意味
「立つ鳥跡を濁さず(たつとりあとをにごさず)」とは、立ち去る者は自分がいた場所や関わった物事をきれいに後始末すべきであるという意味です。
単に物理的な場所を掃除するだけでなく、組織を離れる際の仕事の引き継ぎや、人間関係の整理など、後に残る人々へ迷惑をかけない責任ある振る舞いの大切さを説いています。
また、引き際が潔いことのたとえとしても使われます。
語源・由来
「立つ鳥跡を濁さず」の由来は、水面から飛び立つ水鳥の習性にあります。
カモやサギなどの水鳥が水面から空へ飛び立つ際、羽ばたきで水を濁らせることなく、静かに、そして鮮やかに去っていく様子から生まれました。
その姿を人間の引き際の美しさに例えたものです。
ただ、実際には水鳥が飛び立つときに水はふつう濁り、澄むのはしばらくたってからです。
人が鳥の去り際を美しく見立てた言葉だとする見方もあります。
使い方・例文
場所を移動する時や、組織・役割を離れる際の責任感やマナーを示す場面で使われます。
例文
- 退職にあたり、完璧な引き継ぎ資料を用意して、立つ鳥跡を濁さずに徹した。
- キャンプ場を元より美しく清掃し、立つ鳥跡を濁さずで帰る。
- 不祥事の責任を取り、言い訳もせずに辞任した彼の引き際は、立つ鳥跡を濁さずだった。
誤用・注意点
「立つ鳥跡を汚さず」は誤りです。
「あと」を「後」と書くのは望ましくないとされ、「飛ぶ鳥跡を濁さず」の形も避けたほうがよいとされます。
類義語・関連語
「立つ鳥跡を濁さず」と似た意味を持つ言葉には、以下のようなものがあります。
- 飛ぶ鳥跡を濁さず(とぶとりあとをにごさず):
同じ意味で使われる形。鳥の動作を「立つ」ではなく「飛ぶ」と表現したもの。 - 有終の美(ゆうしゅうのび):
物事を最後まで立派にやり遂げ、美しく締めくくること。 - 終わりよければすべて良し(おわりよければすべてよし):
結末さえ良ければ、そこに至る過程の問題は問われないということ。
対義語
「立つ鳥跡を濁さず」とは対照的な意味を持つ言葉には、以下のようなものがあります。
- 後は野となれ山となれ(あとはのとなれやまとなれ):
自分が去った後のことは、どうなっても構わないという無責任な態度。 - 後足で砂をかける(あとあしですなをかける):
恩義のある場所を去る際に、さらに迷惑をかけたり裏切ったりすること。 - 旅の恥はかき捨て(たびのはじはかきすて):
旅先などの知人がいない場所では、どんなに恥知らずなことをしても構わないという考え。
英語表現
「立つ鳥跡を濁さず」に近い英語には、次のような言い方があります。
Leave a place better than you found it
「見つけた時よりも美しくして去りなさい」
場所の掃除や環境への配慮など、後始末のマナーを言うときの言い回し。
When you finish your picnic, please leave the park better than you found it.
(ピクニックが終わったら、公園を来た時よりもきれいにして帰ってください。)
「立つ鳥」は古い形ではサギだった
安土桃山時代には、このことわざは「鷺は立ちての跡濁さぬ」という形で言われていました。
今の形は「鳥」としか言いませんが、古い形は鳥をサギと名指ししています。
「立ちて」は飛び立って、という意味で、サギが飛び立ったあとも水が濁っていない様子を描いています。
今の形も、江戸時代の初めの『日葡辞書』(日本語をポルトガル語で説明した辞書)にすでに載っています。
「立つ鳥跡を濁さず」の「鳥」は、サギを思い浮かべて読んでもよいことになります。














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