「手」は、物を掴んだり、作業をしたりと、人間の行動における中心的な役割を果たします。
そのため、「手」に関連する言葉は、労働、能力、技術、人間関係、力の有無など、非常に幅広い意味合いを持っており、日本語の表現の中でも特に数が多い分野の一つです。
「手を貸す」「手に汗握る」「拱手傍観」など、現代でも日常的に使われる表現が豊富で、手にまつわる言葉は人間の行動や関与のあり方を巧みに表現しています。
ここでは、「手」や「握る」に関連する、主なことわざ・慣用句・四字熟語を紹介します。
「手・握る」に関する ことわざ
- 赤子の手を捻る(あかごのてをひねる):
抵抗する力を持たない赤ん坊の手をひねるくらい、弱い相手を打ち負かすのも、物事を成し遂げるのも、拍子抜けするほど簡単だという意味の言葉。 - 上手の手から水が漏る(じょうずのてからみずがもる):
どんなに腕の立つ熟練者でも、時にはうっかり思わぬ失敗をしてしまうことがあるという戒め。囲碁や将棋の腕利きを指す「上手」の段位に由来するという説。 - 猫の手も借りたい(ねこのてもかりたい):
ネズミを捕る以外にはほとんど役に立たない猫の手さえ、それでも借りたいと思うほど、人手が足りずてんてこ舞いに忙しい状態を大げさに例えた言い回し。 - 濡れ手で粟(ぬれてであわ):
濡れた手で粟粒をわしづかみにすると、粒がびっしりくっついてたっぷり取れることから、大した苦労もせずに大きな利益を手にする様子のたとえ。
「手・握る」に関する慣用句
手の状態・忙しさ
- 手が空く(てがあく):
これまで抱えていた仕事や作業が一段落し、両手がふさがっていない自由な状態になることから転じて、時間や心に余裕ができることを指す言葉。 - 手が塞がる(てがふさがる):
何かを持ったり別の作業をしたりしていて両手がふさがってしまい、頼まれてもすぐには他のことに手を出せない、身動きの取れない状況を指す表現。 - 手が足りない(てがたりない):
こなさなければならない作業量に対して働き手の人数がまったく追いつかず、現場が深刻な人手不足で困り果てている状況を指す言い方。 - 手がかかる(てがかかる):
まだ幼い子どもの世話や、細かな部分まで凝らされた作業のように、あれこれと余分な手間や気配りを多くかけなければならない対象を指す表現。 - 手が込む(てがこむ):
「込む」は物事が複雑に入り組むという意味を持ち、細工や作業に細かな技巧や多くの工程がびっしりと凝らされている様子を表す言葉。 - 手が回る(てがまわる):
目や配慮、必要な準備が隅々まで漏れなく行き届くこと。また、警察の捜査の手が及び、犯人への追及がじわじわと進んでいる状況。
能力・速さ・技量
- 手が早い(てがはやい):
仕事の処理が素早いという良い意味のほか、すぐに手を出して暴力をふるったり、出会った異性とすぐ親密な関係になったりする様子。 - 手が届く(てがとどく):
実際に物理的に手を伸ばせば簡単に触れられそうな近さを表すほか、努力や工夫を重ねればいずれ実現できそうな距離感を示す言葉。 - 手に取るようにわかる(てにとるようにわかる):
まるで実際に自分の手に取って調べているかのように、物事の様子や成り行きが非常にはっきりと目に浮かぶほど、よく理解できる状態。
困難・限界
- お手上げ(おてあげ):
戦場などで降参の意思を示すために両手を高く挙げる仕草に由来し、あらゆる対応の手段が尽きてもうどうにもならなくなった様子。 - 手が出ない(てがでない):
自分の持っている能力や資金ではとても対処しきれず、値段が高すぎて手が届かず購入をあきらめざるを得ない、または解決できない状況。 - 手に負えない(てにおえない):
自分の力量や今までの経験だけではとても制御しきれず、扱いに困り果てて手をこまねいてしまうくらい厄介な相手や物事を指す言葉。 - 手に余る(てにあまる):
今抱えている仕事や問題の分量、あるいはその難しさが、自分本来の力量をはるかに超えていて、到底一人だけでは抱えきれない状態。 - 手も足も出ない(てもあしもでない):
相手や置かれた状況があまりに強大で、すっかり萎縮してしまいまったく身動きが取れず、対処のしようが何もなくなってしまった有様。 - 手がない(てがない):
打つべき有効な手立てや解決の方法がどこを探してもまるで見当たらず、あらゆる打つ手が尽き果ててしまっている手詰まりの状況。 - 手を焼く(てをやく):
触れればまるで火傷をしてしまうかのように扱いが厄介で、あれこれ対応にひどく苦労させられ、すっかり持て余してしまうという様子。
協力・関係
- 手を貸す(てをかす):
まるで自分の手をそっと差し出すかのように、困っている相手の作業や問題解決を手伝うこと。損得を抜きにした善意から出る行動。 - 手を組む(てをくむ):
互いの手をしっかりと握り合うイメージから、共通の目的を果たすために利害の違いを超えて手を携え、協力関係を結ぶことを指す言い方。 - 手を引く(てをひく):
それまで深く関わり続けていた事業や人間関係から、自らきっぱりと身を引き、それまで保っていたつながりを断つことを表す言い回し。 - 手を切る(てをきる):
かつて手をつなぎ合って協力していた関係を、これまでとはっきりと断ち切ること。特に良くない相手との縁を断つ場面で使う言い方。 - 手取り足取り(てとりあしとり):
習い事の先生が生徒の手を取って動きを教えるように、細かな部分まで一つひとつ丁寧に指導したり世話をしたりする様子を表す言葉。
行動・対処
- 手を打つ(てをうつ):
問題がこれ以上大きくならないうちに必要な対策を講じること。江戸時代の商取引で契約成立の際に両手を打ち合わせた慣習にも由来するという。 - 手ぐすねを引く(てぐすねをひく):
弓の弦を強くする松やに製の「くすね」を弓を持つ手に塗って備えたことから、準備万端で相手が来るのを今か今かと待ち構える様子。 - 手をこまねく(てをこまねく):
両手を胸の前で組み合わせる中国伝来の礼法「拱手」の動作に由来し、自分からは何も手を出さずただ傍観していることを表す言い方。 - 手を尽くす(てをつくす):
思いつく限りのあらゆる手段や方法を何度も片っ端から試し、できることは何ひとつ残さず全力でやり尽くして状況の打開を図る様子。 - 手を抜く(てをぬく):
囲碁で自分の石を打たずに盤上の別の場所へすぐに着手する意味から転じて、やるべき作業をいい加減に済ませてしまう様子を指す言葉。 - 手を広げる(てをひろげる):
これまで関わりを持っていた活動の範囲や、手がけている事業の規模を、以前よりも着実にぐんと大きく拡大していくことを指す言い方。 - 手を汚す(てをよごす):
面倒な作業や後ろ暗い不正な行為であっても、あえて自分から進んで直接手を下し、良くない結果まで自分の身に引き受けてしまう行為。
態度・様子
- 手のひらを返す(てのひらをかえす):
それまで見せていた手のひらをくるりと裏返して手の甲を見せる動作のように、これまでの態度や意見を急に正反対へ変えてしまう様子。 - 手塩にかける(てしおにかける):
食膳の不浄を払うために添えられた小皿の塩「手塩」で自分好みの味に整えたことから転じ、手間と愛情をかけて大切に育てる様子。 - 手玉に取る(てだまにとる):
曲芸師がいくつものお手玉を宙に軽やかに投げて自在に操るように、相手の心や行動までも自分の思い通りに巧みに操ってしまう様子。 - 手に汗握る(てにあせにぎる):
見ているだけで興奮や緊張のあまり手のひらに汗がじわりとにじみ出て、思わずぎゅっと握りしめてしまうほど、はらはらする様子。 - 手につかない(てにつかない):
他に気になることが頭から離れず、目の前でやらなければならない作業になかなか意識を集中させることができない落ち着かない状態。 - 手に入れる(てにいれる):
ずっと欲しかったものをようやく自分の手の中にしっかりと収めるように、地道な努力や工夫を重ねてついに獲得することを指す言い方。
「手・握る」に関する四字熟語
- 拱手傍観(きょうしゅぼうかん):
両手を胸の前で組み合わせる中国伝来の敬礼「拱手」から転じて、自らは何ひとつ行動を起こさず、ただ静かにそばで傍観している様子。 - 赤手空拳(せきしゅくうけん):
「赤手」は素手、「空拳」は何も持たない拳のことを指し、武器も頼れる後ろ盾もなく、自分の力だけで物事に立ち向かっていく姿。 - 束手無策(そくしゅむさく):
手を縄でぐるぐる巻きに縛られてまったく身動きが取れないかのように、事態を打開するための有効な手立てがどこにも見当たらない状況。
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