意味
百獣の王である獅子でさえも、体内に寄生した小さな虫によって肉を食い破られ、ついには死に至るという比喩から成り立っています。
転じて、味方のふりをして内部に入り込み、組織を崩壊させる内通者や恩を仇で返す裏切り者を指す言葉として定着しました。
語源・由来
「獅子身中の虫」の由来は、仏教の経典である『梵網経(ぼんもうきょう)』などにあります。
お釈迦様は「仏の教え(獅子)を破壊するのは、外の異教徒ではなく、内部にいる悪い仏教徒(体内の虫)である」と説きました。
この教えが長い年月を経て、仏教の世界に限らず、一般的な組織や集団における裏切り者を指す言葉として広く使われるようになりました。
使い方・例文
「獅子身中の虫」は、信頼していた身内や仲間に裏切られた場面などで使用されます。
- 組織の機密情報を外部に漏らしたのは内部の人間だった。まさに獅子身中の虫だ。
- チームの足を引っ張るのは敵ではなく、獅子身中の虫かもしれない。
- 内部から崩れていく様子に、獅子身中の虫の怖さを知る。
誤用・注意点
「獅子身中の虫」は、意図的に害をなす裏切り者という強い非難を込めた言葉です。
単に仕事の能力が低い人や、悪気なく失敗をしてしまった人に対して使うのは誤りです。
相手の人格を強く否定する言葉であるため、軽々しく口にするとトラブルの原因になります。
類義語・関連語
「獅子身中の虫」と似た意味を持つ言葉には、以下のようなものがあります。
- 恩を仇で返す(おんをあだでかえす):
恩を受けた相手に対して、感謝するどころか逆に害を与えるような仕打ちをすること。 - 飼い犬に手を噛まれる(かいいぬにてをかまれる):
日頃から目をかけ、かわいがっていた者から裏切られてひどい目に遭うこと。 - 内股膏薬(うちまたごうやく):
定見がなく、その時の都合であちこちの勢力につく節操のない人のこと。
対義語
「獅子身中の虫」とは対照的な意味を持つ言葉は、以下の通りです。
- 股肱の臣(ここうのしん):
主君の手足となって働く、最も信頼できる優秀な家来のこと。 - 忠臣(ちゅうしん):
君主や国家に対して、私心を捨てて忠義を尽くす家臣のこと。
英語表現
「獅子身中の虫」を英語で表現する場合、以下のような定型句が使われます。
A serpent in one’s bosom
直訳:胸の中の蛇
意味:胸に抱いて温めてやった蛇に噛みつかれるという寓話に由来し、恩を仇で返す者や、油断ならない人物を指します。
He was a serpent in our bosom.
(彼は「獅子身中の虫」だった。)
The enemy within
直訳:内なる敵
意味:外からの敵ではなく、組織や集団の内部にいる敵を指します。
The leak came from the enemy within.
(情報漏洩は「獅子身中の虫」によるものだった。)
獅子と狛犬が一対になるまで
「獅子」はライオンのことで、日本にも中国にも生息していません。
仏を守る獣としてライオンの像を置く古代インドの習わしが、仏教とともに中国や朝鮮半島を経て伝わりました。
日本では平安時代に一対のうち片方の姿が変えられ、口を開けて角のない獅子と、口を閉じて角のある狛犬が並ぶ形になります。
神社の参道に置かれる一対は、本来この獅子と狛犬を指す呼び名です。











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