カレンダーをめくり、新しい空気が満ちる朝。
清々しい気持ちで背筋を伸ばし、今年一年の目標を立てます。
日本には、こうした「新年・正月」の節目にふさわしい言葉が数多く受け継がれています。
俳句の季語として調べるなら、姉妹サイト「季語ディクショナリ」の新年の季語一覧へ。
月ごとの行事と季節の言葉は「季節・行事のことわざ(月別)」へ。
新しい志と再出発
新しい年の始まりは、心機一転して目標を定める絶好の機会です。
決意を新たにする場面で使いたい言葉を整理します。
一年の計は元旦にあり(いちねんのけいはがんたんにあり)
一年の計画は元日のうちに立てておくのがよく、何事も始める前に見通しを持つことが大切だという教えです。
古くは「一日の計は寅にあり、一年の計は春にあり」と言うことが多く、中国に由来する表現と考えられています。
「寅」は早朝、「春」は年の初めを指します。
心機一転(しんきいってん)
ある出来事をきっかけにして、これまでの気持ちをすっかり良い方向へ入れ替えることです。
新年という節目に、過去の失敗や悩みを取り払い、前向きな気持ちで再出発する様子を表します。
「心機」は心の動きや働き、「一転」はがらりと変わることを意味します。
一陽来復(いちようらいふく)
冬が終わり春が来ることです。
転じて、長く苦しい不遇の時期が過ぎ去り、ようやく幸運が巡ってくることを指します。
もとは易の考え方に基づく言葉で、陰がきわまって陽が初めて生じる冬至や陰暦11月を指します。
新年が来ることの意味でも使われます。
初心忘るべからず(しょしんわするべからず)
物事を始めたばかりの謙虚な気持ちや、未熟だった頃の志をいつまでも忘れてはならない、という戒めです。
年頭に立てた目標を忘れないよう、自分に言い聞かせる場面でも使えます。
能楽を大成させた世阿弥が、その著書『花鏡』に記した言葉です。
「初心」には、習い始めのころの未熟さだけでなく、芸のそれぞれの段階で初めて経験することも含まれます。
勇往邁進(ゆうおうまいしん)
自分の目的や目標に向かって、恐れることなく真っ直ぐに突き進むことです。
「勇往」は勇んで行くこと、「邁進」は勇ましく前進することを意味します。
新年の抱負として、力強い決意を表明する際にふさわしい四字熟語です。
七転び八起き(ななころびやおき)
何度失敗しても、そのたびに立ち上がって奮闘することです。
七度転んで八度起き上がる意から出た言葉です。
また、人生には浮き沈みが多いことのたとえとしても使われます。
福を呼び、幸を願う
正月は、一年が良い年であるようにと縁起を担ぐ時期です。
幸福や福徳にまつわる言葉を整理します。
笑う門には福来たる(わらうかどにはふくきたる)
いつもにこやかに笑っている人の家には、自然と幸福が巡ってくるとされます。
「門」は家の意味です。
つらい時でも明るさを失わずにいれば、やがて運が開けるという意味でも使われます。
一富士二鷹三茄子(いちふじにたかさんなすび)

(湖龍斎、1775年ごろ)
初夢に見ると縁起が良いとされるものを、順に並べた言葉です。
一に富士山、二に鷹、三に茄子を指します。
由来には、駿河の名物を順に挙げたとする説、茄子を「成す」に掛けた縁起とする説などがありますが、どれも確かな裏付けはありません。
松竹梅(しょうちくばい)
めでたいことの象徴とされる三つの植物の組み合わせです。
冬の寒さに耐えて松・竹は緑を保ち、梅はほかの植物に先がけて花を咲かせます。
中国ではこの三つを高潔・節操の象徴として「歳寒の三友」と呼び、日本でもめでたいものとして慶事や新年の飾りに用いられてきました。
鶴は千年、亀は万年(つるはせんねんかめはまんねん)
寿命が長く、非常にめでたいことの例えです。
中世から近世にかけては、大晦日や節分の夜に家々を回って厄を払う文句を唱えた「厄払い」の、決まり文句でもありました。
鶴は千年、亀は万年の寿命を保つという、『淮南子』などに見える中国の伝説から出た言葉です。
実際の寿命とは別に、慶事には鶴と亀にことよせて祝う習わしがあります。
年賀状で使う四字熟語
年賀状の冒頭に書く賀詞と、本文に書き添えやすい四字熟語を、意味と使い方とともに紹介します。
書き添える語には、相手の健康や繁栄を願う語と、新春の穏やかさを表す語があります。
謹賀新年(きんがしんねん)
つつしんで新年の喜びを申し上げる、という意味の賀詞です。
年賀状の冒頭に書く語で、同じ使い方をする「恭賀新年」は、うやうやしく新年を祝うという意味です。
無病息災(むびょうそくさい)
病気をせず、健康であることを意味します。
「息災」は、健康で達者であることを表します。
年賀状では「皆様の無病息災をお祈り申し上げます」のように、相手の一年の健康を願う形で書きます。
千客万来(せんきゃくばんらい)
多くの客が入れかわり立ちかわり訪れ、絶え間がないことを意味します。
店や客商売を営む相手に、商売の繁盛を願って書く語です。
「貴店の千客万来をお祈り申し上げます」のように使います。
五穀豊穣(ごこくほうじょう)
穀物が豊かに実ることを意味します。
「五穀」は、ふつう米・麦・粟・黍・豆の五種類の穀物を指します。
農業に携わる相手や、地域の実りを願う場面にふさわしい語です。
和気藹々(わきあいあい)
なごやかな気分が満ちている様子を意味します。
「藹々」は、おだやかで和らいだ様子を表します。
「ご家族で和気藹々とお過ごしください」のように、相手の家庭や職場のなごやかさを願う形で書けます。
春風駘蕩(しゅんぷうたいとう)
春風がのどかに吹く様子を意味します。
また、人の態度や性格、その場の雰囲気がのんびりとして穏やかな様子のたとえとしても使われます。
新春ののどかな景色を表す語として、年のはじめのあいさつに添えることができます。
盆と正月にまつわる言い回し
正月は盆と並ぶ一年の楽しみの代表で、そのたとえとしても言葉に使われてきました。
盆と正月が一緒に来たよう(ぼんとしょうがつがいっしょにきたよう)
うれしいことが重なることのたとえです。
また、たいへん忙しいことのたとえにも使われます。
「盆と正月が一度に来たよう」とも言います。
目の正月(めのしょうがつ)
美しいものや珍しいものを見て楽しむことです。
正月のような楽しみを目が味わう、という言い方で、「目の保養」とほぼ同じ意味です。
地獄の釜の蓋も開く(じごくのかまのふたもあく)
正月と盆の16日は、誰もが仕事を休んでよいということです。
この日は地獄の鬼さえ、亡者を釜で煮る責め苦を休んで蓋を開けておく、という意から出た言葉です。
時の流れと戒め
正月という節目は、改めて時間の貴重さを実感させます。
時の過ぎる早さや、先のことを語るときの戒めを伝える言葉を紹介します。
光陰矢の如し(こういんやのごとし)
月日が過ぎ去るのは、放たれた矢のように非常に早いということです。
「光」は日、「陰」は月を指し、昼夜の繰り返し=時間を意味します。
年の初めに、この一年もすぐに過ぎるだろうと思うときにも使います。
一月往ぬる二月逃げる三月去る(いちげついぬるにげつにげるさんげつさる)
正月からの三ヶ月間は、行事が多く慌ただしく過ぎ去ってしまうことを調子よく表現した言葉です。
「往ぬ」は去っていくという意味で、いち・に・さんの音を、いぬる・にげる・さるの頭にそろえています。
来年の事を言えば鬼が笑う(らいねんのことをいえばおにがわらう)
将来のことは予測がつかず、今から語っても当てにならないということです。
「明日の事を言えば鬼が笑う」とも言います。
門松は冥土の旅の一里塚(かどまつはめいどのたびのいちりづか)
正月の門松はめでたいものですが、門松を立てるたびに一つ年をとるので、死(冥土)へ向かう旅の一里塚でもある、ということです。
一里塚は、街道に一里ごとに築かれた道しるべの塚です。
「門松は冥土の旅の一里塚めでたくもありめでたくもなし」という歌の上の句で、この歌は室町時代の僧・一休宗純の作と伝えられていますが、確かなことは分かっていません。
使い方・例文
「新年・正月」に関連する言葉は、新年の挨拶、抱負、あるいは日々の心構えとして使われます。
- 「一年の計は元旦にあり」と言うから、今日はしっかり今年の目標を書き出そう。
- 去年の失敗を糧にして、今年は「心機一転」して仕事に取り組みたい。
- 孫たちが帰省したうえに息子の昇進の知らせまで届き、まさに「盆と正月が一緒に来たよう」だ。
類義語・関連語
新年の決意や抱負に通じる、その他の関連語句を紹介します。
- 不撓不屈(ふとうふくつ):
強い意志を持ち、どんな困難に直面してもくじけないこと。 - 百折不撓(ひゃくせつふとう):
何度挫折しても、信念を曲げないこと。 - 日進月歩(にっしんげっぽ):
日に日に、絶えず急速に進歩すること。 - 雲外蒼天(うんがいそうてん):
試練を乗り越えれば、その先には晴れやかな青空が待っているということ。
英語表現
「新年・正月」にまつわる日本の概念を英語で表現する場合を紹介します。
New Year’s Resolution
- 意味:「新年の抱負」
- 解説:正月に立てる目標や決意を指す一般的な表現です。
- 例文:
My New Year’s Resolution is to go to the gym twice a week.
(私の新年の抱負は、週に2回ジムに通うことです。)
Out with the old, in with the new
- 意味:「古いものを出し、新しいものを入れる」
- 解説:心機一転して新しい年を迎えるニュアンスです。
- 例文:
Let’s celebrate! Out with the old, in with the new!
(お祝いしよう!古い年は送り、新しい年を迎えよう!)
正月と盆の16日は奉公人の休み「藪入り」
「盆と正月が一緒に来たよう」と「地獄の釜の蓋も開く」の背景には、江戸の商家などで働く奉公人の休み「藪入り」があります。
奉公人は、正月と盆の16日前後に主人から暇をもらい、親元へ帰ることができました。
住み込みで働く奉公人にとっては数少ない休みで、「盆と正月が一緒に来たよう」がうれしいことの重なりを言うのも、この休みが理由の一つとされます。
正月16日は閻魔の縁日でもあり、地獄の釜の蓋も開くという言い方は、この縁日と藪入りが結び付いたものと考えられています。
休みをもらった奉公人は、閻魔堂に参ったり芝居小屋をのぞいたりして一日を過ごしました。










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