「八方塞がり」という言葉を聞くと、なんだか身動きが取れないような、苦しい状況を思い浮かべるかもしれません。この言葉は、まさにそのような状態を指す表現です。
この記事では、「八方塞がり」の意味やその由来、どのような時に使われるのか、そして関連する言葉について、分かりやすく解説していきます。
「八方塞がり」の意味・教訓
「八方塞がり」とは、どちらの方向、どちらの手段をとっても、障害や差し障りがあって、どうにも身動きが取れない状態を意味します。
万事に行き詰まって、手の打ちようがない状況のたとえです。
「八方」とは、東西南北と、その中間の北東・南東・南西・北西の八つの方角、つまり「あらゆる方向」を指します。「塞がり」は、道などがふさがっている状態です。
文字通り、どの方向へ進もうとしても道がふさがっていて、進めないというイメージです。
「八方塞がり」の語源 – 陰陽道から来た言葉
この言葉は、日本の古代から伝わる陰陽道に由来するとされています。
陰陽道では、暦や方位に基づいて吉凶を占います。
その中で、どの方角に向かって事を行っても不吉な結果を招くとされる年回りや、あるいは特定の日や時期がありました。このような、どの方向も「塞がって」いて良くないとされる状態を「八方塞がり」と呼んだのです。
この陰陽道における考え方が、後に一般的な意味として、物事が行き詰まってどうしようもない状態を指す比喩として使われるようになりました。
「八方塞がり」が使われる場面と例文
仕事、人間関係、経済状況など、様々な面で問題が重なり、解決策が見いだせず、どうしようもないと感じるような行き詰まった状況で使われます。
- 仕事や事業の行き詰まり:計画が頓挫し、他の方法も試したがうまくいかず、進むべき道が見えない時。
- 人間関係の悩み:周囲との関係が悪化し、誰に相談しても解決せず、孤立無援に感じる時。
- 経済的な困窮:収入が途絶え、借金も重なり、どこからも助けが得られず、どうすることもできない時。
- 複数の問題が同時に発生:いくつかの問題が同時に起こり、どの問題から手をつけても他の問題に影響し、身動きが取れない時。
例文
- 「いくつもの問題が重なって、会社は完全に八方塞がりの状態だ。」
- 「人間関係も仕事も上手くいかず、彼は八方塞がりだと嘆いていた。」
- 「頼れる人もなく、資金も底をつき、まさに八方塞がりの状況に追い込まれた。」
「八方塞がり」の類義語・関連語
行き詰まって身動きが取れない状態を示す、似たような意味を持つ言葉があります。
- 袋小路:行き止まりになっていて、通り抜けられない道。転じて、物事が行き詰まって、それ以上進めない状態。
- 進退窮まる(しんたいきわまる):進むことも退くこともできず、どうしようもない状態になること。
- 万事休す:もはや施す手段がなく、万策尽きてどうしようもない状態。諦めの境地。
- 手詰まり:将棋や囲碁で、次に打つ手がない状態。転じて、手段や方法が尽きてしまうこと。
- 行き詰まり:物事が先へ進まなくなること。
「八方塞がり」の対義語
道が開けている、物事が順調に進んでいる状況を示す言葉が対照的です。
- 順風満帆:船が追い風を受けて帆がいっぱいに膨らむように、物事が非常に順調に進むさま。
- 前途洋々(ぜんとようよう):将来が明るく、希望に満ちているさま。
- 万事順調(ばんじじゅんちょう):すべての物事が都合よく、滞りなく進んでいるさま。
「八方塞がり」の英語での類似表現
英語で「八方塞がり」の「行き詰まってどうしようもない」というニュアンスに近い表現は以下の通りです。
- be in a fix
意味:困った状況にある、窮地にある。 - be cornered
意味:追い詰められている。 - be stuck
意味:行き詰まっている、身動きが取れない。 - between a rock and a hard place
意味:岩と硬い場所の間。どちらを選んでも困難な、進退窮まった状況。 - (at a) dead end
意味:行き止まり。行き詰まりの状態。
「八方塞がり」に関する豆知識 – 陰陽道における意味
語源となった陰陽道では、「八方塞がり」の年は、物事を始めるのに良くない年とされましたが、必ずしもずっと悪いことが続くわけではありません。
八方塞がりを抜けるための方法(方位除けなど)があるとされたり、逆に「塞がっている」ということは「守られている」と捉え、現状維持や内面の充実に力を入れるべき時期と考えることもあったようです。現代でも、神社などで「八方除け」の祈願が行われています。
まとめ – 塞がっていても道は開ける?
「八方塞がり」は、陰陽道に由来し、どの方角も塞がっていて身動きが取れない、万事行き詰まった苦しい状況を表す言葉です。
人生において、時としてこのような困難な状況に直面することもあるかもしれません。しかし、語源である陰陽道には「塞がっていても道はある」という考え方も含まれていました。
たとえ八方塞がりに感じられても、視点を変えたり、時間を置いたり、あるいは天(上)や地(下)のように、思わぬところに活路が見いだせるかもしれません。
この言葉は、困難な状況を示すと同時に、諦めずに解決策を探すことの重要性をも、私たちに問いかけているのかもしれません。
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