予期せぬ事態に混乱し、あちこちへ動き回って慌てふためく様子を表すのが、
「右往左往」(うおうさおう)です。
意味
右往左往は、混乱して的確な判断ができず、あちこちへ動き回る様子という意味です。
- 右往:右へ行くこと
- 左往:左へ行くこと
語源・由来
右往左往は特定の故事に基づく言葉ではなく、「右へ行く」「左へ行く」という漢字の組み合わせがそのまま意味を表しています。
日本の古い用例として、鎌倉時代の軍記物語『平治物語』に「兵ども右往左往にはせちがひ」という記述があります。
合戦の場で兵士たちが入り乱れて動く様子を描写したもので、成立は13世紀中頃と推定されています。
使い方・例文
「右往左往」は、突発的なトラブルや不測の事態に直面し、どう対処すべきか分からず混乱している場面で使われます。
- 財布がないことに改札前で気づき、来た道を右往左往した。
- 締め切り当日に原稿の紛失が発覚し、編集部は右往左往した。
類義語・関連語
「右往左往」と似た意味を持つ言葉には、以下のようなものがあります。
- 左往右往(さおううおう):
「右往左往」の漢字の順序を入れ替えた表現で、全く同じ意味を表します。 - 周章狼狽(しゅうしょうろうばい):
予期しない出来事に直面し、非常に慌ててうろたえる様子を指します。 - 狼狽(ろうばい):
思いがけない事態にどうしてよいか分からず、慌てふためくという意味です。
対義語
「右往左往」と反対の意味を持つ言葉には、以下のようなものがあります。
- 冷静沈着(れいせいちんちゃく):
感情に左右されず、落ち着いて物事に対処する様子を表します。 - 泰然自若(たいぜんじじゃく):
落ち着き払っていて、どのようなことが起きても少しも動じない様子を指します。 - 不動(ふどう):
どっしりと落ち着いていて、周囲の状況に心が揺れ動かないという意味です。
英語表現
run around like a headless chicken
直訳:頭のない鶏のように走り回る
意味:非常に慌てて、非効率的に動き回る様子を表す慣用句です。
- 例文:
When the fire alarm went off, everyone started running around like a headless chicken.
火災報知器が鳴った時、誰もが右往左往し始めました。
run around in confusion
意味:混乱してあちこち走り回る状態を指します。
- 例文:
The staff were running around in confusion before the event started.
イベント開始前、スタッフたちは混乱して右往左往していました。
パニックが伝染する仕組み
緊急事態に直面すると、脳の判断機能は一時的に働きを落とし、「とにかく動け」という本能が前に出ます。
方向を定めないまま走り出すのは、弱さではなく生理的な反応です。
強いストレス下では論理より衝動が優先される、これは人間の脳に組み込まれた仕組みです。
厄介なのは、その慌てぶりが周囲に伝染する点です。
心理学では「情動感染」と呼ばれるこの現象は、他者の動揺を無意識に模倣するミラーニューロンの働きと関係していると考えられています。
一人のパニックが周囲を巻き込み、集団全体が方向感覚を失う。
「兵ども右往左往にはせちがひ」と記した平治物語の一節は、その連鎖が起きた瞬間の記録でもあります。






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