鋭い牙と爪、黄金色の毛並みを持つ虎は、古くから権威や畏怖の対象でありながら、我が子を深く愛する象徴ともされてきました。
十二支の「寅」にも数えられるこの動物には、リスクを恐れない勇気と慎重さを説く言葉が多く存在します。
本記事では、そんな「虎」にまつわることわざや四字熟語、慣用句を分類して紹介します。
もくじ
虎の圧倒的な強さや勢いを表す言葉
- 虎穴に入らずんば虎子を得ず(こけつにいらずんばこじをえず):
漢の武将・班超が、劣勢の中で夜襲を決断する際に部下を鼓舞した言葉が由来。
大きな危険を冒さなければ、大きな成果は得られないという教え。 - 虎視眈々(こしたんたん):
出典は易経で、虎が鋭い眼光で獲物を狙う姿になぞらえ、機を逃さずじっと待ち構える野心的な姿勢を表す四字熟語として使われる。 - 騎虎の勢い(きこのいきおい):
隋の独孤皇后が夫に「虎に乗ったら途中で下りられない」と決起を促した故事に由来。
物事の勢いが凄まじく、途中でやめられない状態を指す。 - 竜虎相打つ(りゅうこあいうつ):
竜と虎は古来、強さの双璧とされた存在。
実力が伯仲する英雄や強豪同士が、優劣つけ難い激しい戦いを繰り広げる場面のたとえ。 - 虎は千里往って千里還る(とらはせんりいってせんりかえる):
虎は一日に千里先まで行き、また千里を戻ってくるとされることから生まれた表現。
勢いが盛んなことのたとえ。
危険や権威との関わりを表す言葉
- 虎の威を借る狐(とらのいをかるきつね):
他人の権勢に頼って威張る小人物のたとえ。
虎に捕らえられた狐が、自分は天帝の使いだと言って虎を後ろに従えて歩き、獣たちが逃げるのを見せて虎をだましたという『戦国策』の寓話から。 - 虎の尾を踏む(とらのおをふむ):
凶暴な虎の尾を踏むように、きわめて危険なことをするたとえ。
『易経』に出てくる言葉から。 - 前門の虎、後門の狼(ぜんもんのとら、こうもんのおおかみ):
表門で虎を防いでも裏門から狼が入り込むように、一つの災いを逃れても別の災いにあうたとえ。
明の趙弼が『評史』にことわざとして引いた言葉。 - 暴虎馮河(ぼうこひょうが):
出典は『論語』。
素手で虎に挑み、歩いて大河を渡ろうとする者とは行動を共にしないという孔子の言葉に由来し、無謀な蛮勇を戒める。 - 苛政は虎よりも猛なり(かせいはとらよりももうなり):
民を苦しめる過酷な政治は、人を食う虎よりも恐ろしいということ。
舅・夫・子を虎に殺されても、過酷な政治が無いからこの地を離れないと語る婦人の話を聞き、孔子が弟子に「心に留めておけ」と説いた言葉で、『礼記』に出てくる。
日常生活に溶け込んだ虎の比喩
- 虎は死して皮を留め、人は死して名を残す(とらはししてかわをとどめ、ひとはししてなをのこす):
虎が死後に美しい皮を残すように、人は死後に名声を残すよう心がけるべきだという教え。
五代の武将・王彦章が常々口にしていたことわざ「豹は死して皮を留め、人は死して名を留む」(『新五代史』)がもとで、豹が虎に替わった形で広まった。 - 虎の子(とらのこ):
大切にして手放さないもの、特に秘蔵の金品。
虎がその子を非常にかわいがり、大事に守り育てることから。 - 虎の巻(とらのまき):
兵法や芸道の秘伝を記した書。転じて、講義の種本や、教科書の問題の答えが載った参考書。
中国の兵法書『六韜』の「虎韜」の巻による語。 - 張り子の虎(はりこのとら):
紙を張り重ねて作る民芸品「張り子」の虎人形が由来。
首を振る仕掛けから頷くだけの人、中が空洞な作りから虚勢だけで実力が伴わない人を指す。 - 三人成虎(さんにんせいこ):
根拠の無いうわさでも、大勢が言えば本当のことにされてしまうたとえ。
町中に虎が出たという嘘でも、三人が同じことを言えば王も信じてしまうという『戦国策』の話から。 - 大虎(おおとら):
ひどく酒に酔った人。
「ささ(酒)に酔う」という謎から出たとも、首を振る張り子の虎に似ているからとも言われる。
英語圏における虎の表現
- Paper tiger:
脅威に見えるが、実は張り子の虎のように無力である国や組織のこと。 - Eye of the tiger:
獲物を狙う虎のように、目標に向かう不屈の闘志や強い意志を持っている状態。 - Ride a tiger:
一度始めたら途中でやめられない、騎虎の勢いと同じ危険な状況。
鬼門の「丑寅」にちなむとされる、鬼の牛の角と虎の皮

私たちが思い描く鬼の姿は、陰陽道の「鬼門」の考え方と結び付けて説明されます。
鬼が出入りするとされる不吉な方角「鬼門」は、十二支でいう「丑(うし)」と「寅(とら)」の間、北東に位置します。
そのため、鬼は牛の角を持ち、虎の皮で作られた衣服を身につけた姿としてイメージされるようになりました。
寅年は何年?西暦と和暦の早見表
| 年 | 干支(十干十二支) |
|---|---|
| 1950年(昭和25年) | 庚寅(かのえとら) |
| 1962年(昭和37年) | 壬寅(みずのえとら) |
| 1974年(昭和49年) | 甲寅(きのえとら) |
| 1986年(昭和61年) | 丙寅(ひのえとら) |
| 1998年(平成10年) | 戊寅(つちのえとら) |
| 2010年(平成22年) | 庚寅(かのえとら) |
| 2022年(令和4年) | 壬寅(みずのえとら) |
| 2034年(令和16年(予定)) | 甲寅(きのえとら) |
| 2046年(令和28年(予定)) | 丙寅(ひのえとら) |
| 2058年(令和40年(予定)) | 戊寅(つちのえとら) |
| 2070年(令和52年(予定)) | 庚寅(かのえとら) |
| 2082年(令和64年(予定)) | 壬寅(みずのえとら) |
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