意味
「釣った魚に餌はやらない」とは、手に入れた相手や物事に対し、それまでのような関心や手間をかけなくなることのたとえです。
釣り上げるまでは餌で誘うものの、一度自分のものになれば餌を与える必要がないという、合理的ながら冷淡な心理を揶揄して用いられます。
目的を達成した途端に努力を怠ることへの皮肉や、初心を忘れることへの戒めとしての側面も持ち合わせています。
語源・由来
「釣った魚に餌はやらない」は、釣りの様子を人間関係になぞらえた比喩表現です。
魚を釣る最中は餌を使って巧みに誘い出しますが、釣り上げて生け簀やバケツに入れてしまえば、それ以上餌を与える動機が失われるという、釣りの実利的な光景に基づいています。
近代以降の日本で人々の日常的な経験則から生まれた比較的新しいことわざです。
使い方・例文
恋愛関係において相手を手に入れた後の態度の変化を指すのが一般的ですが、契約後のビジネス対応や、目標達成後の姿勢など、幅広く用いられます。
例文
- 結婚した途端、記念日を祝わなくなった。まさに釣った魚に餌はやらないだ。
- 恋人になった途端、身なりに無頓着になった。釣った魚に餌はやらないタイプだ。
- 契約した途端、連絡がパタリと来なくなった。釣った魚に餌はやらない営業姿勢だ。
- 高級車を手に入れたが、洗車すらしない。釣った魚に餌はやらない性格だ。
類義語・関連語
「釣った魚に餌はやらない」と似た意味を持つ言葉には、以下のようなものがあります。
- 喉元過ぎれば熱さを忘れる(のどもとすぎればあつさをわすれる):
苦しい時期を過ぎると、その時の恩義や苦労をすっかり忘れてしまうこと。 - 現金なもの(げんきんなもの):
自分の利害や状況によって、すぐさま態度を変える様子。 - 手のひらを返す(てのひらをかえす):
それまでの態度を急に反対に変えること。
対義語
「釣った魚に餌はやらない」とは対照的な意味を持つ言葉は以下の通りです。
- 誠心誠意(せいしんせいい):
嘘偽りなく、真心を持って相手に接し続けること。 - 初心忘るべからず(しょしんわするべからず):
物事を始めた時の謙虚で真剣な気持ちを、いつまでも持ち続けるべきだという戒め。 - 終始一貫(しゅうしいっかん):
最初から最後まで、態度や方針を変えずに突き通すこと。
英語表現
「釣った魚に餌はやらない」を英語で表現する場合、次のような定型表現が適切です。
Take someone for granted
「相手の存在を当たり前だと思う」
関係が安定したことで、相手への感謝や配慮を忘れてしまうという心理的なニュアンスを正確に伝えます。
He started to take her for granted after they got married.
(結婚後、彼は彼女の存在を当たり前だと思うようになった。)
Complacency
「自己満足」「慢心」
現状に甘んじて、維持するための努力を怠ってしまう状態を指します。
We must avoid complacency in our customer service.
(カスタマーサービスにおいて、釣った魚に餌をやらないような慢心を避けなければならない。)
「さかな」が魚を指すまで
「さかな」という言葉は、もとは魚のことではありませんでした。
酒を意味する「さか」と、おかずを意味する「な」が合わさった「酒菜」で、酒の席に添える食べ物全般を指していました。
室町時代ごろまでは、魚に限らず酒席に出るものはすべて「さかな」でした。
江戸時代に刺身や焼き魚が酒の席のごちそうとして好まれ、明治以降に魚類そのものを「さかな」と呼ぶ使い方が広がります。
水の中の生き物としての読みは、もともと「うお」でした。










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