意味
「虎の尾を踏む(とらのおをふむ)」とは、猛虎の尾をうっかり踏みつけるように、自分から進んで極めて危うい場面に足を踏み入れるという意味です。
また、並外れて恐ろしい相手に対して、うっかり手出しをしてしまい、大きな災い(しっぺ返し)を招くことのたとえとしても使われます。
語源・由来
「虎の尾を踏む」の語源は、中国最古の古典の一つである『易経』に見られます。
本来は、恐ろしい虎の尾を踏んでも人は噛みつかれず、物事がうまく運ぶという、吉を示す占いの言葉でした。
虎の尾を履む、人を咥わず、亨る
(とらのおをふむ、ひとをくらわず、とおる)
ただし、この句が出てくる履卦の中でも、六三の句には「履虎尾,咥人,凶」(虎の尾を踏んで人が咬まれ、悪い結果になる)とあり、危うさのたとえとしての使い方も中国の古典にすでに出てきます。
使い方・例文
「虎の尾を踏む」は、平穏な日常が一瞬で危機に変わるような、緊張感のある場面で用いられます。
例文
- 不機嫌な父に小遣いをねだり、虎の尾を踏む結果となった。
- リーダーの不正を暴こうとするのは、虎の尾を踏むような行為だ。
- 強豪チームを無闇に挑発し、虎の尾を踏む。
誤用・注意点
「虎の尾を踏む」は、基本的には自業自得、あるいは無鉄砲な行動による「危機」を指す言葉です。
そのため、以下のようなポジティブな結果には使いません。
- 誤用例:「彼は虎の尾を踏んで、大成功を収めた」
- 正用例:「彼は虎の尾を踏むような危険を承知で、交渉に臨んだ」
相手の怒りを買う場面で多く使われますが、相手を「虎」に例えることになるため、本人の前で使うのは失礼にあたる可能性があり注意が必要です。
類義語・関連語
「虎の尾を踏む」と似た意味を持つ言葉には、以下のようなものがあります。
- 竜の髭を撫でる(りゅうのひげをなでる):
非常に危険な相手に、あえて手出しをすること。 - 逆鱗に触れる(げきりんにふれる):
目上の人を激しく怒らせること。 - 薄氷を踏む(はくひょうをふむ):
きわめて危険な状況にあることのたとえ。 - 危ない橋を渡る(あぶないはしをわたる):
一か八かの危険な手段を用いること。
対義語
「虎の尾を踏む」とは対照的な意味を持つ言葉には、以下のようなものがあります。
- 石橋を叩いて渡る(いしばしをたたいてわたる):
用心の上にさらに用心して、慎重に物事を進めること。 - 転ばぬ先の杖(ころばぬさきのつえ):
失敗しないように、前もって万全の準備をすること。 - 君子危うきに近寄らず(くんしあやうきにちかよらず):
徳のある人は、自分の身を危うくするような場所には近づかないということ。
英語表現
「虎の尾を踏む」を英語で表現する場合、以下の表現が適しています。
Play with fire
「火遊びをする」から転じて、身に害が及ぶおそれの大きい、危うい状況に自分から身を置くことを表す表現。
Investigating the secret is like playing with fire.
(その秘密を探ることは、虎の尾を踏むようなものだ。)
『書経』の「虎の尾を踏み春の氷を渉る」が四字熟語に
虎の尾は、もう一つの古典でも危うさのたとえに使われています。
『書経』の君牙の篇に、「心の憂え危ぶむこと、虎の尾を踏み、春の氷を渉るがごとし」という一節があります。
春の氷は薄くて割れやすく、虎の尾と並べることで危険が二重に描かれています。
ここから「虎尾春氷」という四字熟語が生まれ、極めて危うい立場を指す言葉として使われています。













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