ことわざ

後は野となれ山となれ

(あとはのとなれやまとなれ)

目先のことだけを考え、将来の結果を顧みない無責任な態度。


12文字の言葉 / 「あ」から始まる言葉
後は野となれ山となれ ことば
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意味

「後は野となれ山となれ(あとはのとなれやまとなれ)」とは、目先のことだけを考え、将来の結果についてはどうなっても構わないという無責任な態度を指す言葉です。

自分の行動が後にどのような災いをもたらそうとも、今の自分が良ければそれでいいという「投げやりな心理」を表しています。
一時的な欲望や感情に流され、長期的な視点や周囲への配慮を欠いている状態を戒める際や、自嘲気味に語る際に用いられます。

語源・由来

「野となれ山となれ」の「なれ」は「なる」の命令形で、後はたとえ野になろうと山になろうとかまいはしない、という投げやりな言い方です。

後のことは自分の知ったことではないという無責任な態度を言うのが普通ですが、「先のことはともかく」といった軽い気持ちで使われることもあります。

使い方・例文

目の前の状況から逃避したいときや、限界を超えて「どうにでもなれ」と開き直った場面で使われます。
家庭生活、趣味、仕事など、責任を放棄するあらゆる文脈に当てはまります。

例文

  • 後は野となれ山となれと、貯金をすべて使い切る。
  • 仕事を放り出し、後は野となれ山となれと帰宅した。
  • 試験勉強を諦めて、後は野となれ山となれの心境で眠る。
  • 後は野となれ山となれの精神で、無計画な旅に出る。

誤用・注意点

この言葉は、基本的に「無責任」「投げやり」「自分勝手」という否定的なニュアンスを伴います。
そのため、前向きな「なるようになる」という楽観的な意味で使うと、誤解を招く恐れがあります。

  • 「ケ・セラ・セラ」との違い
    「なるようになる」という言葉には「未来を信じて受け入れる」という明るい響きがありますが、「後は野となれ山となれ」は「後のことは知ったことではない」という突き放した無責任さが主体です。
  • 目上の人への使用
    自身の失敗を報告する際などに使うと、「責任感がない」と判断され非常に失礼にあたります。
    特にビジネスシーンで他人の行動を評価する際も、強い非難の意味を持つため慎重な判断が必要です。

類義語・関連語

「後は野となれ山となれ」と似た意味を持つ言葉には、以下のようなものがあります。

  • 破れかぶれ(やぶれかぶれ):
    自暴自棄になり、どうなってもいいとやけになること。
  • 捨鉢(すてばち):
    絶望して、物事を投げやりな態度で扱うこと。
  • 刹那主義(せつなしゅぎ):
    過去や将来を考えず、今この瞬間だけの快楽を追求する考え方。
  • 旅の恥はかき捨て(たびのはじはかきすて):
    旅先では知る人もいないので、どんなに恥ずかしいことをしても構わないという考え。
  • 当たって砕けろ(あたってくだけろ):
    成功するかどうか考えず、思い切ってやってみること。
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対義語

「後は野となれ山となれ」とは対照的な意味を持つ言葉は以下の通りです。

  • 備えあれば憂いなし(そなえあればうれいなし):
    普段から準備をしておけば、いざという時に困ることはない。
  • 石橋を叩いて渡る(いしばしをたたいてわたる):
    非常に用心深く、安全を確認してから物事を行うこと。
  • 先見の明(せんけんのめい):
    将来起こることをあらかじめ見通す賢さ。
  • 終わり良ければすべて良し(おわりよければすべてよし):
    結末が良ければ、過程の不手際などは問題にならないこと。

英語表現

「後は野となれ山となれ」に近い英語の言い方には、次の表現があります。

After me, the deluge

「我亡き後に洪水よ来たれ」
自分の死後や去った後に、どんな災難が起きても構わないという究極の無責任さを表します。
フランス王ルイ15世の言葉(Après moi, le déluge)が由来とされます。愛妾ポンパドゥール夫人が言ったとされるのは「我々の後に」(Après nous, le déluge)で、こちらはロスバッハの戦いに敗れた王を慰めた言葉と伝えられます。

The director quit the struggling project, thinking, “After me, the deluge.”
(ディレクターは苦境にあるプロジェクトを辞め、「後は野となれ山となれ」と考えていた。)

近松の浄瑠璃では「野となれやまと」

この言い回しは、近松門左衛門ちかまつもんざえもんの浄瑠璃じょうるり『冥途の飛脚めいどのひきゃく』(1711年初演)に出てきます。
預かった金に手を付けた飛脚屋の忠兵衛ちゅうべえが、遊女ゆうじょの梅川うめがわと二人で大坂から逃げ出す場面です。

二人は「あとは野となれやまとぢや」と、足の向くまま去っていきます。
「山と」の所が「やまと」になっていて、二人はこのあと忠兵衛の故郷の大和へ向かいます。
昭和の注釈書は、この句を「跡は野となれ山となれ」に掛けた言い方だと説明しています。

近松は1718年の『山崎与次兵衛寿の門松やまざきよじべえねびきのかどまつ』でも、「内は野となれ山となれ」という形を使いました。
どちらも、目の前のことのために後の暮らしを投げ出す人物に添えられていて、今の「後は野となれ山となれ」と同じ向きで使われています。

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