ことわざ 故事成語

魚を得て筌を忘る

(うおをえてせんをわする)

目的を達成すると、それまで役立った手段や恩人を忘れてしまうことのたとえ。


11文字の言葉」から始まる言葉
魚を得て筌を忘る ことば
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意味

「魚を得て筌を忘る」は、何かを成し遂げた後、そこに至るまで支えてくれた道具や人への感謝をきれいさっぱり忘れてしまうことをたとえた言葉です。

自分が成功を収めた途端に掌を返すような、恩知らずな態度を戒めるネガティブなニュアンスを含みます。

語源・由来

中国の思想書『荘子』(外物篇)に記された、「筌(魚を捕るための竹製のカゴ)は魚を捕るための道具であり、魚を得たら筌のことは忘れてしまう」という一文から生まれた言葉です。

筌:魚を捕るための竹製のカゴ

使い方・例文

「魚を得て筌を忘る」は、成功後に態度を急変させた人物を非難する場面や、基礎を疎かにする組織への戒めとして使われます。

  • 出世した途端にかつての恩師を遠ざけるとは、まさに魚を得て筌を忘るだ。
  • 目先の利益を追い基盤技術を軽視する企業は、魚を得て筌を忘ると言うほかない。

類義語・関連語

「魚を得て筌を忘る」と似た意味を持つ言葉には、以下のようなものがあります。

  • 兎を得て蹄を忘る(うさぎをえてていをわする):
    目的を達すると、それに用いた道具の存在をあっさり忘れること。
  • 得魚忘筌(とくぎょぼうせん):
    目的達成後に、それまで役立ったものを忘れること。
  • 川を渡り終えば杖を棄つ(かわをわたりおえばつえをすつ):
    目的を果たした途端、頼りにしていたものをあっさりと見限る様子。
  • 喉元過ぎれば熱さを忘れる(のどもとすぎればあつさをわすれる):
    苦痛が過ぎ去ると、その時の苦しみや助けてもらった恩を忘れてしまう状態。

対義語

「魚を得て筌を忘る」と反対の意味を持つ言葉には、以下のようなものがあります。

  • 飲水思源(いんすいしげん):
    水を飲む時にはその井戸を掘った人のことを思うという意味から、物事の基本や世話になった人の恩を決して忘れないこと。
  • 結草銜環(けっそうかんかん):
    受けた恩を深く心に刻み、死んでからでも報いようとすることから、決して恩を忘れないことのたとえ。

英語表現

Forget the bridge that carried you over

意味:目的を達成した途端、苦しい時に支えてくれた恩を忘れること。

He never talks to his old mentor anymore. He forgot the bridge that carried him over.
(彼はもう昔の恩師と話さない。苦しい時に助けてくれた恩を忘れてしまったのだ。)

「魚を得て筌を忘る」は、荘子では正反対の肯定的な意味だった

現代では恩知らずを非難するネガティブな意味で使われる「魚を得て筌を忘る」ですが、語源である『荘子』における本来のニュアンスは全く異なります。

荘子は「言葉とは真理(意図)を伝えるための道具であり、真理を理解したならば言葉に固執する必要はない」と説きました。
つまり、元々は「本質を掴んだら、それに至る手段や形式(言葉)にとらわれてはならない」という、悟りにも似た肯定的な教えでした。

それが時代を下るにつれ、「手段にとらわれない」という部分が「手段や恩人をあっさりと捨てる」という道徳的な批判へとすり替わり、現在のように意味が逆転して定着しました。

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