私たちの食卓にも身近な「魚」。日本語には、そんな魚や魚介類にまつわる、ことわざ、慣用句、故事成語がたくさんあります。
魚の性質や、魚と人との関わりから生まれたこれらの言葉は、様々な状況や感情、教訓を巧みに表現しています。
今回は、日常会話や文章でも使える、「魚」に関係する有名な言葉を集め、意味とともにご紹介します。

「魚」に関することわざ
(ことわざ:主に教訓や風刺、昔からの言い伝えを含む短い句)
- 釣った魚に餌はやらぬ(つったさかなにえさはやらぬ):
一度自分のものにした人や物に対しては、手に入れる前ほどには関心や配慮を示さなくなることのたとえ。 - 腐っても鯛(くさってもたい):
優れた価値を持つものは、多少状態が悪くなってもその本質的な価値を失わないことのたとえ。 - 鯛の尾より鰯の頭(たいのおよりいわしのあたま):
大きな集団の中で末端にいるよりも、小さな集団でも長となる方が良いということ。鶏口牛後(けいこうぎゅうご)。 - 鰯の頭も信心から(いわしのあたまもしんじんから):
つまらないものでも、それを信仰する人にとっては非常に尊いものに思われることのたとえ。信じる力の強さ。 - 逃がした魚は大きい(にがしたさかなはおおきい):
手に入れ損なったものは、実際よりもはるかに良く、価値のあるものだったように思われることのたとえ。 - 雑魚の魚交じり(ざこのととまじり):
価値のないものや、つまらない人物が、優れたものや人物の中に混ざっていること。 - 魚の目に水見えず、人の目に空見えず(うおのめにみずみえず、ひとのめにそらみえず):
あまりに身近にあるものは、かえってその存在や大切さに気づきにくいことのたとえ。 - 大魚は小池に棲まず(たいぎょはしょうちにつまず):
優れた能力を持つ人は、窮屈な環境ではその力を十分に発揮できないことのたとえ。 - 秋刀魚が出ると按摩が引っ込む(さんまがでるとあんまがひっこむ):
秋になり栄養豊富なサンマが多く出回ると病人が減り、按摩の仕事が少なくなることから、季節の変化や特定の出来事が他の事柄に影響を及ぼすことのたとえ。
「魚」に関する慣用句
(慣用句:二語以上の語が結びつき、特定の意味を持つ定型的な言い回し)
- 水を得た魚(みずをえたさかな):
自分に合った環境や活躍の場を得て、生き生きと能力を発揮する様子。 - まな板の上の鯉(まないたのうえのこい):
どうすることもできず、相手のなすがままになるしかない絶体絶命の状況にあることのたとえ。 - 魚心あれば水心(うおごころあればみずごころ):
相手が好意を示せば、こちらもそれに応じた好意を示す用意があるということ。相手の出方次第であるさま。 - 海老で鯛を釣る(えびでたいをつる):
わずかな元手や労力で、大きな利益や価値のあるものを得ることのたとえ。 - 鯖を読む(さばをよむ):
実際の数をごまかして、自分に都合の良いように言うこと。年齢をごまかす際などにも使う。 - とどのつまり:
いろいろな経緯を経たうえでの最終的な結論や結果。結局。行き着くところ。(魚のボラの成長名から) - 鯉の滝登り(こいのたきのぼり):
困難を乗り越えて、立身出世することのたとえ。(登竜門の故事に関連) - 鵜の目鷹の目(うのめたかのめ):
獲物を狙う鵜や鷹のように、物を探し出そうと鋭い目つきで熱心になる様子。 - 喉に魚の骨が刺さる/骨が刺さる(のどにさかなのほねがささる/ほねがささる):
心に引っかかりがあり、気になって仕方がない状態のたとえ。 - 金魚の糞(きんぎょのふん):
いつも特定の人にくっついて回り、付和雷同する人を軽蔑していう言葉。 - 釜中の魚(ふちゅうのうお):
釜の中で煮られるのを待つ魚のように、死や破滅が目前に迫っている、非常に危険な状態のこと。
「魚」に関する故事成語
(故事成語:中国の古典や歴史的な出来事に由来する言葉)
- 登竜門(とうりゅうもん):
立身出世や成功につながる、突破することが難しい重要な関門のこと。
(黄河の急流(竜門)を登りきった鯉は竜になるという伝説から) - 池魚の殃(ちぎょのわざわい):
自分には関係のないことで、思いがけない災難を受けることのたとえ。(城門の火事で、消火に使った池の水がなくなり魚が死んだ故事から) - 魚を得て筌を忘る(うおをえてせんをわする):
目的を達成すると、そのために役立った手段や人のことを忘れてしまうことのたとえ。(筌は魚を捕るかご) - 水魚の交わり(すいぎょのまじわり):
水と魚のように、なくてはならない、非常に親密な関係や交友のこと。(劉備と諸葛亮の関係を例えた故事から) - 俎上の魚(そじょうのうお):
「まな板の上の鯉」と同じ。抵抗できず、相手のなすがままになるしかない運命のたとえ。 - 涸轍の鮒(こてつのふな):
差し迫った危機にあること、また、その場しのぎのわずかな援助のたとえ。(涸れた轍の水たまりで苦しむ鮒の故事から) - 臨淵羨魚(りんえんせんぎょ):
淵のほとりで魚を羨むように、ただ願うばかりで実行が伴わないことのたとえ。 - 木に縁りて魚を求む(きによりてうおをもとむ):
木に登って魚を捕ろうとするように、方法を間違えていては目的は達成できないことのたとえ。
まとめ
いかがでしたでしょうか。「魚」という身近な存在を通して、先人たちは様々な知恵や教訓、人生の機微を表現してきました。これらの言葉を知ることで、日本語の表現の豊かさを改めて感じることができますね。ぜひ、日常の会話や文章の中で使ってみてください。
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