱が冷める早さを言うことわざです。
悪口や評判の消え方を言う日本や韓国のものとは、向きが少し違います。










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