ことわざ 故事成語

前門の虎、後門の狼

(ぜんもんのとらこうもんのおおかみ)

一つの災難を逃れても、すぐに別の災難が来ること。


16文字の言葉 / 「せ・ぜ」から始まる言葉
前門の虎、後門の狼 ことば
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意味

「前門の虎、後門の狼(ぜんもんのとらこうもんのおおかみ)」とは、表門で虎を防いだと思えば裏門から狼が入り込んでくるように、一難を切り抜けてもすぐさま次の災難に見舞われるという意味です。

前の門で恐ろしい虎を防いでいる間に、後ろの門から今度は獰猛な狼が入り込んでくるという、一つの災いを防いでも別の災いにあう状況をたとえた言葉です。

語源・由来

「前門の虎、後門の狼」は、中国の趙弼ちょうひつが著した『評史』という書物に、ことわざとして引かれている言葉がもとになっています。

趙弼は、後漢の時代に宦官かんがん(= 皇帝の私的な側近)たちが、権力を振るっていた皇后の一族を追い払った事件について、「諺に曰く、前門に虎を拒ふせぎ、後門に狼を進む」と評しています。
表門で虎を防いでいる間に、裏門から狼が入ってくるという意味で、一つの害を除いても別の害にあうことのたとえです。

日本では、元の形に近い「前門に虎を防ぎ、後門に狼を進む」とも言います。

使い方・例文

「前門の虎、後門の狼」は、家庭、学校、仕事などで、一つの災難や困難を防いだり逃れたりしても、また別の災難や困難に見舞われる場面で使われます。

  • 借金完済の直後に重い病が見つかり、まさに前門の虎、後門の狼だ。
  • 受験前日にようやく熱が下がったのに、当日は大雪で電車が止まり、前門の虎、後門の狼の事態となった。
  • 主要取引先を失った穴をようやく新規の受注で埋めた矢先に増税が決まり、経営は前門の虎、後門の狼の窮地にある。
  • 怪我が治ってようやく復帰した矢先に、今度はチームの解散が決まり、前門の虎、後門の狼だと彼は嘆いた。

誤用・注意点

使うときは、次の2点に注意します。

  • 「泣きっ面に蜂」との違い:
    「泣きっ面に蜂」は、不運の上にさらに悪いことが重なることです。
    「前門の虎、後門の狼」は、一つの災いを防いだり逃れたりしたところへ別の災いが来ることを言います。
    切り抜けた場面がなく、悪いことが重なっただけなら「泣きっ面に蜂」のほうが合います。
  • 「後門」の読み方:
    「こうもん」と読みますが、音だけで捉えると別の意味に聞こえる場合があるため、文章で使うのが一般的であり、会話では文脈に配慮が必要です。
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類義語・関連語

「前門の虎、後門の狼」と似た意味を持つ言葉には、以下のようなものがあります。

  • 一難去ってまた一難(いちなんさってまたいちなん):
    一つの災難が過ぎたと思ったら、すぐにまた別の災難が来ること。
  • 泣きっ面に蜂(なきっつらにはち):
    不運なことが起きているときに、さらに別の不運が重なること。
  • 進退維谷(しんたいいこく):
    前にも後ろにも進めず、どうにもならない状況に陥ること。
  • 八方塞がり(はっぽうふさがり):
    どの方向を向いても状況を打破する手段がなく、行き詰まっていること。
  • 四面楚歌(しめんそか):
    周りがすべて敵であり、助けてくれる者が誰もいない孤立無援の状態。
  • 内憂外患(ないゆうがいかん):
    組織の内側にも外側にも、解決すべき問題や心配事が山積みであること。
  • 前虎後狼(ぜんここうろう):
    このことわざを漢字四字にまとめた四字熟語。

対義語

「前門の虎、後門の狼」とは対照的な意味を持つ言葉は、以下の通りです。

  • 順風満帆(じゅんぷうまんぱん):
    追い風を受けて船が進むように、物事がすべて思い通りに順調に進むこと。
  • 平穏無事(へいおんぶじ):
    何事もなく、穏やかで変わったことがない様子。
  • 安泰(あんたい):
    危ないところがなく、落ち着いていて安心できる状態。
  • 一陽来復(いちようらいふく):
    苦しい時期が終わり、ようやく良い運向きが巡ってくること。

英語表現

「前門の虎、後門の狼」を英語で表現する場合、以下のような定型句が使われます。

Out of the frying pan and into the fire

直訳は「フライパンから飛び出して火の中へ」で、一難去ってまた一難、状況がさらに悪化することを表す有名な表現。

I quit my stressful job only to find my new one is even more demanding. It’s really out of the frying pan and into the fire.
(ストレスの多い仕事を辞めたのに、新しい仕事はさらにきつかった。まさに一難去ってまた一難だ。)

原文では「拒ぐ」と「進む」が対になっている

出典の『評史』にある「前門に虎を拒ぎ、後門に狼を進む」は、前と後ろで動詞が違います。
前門では虎を「拒ぐ」、つまり防ぎ止めているのに対し、後門では狼が「進む」、つまり入り込んできています。

二つの災難が同時に襲ってくるのではなく、一方を防いでいる最中にもう一方が入ってくるという順序で書かれています。

日本語では「前門の虎、後門の狼」と名詞だけを並べる形に縮まったため、この動詞の対比は表に出なくなりました。

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