十二支のサイクルが再び始まり、最初の年となる「子(ねずみ)」。
古来より「寝ず身(ねずみ)」と当て字されるほどの働き者や、多産であることから「子孫繁栄」「商売繁盛」の象徴とされてきました。
その一方で、家の食料を荒らす害獣としての側面から、人間の卑しさや狡賢さ、立場の弱さを風刺する言葉も数多く残されています。
2032年(令和14年)の干支は「壬子(みずのえね)」。
新しいサイクルの始まりに、小さくても知恵と生命力にあふれる「ねずみ」に関する表現へ、今一度、目を向けてみましょう。
1. 危機・脱出・生存本能を表す言葉
ねずみの「追い詰められた時の強さ」や「危険を察知する能力」を表す、非常に有名な言葉です。
窮鼠猫を噛む(きゅうそねこをかむ)
- 弱い者でも、絶体絶命の窮地に追い詰められれば、強い者に必死で反撃するということ。
- 「窮鼠」は追い詰められたねずみのこと。相手を逃げ場のない状態まで追い込むと、思わぬ逆襲を受けるため、逃げ道を残しておくべきだという教訓も含みます。
袋の鼠(ふくろのねずみ)
- 逃げ場がなく、捕まるのが時間の問題である状態。
- 袋の中に入ったねずみは、走り回ることはできても外には出られないことから。包囲された犯人などを指して使われます。
沈む船から鼠が逃げる(しずむふねからねずみがにげる)
- 災難や没落が近づくと、それに関わっている者たちが、いち早くそれを察知して逃げ出すことのたとえ。
- ねずみには予知能力があり、船が難破することを予感して、出航前に逃げ出すという西洋の伝承に由来します。組織が破綻する前に、主要メンバーが辞めていく際などによく使われます。
猫の首に鈴を付ける(ねこのくびにすずをつける)
- 計画は立派だが、実行するのが不可能であることのたとえ。
- 由来:
イソップ童話より。猫に襲われないよう、ねずみたちが「猫が来たら分かるように首に鈴を付けよう」と相談して決めたが、「じゃあ誰が付けに行くんだ?」となった途端、誰も名乗り出なかったという話から。
2. 増殖・小ささ・意外性を表す言葉
ねずみの「繁殖力」や、大きなものとの対比で使われる言葉です。
鼠算(ねずみざん)
- 物事が急激に増えること。幾何級数的な増加。
- 由来:
和算(日本の数学)の用語。ねずみは多産で、子が子を産み、孫が孫を産むと、あっという間に莫大な数になることから。借金があっという間に膨らむ際(鼠算式に増える)などによく使われます。
大山鳴動して鼠一匹(たいざんめいどうしてねずみいっぴき)
- 前触れや騒ぎばかりが大きくて、実際の結果はごく些細なものであること。
- 由来:
古代ローマの詩人ホラティウスの詩(ラテン語)が由来。「大きな山が動き出すかのような轟音が響いたが、出てきたのは一匹のねずみだった」という寓話から。期待外れの結果に終わった際によく使われます。
鼠の嫁入り(ねずみのよめいり)
- 身分不相応な高い望みを持っても、結局は自分にふさわしい相手(場所)に落ち着くということ。
- 由来:
日本の民話より。ねずみの娘の婿を探すため、世界一強い相手(太陽、雲、風、壁)を訪ね歩いたが、最終的に「壁に穴を開けるねずみが一番強い」という結論になり、ねずみ同士で結婚したという話から。
※「狐の嫁入り(天気雨)」とは別の言葉です。
3. 人間・社会の悪事を表す言葉
ねずみの「盗む」「隠れる」という習性を、人間の悪事に重ねた表現です。
頭の黒い鼠(あたまのくろいねずみ)
- 家や組織の中にいて、物を盗んだり悪さをしたりする身内のこと。
- 普通のねずみは全身が灰色や茶色ですが、髪の毛の黒い人間を「ねずみ」に見立てた隠語です。
内部の横領者などを指す際に使われます。
鳴く猫は鼠を捕らぬ(なくねこはねずみをとらぬ)
- よく喋る人や、口先ばかりの人は、実行力が伴わず役に立たないというたとえ。
- 本当にねずみを狙う猫は、気配を消すために鳴き声を立てないことから。「能ある鷹は爪を隠す」の逆説的な表現とも言えます。
家に鼠、国に盗人(いえにねずみ、くににぬすっと)
- 世の中には、どこにでも害をなす者がいるもので、絶えることがないという嘆き。
- 家には食料を荒らすねずみがおり、国家には盗人がいる。厄介者は身近なところにも、大きな組織にも必ず存在するという諦念を含んだ言葉です。
4. 座右の銘に使える「子」の四字熟語
首鼠両端(しゅそりょうたん)
- どちらにしようかと迷ってばかりで、態度をはっきり決められないこと。
- 『史記』より。「首鼠」は穴から首を出して、外の様子をキョロキョロとうかがうねずみのこと。「両端」は進むか戻るか迷う様子。日和見(ひよりみ)主義や優柔不断のたとえとして使われます。
城狐社鼠(じょうこしゃそ)
- 権力者の威光を笠に着て、悪事を働く者のこと。また、取り除くのが難しい悪人のこと。
- 『晋書』より。城壁に巣食う狐と、社(やしろ)に住み着くねずみのこと。これらを燻り出そうとすると、城や社まで壊してしまう恐れがあるため手が出せない。つまり、君主の側近にいる悪徳官僚などを批判する言葉です。
抱頭鼠竄(ほうとうそざん)
- 慌てふためいて逃げ出すこと。
- 「抱頭」は頭を抱え込むこと、「鼠竄」はねずみのようにこそこそと逃げること。ひどく狼狽して、惨めに逃げ去る様子を表します。
5. 英語におけるねずみ(Mouse/Rat)の表現
英語では、小さくて愛らしい「Mouse(ハツカネズミ)」と、大型で害獣のイメージが強い「Rat(ドブネズミ)」が明確に使い分けられます。
I smell a rat.
- 「怪しいぞ(何か隠しているな)」
- 直訳は「ねずみの臭いがする」。猫や犬が隠れているねずみの臭いを嗅ぎつけるように、裏切りや嘘、不正の気配を直感した時に使います。
Quiet as a mouse.
- 「ねずみのように静か」
- 物音一つ立てずに静かにしている様子。子供がおとなしくしている時や、隠密行動をとる時などに使われます。
Rat race
- 「出世競争、生存競争」
- 檻の中のねずみが回し車を延々と走り続ける様子から、現代社会の終わりなき過酷な競争を皮肉って使います。
「子」に関する豆知識
なぜ「子(ね)」が一番目なのか?
十二支の順番を決める神様のもとへ挨拶に行く際、歩みの遅い「牛」は誰よりも早く前日の夜に出発しました。
ちゃっかり牛の背中に乗っていたのが「ねずみ」です。
神様の門が開いた瞬間、ねずみは牛の背中から飛び降りて一番乗りを果たしたため、十二支のトップになったと言われています。
このことから、ねずみは「知恵」や「要領の良さ」の象徴ともされます。
大黒様の使い
七福神の「大黒天」の使いはねずみです。
これは、大黒天がインドの神様から日本の「大国主命(おおくにぬしのみこと)」と習合(同一視)された際、神話の中で大国主命が火に囲まれた時、ねずみが逃げ道を教えて救ったというエピソードに由来します。
そのため、米俵に乗ったねずみの置物は、金運や五穀豊穣の縁起物とされています。
過去・未来の「子年(ねずみどし)」年表
ご自身の生まれ年や、歴史上の出来事の確認にお使いください。
| 西暦 | 和暦 | 干支(十干十二支) |
|---|---|---|
| 1948年 | 昭和23年 | 戊子(つちのえね) |
| 1960年 | 昭和35年 | 庚子(かのえね) |
| 1972年 | 昭和47年 | 壬子(みずのえね) |
| 1984年 | 昭和59年 | 甲子(きのえね) |
| 1996年 | 平成8年 | 丙子(ひのえね) |
| 2008年 | 平成20年 | 戊子(つちのえね) |
| 2020年 | 令和2年 | 庚子(かのえね) |
| 2032年 | 令和14年(予定) | 壬子(みずのえね) |
| 2044年 | 令和26年(予定) | 甲子(きのえね) |
| 2056年 | 令和38年(予定) | 丙子(ひのえね) |
| 2068年 | 令和50年(予定) | 戊子(つちのえね) |
| 2080年 | 令和62年(予定) | 庚子(かのえね) |
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