意味
「内憂外患」とは、内部に抱える心配事と外部から迫り来る脅威が同時に存在する、極めて困難な状況を意味します。
- 内憂(ないゆう):組織や国内など、内側にある悩みや心配事。
- 外患(がいかん):外部からの圧力や脅威、外からやってくる災い。
語源・由来
中国の春秋時代、紀元前575年に起きた鄢陵(えんりょう)の戦いにおいて、晋の政治家・范文子(はんぶんし)が述べた言葉が由来とされています。
范文子は楚との戦いをあえて避け、外の脅威を残すことで国内の結束を保とうと主張しました。
この考え方が『春秋左氏伝』に記録され、後世に「内憂外患」として定着しました。
なお原典には「内外無患(内外ともに問題がない)」という理想を示す表現しか登場しません。
現実は「内にも外にも問題があるものだ」ということから、後の時代に「内憂外患」へと変化していったと考えられています。
現代では国家に限らず、企業や個人が直面する複合的なトラブルにも広く用いられます。
使い方・例文
「内憂外患」は、身動きが取れないほど複数の問題に囲まれている困難な状況で使われます。
- チーム内の不和と強豪校との対戦が重なり、まさに内憂外患だ。
- その国は経済の停滞と他国との武力衝突という内憂外患を抱えている。
- 家族の病気と仕事での重大なミスが重なり、内憂外患の状況にある。
類義語・関連語
「内憂外患」と似た意味を持つ言葉には以下のようなものがあります。
- 内患外禍(ないかんがいか):
国や組織の内部にも外部にも問題があること。
「内憂外患」とほぼ同義の表現。 - 四面楚歌(しめんそか):
周囲がすべて敵ばかりで、孤立無援の苦境にあること。 - 八方塞がり(はっぽうふさがり):
どの方向にも問題があり、解決の糸口が見つからない状況。
対義語
「内憂外患」とは対照的な意味を持つ言葉は以下の通りです。
- 内平外成(ないへいがいせい):
国内がよく治まっており、外交も特に問題がなく平和な状態のこと。
元号「平成」の典拠の一つとしても知られています。 - 天下泰平(てんかたいへい):
世の中に揉め事がなく、平和に治まっている様子。 - 安泰(あんたい):
危険や心配事がなく、穏やかで安定していること。
英語表現
「内憂外患」を英語で表現する場合、以下のようになります。
troubles at home and abroad
意味:国内外のトラブル
国家や大きな組織の状況を表す際によく使われる表現です。
The country is facing troubles at home and abroad.
(その国は内憂外患に直面している。)
internal and external troubles
意味:内部と外部のトラブル
より一般的で、企業や個人の状況にも使いやすい表現です。
Our company is struggling with internal and external troubles.
(我が社は内憂外患に苦しんでいる。)
『春秋左氏伝』と『管子』、二つの出典説
「内憂外患」の出典には複数の説があります。
有力とされるのが、中国・春秋時代の晋の政治家范文子(士燮)の考えを伝える『春秋左氏伝』です。
楚との対決を避けるべきだと主張したとされる范文子は、外に敵の脅威が無くなれば今度は国内の政治にひずみが生じると説き、あえて外側の脅威を残すことで内部の結束を保とうとしたと伝えられています。
もう一つの説では、思想書『管子』の一節「内憂有らざれば、必ず外患有り」が出典とされています。
内側に憂いが無ければ、必ず外側に患いが生じるという意味です。
出典の説はいずれであれ、内側の問題と外側の問題を切り離せない関係として捉える点で共通しています。
内の問題を解消しようとすれば外の脅威への対応が手薄になり、外の脅威に対処しようとすれば内部の不満が表面化します。
この表裏の関係こそが、「内憂外患」という組み合わせの根にある発想です。










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