旅行の前日、荷造りを終えてスーツケースの鍵を閉めたときの高揚感。あるいは、大事なプレゼンの朝、資料の最終確認を終えて「よし、やれるぞ」と深呼吸する瞬間。
すべての手配を終え、あとは本番を待つだけという安心感に包まれた状態を、
「準備万端」(じゅんびばんたん)と表現します。
意味
「準備万端」とは、ある物事を行うための用意が、すべて整っていることです。
必要な物が揃っているだけでなく、心構えや段取りを含め、これ以上やることはないという完璧な状態を指します。
- 準備(じゅんび):物事を行うために、前もって用意すること。
- 万端(ばんたん):ある事柄に関するすべてのこと。「万」はあらゆるもの、「端」は物事の端(はし)、つまり細部までを含めた全般を意味します。
一般的には「準備万端整(ととの)う」という形で使われますが、会話では「準備万端だ」と言い切る形でも広く定着しています。
語源・由来
「準備万端」という言葉には、特定の歴史的な物語や由来となるエピソードはありません。それぞれの熟語が組み合わさってできた言葉です。
「万端」の本来の意味
「万端」は、「万(よろず)の端(はし)」と書きます。「端」という字には「はしっこ」という意味の他に、「事柄の糸口」や「半端なこと」など多様な意味がありますが、ここでは「とるに足らないこまごまとしたこと」まで含めた「ありとあらゆる事柄」を指します。
つまり、「大きなことから細かいことまで、準備すべき全項目」が「万端」であり、それらが完了している状態を表しています。
使い方・例文
ビジネスシーンから日常生活まで、何かの開始に向けて「完了した」ことを報告したり、自分自身を鼓舞したりする場面で使われます。
単に「終わった」という事実だけでなく、「手抜かりはない」「自信がある」という前向きなニュアンスを含んで使用されます。
例文
- キャンプに向けて、荷造りも買い出しも準備万端だ。だから安心して眠れる。
- プレゼンの資料作成からリハーサルまで、やるべきことは全てやった。あとは準備万端で本番に臨むだけだ。
- 「準備万端整いましたので、いつでも出発できます」と、幹事が参加者に伝えた。
「準備万端」と「準備万全」の違い
よく似た言葉に「準備万全(じゅんびばんぜん)」があります。
どちらを使っても意味は通じますが、厳密には以下のようなニュアンスの違いがあります。
- 準備万端
- 焦点:「範囲・項目」
- 意味:やるべきことの「すべて(All)」を網羅した状態。
- イメージ:チェックリストの項目をすべて埋め尽くした、「漏れがない」状態。
- 準備万全
- 焦点:「質・状態」
- 意味:少しの手落ちもなく、きわめて完全な(Perfect)状態。
- イメージ:体調や精神状態も含め、盤石で「隙がない」状態。
例えば、荷物やチケットの手配という「項目」が済んだときは「万端」、さらに体調管理もしっかり行い、絶対に失敗しない自信がある「状態」のときは「万全」を使うと、より的確に状況を伝えられます。
誤用・注意点
「準備万端整う」は重複表現ではない
「準備万端整いました」という言い回しに対して、「『万端』に『整う』という意味が含まれているから、重複表現(重言)ではないか?」と疑問に思う人がいます。
結論から言えば、これは誤用ではありません。
前述の通り、「万端」の本来の意味は「すべての事柄」という名詞であり、「整う」という動詞の意味は含まれていません。
そのため、「準備(に関する)すべての事柄(が)整いました」という意味になり、文法的にも正しい表現です。(※NHK放送文化研究所などの解説でも、誤用ではないとされています)
類義語・関連語
「準備万端」と似た意味を持つ言葉には、以下のようなものがあります。
- 用意周到(よういしゅうとう):
準備に手抜かりがなく、細部まで気が配られていること。 - 準備万全(じゅんびばんぜん):
少しの手落ちもなく、準備が完全であること。 - 備えあれば憂いなし(そなえあればうれいなし):
普段から準備をしておけば、いざという時に心配しなくて済むという教訓。 - 手抜かりなし(てぬかりなし):
準備や処置に、うっかりした不備や抜けがないこと。
対義語
「準備万端」とは対照的な意味を持つ言葉は以下の通りです。
- 準備不足(じゅんびぶそく):
用意が足りていないこと。 - 泥縄(どろなわ):
事が起きてから慌てて準備をすること。「泥棒を捕らえて縄を綯う」の略。 - ぶっつけ本番(ぶっつけほんばん):
事前の練習や準備なしで、いきなり本番を行うこと。 - 出たとこ勝負(でたとこしょうぶ):
準備や計画をせず、その場の成り行きに任せて事を運ぶこと。
英語表現
「準備万端」を英語で表現する場合、状況に応じていくつかのフレーズが使われます。
all set
- 意味:「すっかり整って」
- 解説:日常会話からビジネスまで幅広く使える、最も一般的な表現です。
- 例文:
We are all set for the meeting.
(会議の準備万端です)
ready for anything
- 意味:「何が起きても大丈夫」
- 解説:単なる準備完了だけでなく、どんな事態にも対応できる自信や覚悟(万全さ)を強調する場合に使います。
- 例文:
I’m ready for anything.
(私は準備万端だ)
まとめ
「準備万端」とは、必要な手配や心構えが隅々まで整い、もはや憂いがない状態を表す言葉です。
単にタスクを消化しただけでなく、その先にある本番を自信を持って迎えられる心理状態までも映し出しています。「準備万端です」という報告は、相手に安心感を与え、自分自身には「やり切った」という肯定感をもたらしてくれることでしょう。





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