意味
「鶴の一声(つるのひとこえ)」とは、大勢の議論を否応なしに抑え、一瞬で結論を決定づける有力者や権威者の一言のこと。
何人もの人があれこれ議論しても決まらないことが、発言者の立場や影響力によって即座に決着する様子を指します。
語源・由来
「鶴の一声」の由来は、古くから日本に伝わる「雀の千声鶴の一声(すずめのせんこえつるのひとこえ)」という対比表現にあります。
すずめのような小さな鳥が千羽集まって騒ぎ立てても大した影響力はありませんが、大型の鳥である鶴が一度鳴けば、その声は非常に甲高く、周囲の雑音をかき消して遠くまで響き渡ります。
この生態の対比から、平凡な人々の数多くの意見よりも、優れた人物や権力者の圧倒的な一言のほうが価値があり、事態を動かす力があるという意味で使われるようになりました。
使い方・例文
「鶴の一声」は、会議や組織における意思決定など、トップの判断で事態が急展開する場面で使われます。
ビジネスシーンだけでなく、家庭や学校といった日常的な集団の場でも用いられます。
- 社長の鶴の一声で新プロジェクトの採用が決まった。
- 家族旅行の行き先が祖父の鶴の一声で温泉になった。
- 文化祭の出し物が担任の鶴の一声で劇に変更された。
類義語・関連語
「鶴の一声」と似た意味を持つ言葉には、以下のようなものがあります。
- 天の声(てんのこえ):
目に見えない絶対的な権力者からの指示や、神仏からの啓示のこと。 - 上意下達(じょういかたつ):
上位の者の意思や命令を、下位の者に徹底させること。 - 至上命令(しじょうめいれい):
絶対に服従しなければならない、権力者からの命令のこと。
英語表現
「鶴の一声」を英語で表現する場合、以下の言葉が適しています。
the final word
意味:最終的な決定権、最後の一言
The CEO has the final word on all hiring decisions.
(採用に関する決定は、すべてCEOの鶴の一声にかかっている。)
「鶴の一声」は、もとは聴く者の心にしみる声のことだった
「鶴の一声」は、初めから権力者の一言を指していたわけではありません。
もとは、聴く者の心にしみいる、ひときわ抜きん出た声のことをいいました。
それが、先にあったことわざ「雀の千声鶴の一声」の中で「雀の千声」と比べられるうちに、騒がしい場で発せられるひときわ目立つ声を表すようになりました。
さらに「鶴の一声」だけで、騒然とした場をたちまち静める一言という意味で使われるようになったものです。
太宰治の小説『右大臣実朝』(1943年)には、この意味で使われた場面があります。
朝廷から命じられた賀茂川の堤の修築で、負担の割り当てに幕府の重臣が苦情を申し立て、話がこじれかけたとき、将軍源実朝の一言で一座が静まる場面です。
またもや紛糾しかけた時に、俗にいふ鶴の一声とでも申すものでございませうか、叡慮ハ是非ヲ越エタモノデス 一座はしんとなりました。
(太宰治『右大臣実朝』1943年)












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