人が何かに直面したときに抱く、強烈な感情である「恐怖」。
日本語には、恐ろしいと感じる瞬間の身体的な反応や、不安に怯える心理状態を表す言葉が数多く存在します。
今回は、「恐怖」というテーマに関連する、主なことわざ、慣用句、四字熟語、故事成語などを紹介します。
「恐怖」に関連する言葉 一覧
ことわざ
- 幽霊の正体見たり枯れ尾花(ゆうれいのしょうたいみたりかれおばな):
怖いと思っていたものも、正体がわかれば何でもないことのたとえ。恐怖は思い込みから生まれること。 - 虎の尾を踏む(とらのおをふむ):
非常に危険なことをするたとえ。恐ろしい目に遭う危険を冒すこと。 - 薄氷を踏む(はくひょうをふむ):
薄い氷の上を歩くように、非常に危険で恐ろしいことに臨むたとえ。 - 触らぬ神に祟りなし(さわらぬかみにたたりなし):
面倒なことや恐ろしいことには、関わらなければ害を受けることもないというたとえ。
慣用句
- 肝を冷やす(きもをひやす):
非常に怖い思いや、危険な目にあってひやりとすること。 - 肝が潰れる(きもがつぶれる):
非常に驚いたり、恐ろしい目にあったりして、心底びっくりすること。 - 背筋が凍る(せすじがこおる):
(「背筋が寒くなる」とも)非常に恐ろしいものに触れ、ぞっとすること。 - 身の毛がよだつ(みのけがよだつ):
あまりの恐ろしさに、全身の毛が逆立つように感じられること。 - 鳥肌が立つ(とりはだがたつ):
寒さや恐怖などで、皮膚に鳥肌(ぶつぶつ)ができるさま。 - 血の気が引く(ちのけがひく):
恐怖や驚きのために、顔が真っ青になるさま。 - 足がすくむ(あしがすくむ):
恐怖や極度の緊張で、足がこわばって動けなくなること。 - 腰を抜かす(こしをぬかす):
恐怖や驚きで、立っていられなくなること。 - 生きた心地がしない(いきたここちがしない):
非常に強い恐怖や心配で、死んだような気持ちになること。 - 息をのむ(いきをのむ):
恐怖や驚き、あるいは感動で、一瞬息を止めること。 - 固唾をのむ(かたずをのむ):
事の成り行きを、緊張や恐怖、不安を抱いて見守るさま。 - 気が気でない(きがきでない):
恐怖や心配事で、心が落ち着かないさま。 - 身の縮む思い(みのちぢむおもい):
恐ろしさや恥ずかしさなどで、体が小さくなるように感じること。 - 心臓が縮み上がる(しんぞうがちぢみあがる):
強い恐怖や緊張で、心臓が縮むように感じること。 - 恐れをなす(おそれをなす):
怖がること。恐怖心を感じること。
四字熟語/二字熟語
- 顔面蒼白(がんめんそうはく):
恐怖や驚き、体調不良などで、顔が真っ青になること。 - 戦々恐々(せんせんきょうきょう):
恐れて、びくびくしているさま。 - 恐々兢兢(きょうきょうきょうきょう):
(「戦々恐々」の類義語)恐れ慎み、用心深くするさま。 - 疑心暗鬼(ぎしんあんき):
疑う心が、ありもしない恐怖や化け物(暗鬼)を生み出すこと。 - 恐慌万状(きょうこうばんじょう):
非常に恐れ、慌てふためく様子。 - 周章狼狽(しゅうしょうろうばい):
恐れや驚きで、ひどく慌てふためくこと。 - 狼狽不堪(ろうばいふかん):
狼狽する(慌てうろたえる)ことに耐えられないほど、ひどく慌てるさま。
故事成語
- 草木皆兵(そうもくかいへい):
敵に敗れた者が、恐怖のあまり、風にそよぐ草木まで敵兵に見えたという故事から。極度の恐怖で疑い深くなること。(中国の『晋書』より) - 風声鶴唳(ふうせいかくれい):
風の音や鶴の鳴き声にも、敵が来たと怯えること。(「草木皆兵」と同じ故事から) - 杯中の蛇影(はいちゅうのだえい):
杯に映った蛇の影を、本物の蛇と見間違えて恐れること。疑う心が恐怖を生むたとえ。(中国の『晋書』より) - 杞憂(きゆう):
昔、杞の国の人が「天が落ちてきたらどうしよう」と恐れた故事から。まったく必要のない心配をすること。(中国の『列子』より) - 羹に懲りて膾を吹く(あつものにこりてなますをふく):
熱い吸い物でやけどし、それに懲りて冷たいなますまで吹いて冷ますこと。一度の失敗に懲りて、必要以上に用心(恐怖)すること。(中国の『楚辞』より) - 呉牛喘月(ごぎゅうぜんげつ):
暑さを恐れる呉の牛が、月を見ても太陽と間違えて喘ぐこと。無用な取り越し苦労や恐怖を抱くこと。(中国の『世説新語』より) - 三人市虎を成す(さんにんしこをなす):
三人続けて「市場に虎が出た」と嘘を言えば、信じてしまうこと。嘘の噂が恐怖を生むたとえ。(中国の『韓非子』などより)
その他の言葉
- 地震雷火事親父(じしんかみなりかじおやじ):
世の中で特に恐ろしいとされるものを順に並べた言葉。 - 怖いもの見たさ(こわいものみたさ):
怖いとは思いながらも、かえって見たいという好奇心があること。 - 畏怖(いふ):
(主に神仏や偉大な自然などに対して)恐れ、かしこまること。 - 戦慄(せんりつ):
恐ろしさで、体が震えること。 - 慄然(りつぜん):
恐ろしくて、ぞっと身震いするさま。 - 股栗(こりつ):
(「股(もも)が栗(おのの)く」の意)恐怖のために、足が震えること。
まとめ – 恐怖が映し出すもの
「恐怖」に関連する言葉を紹介しました。
「背筋が凍る」「身の毛がよだつ」といった直接的な身体反応から、「草木皆兵」「疑心暗鬼」のような心が生み出す恐れまで、実に多くの表現がありました。
これらの言葉は、人間が本能的に危険を察知し、それに対応してきた歴史を示しているとも言えます。
恐怖という感情が、どのような時に、なぜ生まれるのかを客観的に見つめるヒントが、これらの言葉には隠されているかもしれませんね。








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