意味
「魚を得て筌を忘る(うおをえてせんをわする/うおをえてうえをわする)」は、何かを成し遂げた後、そこに至るまで支えてくれた道具や人への感謝をきれいさっぱり忘れてしまうことをたとえた言葉です。
自分が成功を収めた途端に掌を返すような、恩知らずな態度を戒めるネガティブなニュアンスを含みます。
語源・由来
中国の思想書『荘子』外物篇にある、次の一節から生まれた言葉です。
荃者所以在魚,得魚而忘荃;蹄者所以在兔,得兔而忘蹄;言者所以在意,得意而忘言。
(筌は魚を捕るための道具で、魚を得れば忘れられ、わなは兎を捕るための道具で、兎を得れば忘れられ、言葉は意味を伝えるための道具で、意味を得れば忘れられる。)
「筌」は魚を捕るための竹製のカゴで、原文では草かんむりの「荃」の字で書かれています。

使い方・例文
「魚を得て筌を忘る」は、成功後に態度を急変させた人物を非難する場面や、基礎を疎かにする組織への戒めとして使われます。
- 出世した途端にかつての恩師を遠ざけるとは、まさに魚を得て筌を忘るだ。
- 目先の利益を追い基盤技術を軽視する企業は、魚を得て筌を忘ると言うほかない。
類義語・関連語
「魚を得て筌を忘る」と似た意味を持つ言葉には、以下のようなものがあります。
- 兎を得て蹄を忘る(うさぎをえてわなをわする):
目的を達すると、それに用いた道具の存在をあっさり忘れること。 - 得魚忘筌(とくぎょぼうせん):
目的達成後に、それまで役立ったものを忘れること。 - 雨晴れて笠を忘る(あめはれてかさをわする):
雨がやむと、雨をしのいだ笠のことを忘れてしまうことから、苦しい時が過ぎると助けになったものを忘れること。 - 喉元過ぎれば熱さを忘れる(のどもとすぎればあつさをわすれる):
苦痛が過ぎ去ると、その時の苦しみや助けてもらった恩を忘れてしまう状態。
対義語
「魚を得て筌を忘る」と反対の意味を持つ言葉には、以下のようなものがあります。
- 飲水思源(いんすいしげん):
水を飲む時にはその井戸を掘った人のことを思うという意味から、物事の基本や世話になった人の恩を決して忘れないこと。
「魚を得て筌を忘る」は、荘子では正反対の肯定的な意味だった
現代では恩知らずを非難するネガティブな意味で使われる「魚を得て筌を忘る」ですが、語源である『荘子』における本来のニュアンスは全く異なります。
荘子は「言葉とは真理(意図)を伝えるための道具であり、真理を理解したならば言葉に固執する必要はない」と説きました。
つまり、元々は「本質を掴んだら、それに至る手段や形式(言葉)にとらわれてはならない」という、悟りにも似た肯定的な教えでした。
日本では、目的を達すると役に立ったものの功を忘れてしまうこと、さらに恩を忘れてしまうことのたとえとして使われています。











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