周章狼狽

スポンサーリンク
四字熟語
周章狼狽
(しゅうしょうろうばい)
短縮形:狼狽

10文字の言葉し・じ」から始まる言葉

予期せぬトラブルが発生して頭が真っ白になった経験。冷静に対処しなければいけないのに、どうしていいか分からず、ただオロオロとしてしまう。
そんなパニック状態を指して、「周章狼狽」(しゅうしょうろうばい)と言います。

この言葉は、単に「急いでいる」だけでなく、想定外の事態に直面して平静さを完全に失ってしまった様子を表す言葉です。

意味

「周章狼狽」とは、思いがけない出来事に遭い、ひどく慌てふためくことです。

うろたえて取り乱し、冷静な判断ができなくなっている状態を指します。
「周章」と「狼狽」という、似た意味の言葉を重ねて強調した四字熟語です。

  • 周章(しゅうしょう):あわてて走り回ること。恐れおののいてうろたえること。
  • 狼狽(ろうばい):不意の出来事に驚き、どうすればよいか迷うこと。

語源・由来

「周章狼狽」の後半である「狼狽」の由来には、古代中国の伝説上の動物に関する興味深い話があります。

昔の中国では、「狼(ろう)」と「狽(ばい)」という二種類の獣がいると信じられていました。

  • 狼(ろう):前足が長く、後ろ足が短い。
  • 狽(ばい):前足が短く、後ろ足が長い。

この二頭は常に一緒に行動し、足の長さを補い合って歩いていました(一般に、狽が狼の上に乗ったり、寄りかかったりして移動したと言われます)。

しかし、ひとたび二頭が離れ離れになってしまうと、バランスを崩して倒れ、動けなくなってしまいます。
この「離れ離れになって進退きわまった様子」から、「狼狽(うろたえる)」という言葉が生まれたとされています。

そこに、恐れてうろつき回ることを意味する「周章」を加え、どうしようもなくパニックになる様子を表すようになりました。

使い方・例文

「周章狼狽」は、単なる忙しさではなく、「予想外の事態」に直面して「心の平静を失っている」時に使われます。

ビジネスシーンでの重大なミス発覚や、災害時の混乱、日常のハプニングなど、冷静さを欠いた振る舞いを描写するのに適しています。

例文

  • 突然の停電により、オフィス内は「周章狼狽」する社員たちで騒然となった。
  • 隠していた事実を本人に問い詰められ、彼は周章狼狽してしどろもどろになった。
  • 試験当日に寝坊してしまった。「周章狼狽」して家を飛び出したが、結局間に合わなかった。
  • 地震が起きても周章狼狽せず、まずは身の安全を確保することが大切だ。

文学作品での使用例

『富嶽百景』(太宰治)
富士山と向き合う太宰の心境を描いた小説の中で、高名な歌人である能因法師が、平凡な犬に吠えられて無様に慌てる様子をユーモラスに表現しています。

能因法師は、茶店のハチといふ飼犬に吠えられて、周章狼狽であった。その有様は、いやになるほど、みつともなかつた。

類義語・関連語

「周章狼狽」と似た意味を持つ言葉には、以下のようなものがあります。

  • 右往左往(うおうさおう):
    混乱してあちこち動き回ること。「周章狼狽」が「心の動揺」に重点があるのに対し、こちらは「実際の混乱した動き」に重点があります。
  • 慌てふためく(あわてふためく):
    落ち着きを失って騒ぐこと。日常会話で最も近いニュアンスの言葉です。
  • 取り乱す(とりみだす):
    不意の出来事にショックを受け、平常心を失うこと。悲しみや恐怖でパニックになる際によく使われます。

差別化ポイント:
単に「驚いた」というだけでなく、「うろたえて挙動不審になっている」というニュアンスを伝えたい場合は、「周章狼狽」が最も適しています。

対義語

「周章狼狽」とは対照的な意味を持つ言葉は、落ち着き払った態度を表す以下の言葉です。

  • 泰然自若(たいぜんじじゃく):
    何が起きても落ち着いていて、動じないさま。
  • 余裕綽々(よゆうしゃくしゃく):
    焦りが全くなく、ゆったりとして余裕があるさま。
  • 神色自若(しんしょくじじゃく):
    重大な事に直面しても、顔色一つ変えず平然としているさま。

英語表現

「周章狼狽」を英語で表現する場合、panic(パニック)や flustered(混乱した)といった単語がよく使われます。

in a panic

  • 意味:「パニック状態で」「慌てふためいて」
  • 解説:最も一般的で分かりやすい表現です。「周章狼狽して」という副詞的な使い方ができます。
  • 例文:
    He ran out of the room in a panic.
    (彼は周章狼狽して部屋から飛び出した。)

be flustered

  • 意味:「ひどく慌てる」「うろたえる」
  • 解説:予期せぬ質問や出来事に対して、混乱して落ち着きを失う様子を表します。
  • 例文:
    She was flustered by the unexpected question.
    (彼女は予期せぬ質問に周章狼狽した。)

伝説の動物「狼」と「狽」のトリビア

由来に登場する「狼(ろう)」と「狽(ばい)」は、生物学的なオオカミそのものではなく、中国の伝説や伝承に基づいた解釈がなされています。

特に「狽」については、「前足が極端に短く、自分で歩くことができないため、常に狼の背中に乗っている(あるいは前足をかけている)」と伝えられています。
一説には、生まれたばかりの狼や、奇形の狼を指していたのではないかとも言われていますが、定かではありません。

「狼狽」という言葉が、本来は「二人三脚のような協力体制が崩れて動けなくなること」を指していたというのは、意外な事実です。パニックで足がもつれる様子が目に浮かぶようです。

まとめ

「周章狼狽」は、予期せぬ出来事に遭遇し、ひどく慌てふためいてしまう様子を表す言葉です。

長い人生、誰しも頭が真っ白になる瞬間はあるものです。そんな時、パニックになっている自分や他人を客観的に見るために、この言葉を思い出してみるとよいかもしれません。
「今は狼と狽が離れてしまった状態なんだな」と考えるだけで、少しだけ冷静さを取り戻せることでしょう。

スポンサーリンク

コメント