意味
「生き馬の目を抜く(いきうまのめをぬく)」は、生きた馬の目玉さえ気づかれずに抜き取るほどの素早さから転じて、抜け目なく人を出し抜き、すばやく利益をさらう狡猾さを表す言葉です。
語源・由来
警戒心の強い馬が生きている状態のまま、痛ませることも気づかせることもなく眼球を抜き取ってしまうという、物理的にあり得ない早業を誇張した比喩表現です。
室町時代には、「抜く」の代わりに「くじる」(= えぐる)を使った「いき馬の眼をもくじり」の形で用例が見られます。
異形として「生き牛の目を抉る(いきうしのめをくじる)」もあります。
使い方・例文
「生き馬の目を抜く」は、激しい競争社会や、油断ならない人物を表現する場面で使われます。
- 生き馬の目を抜く業界で、他社にシェアを奪われた。
- 彼は笑顔で情報を盗む、生き馬の目を抜く男だ。
- 生き馬の目を抜く大都会のスピードに圧倒される。
類義語・関連語
「生き馬の目を抜く」と似た意味を持つ言葉には、以下のものがあります。
- 油断も隙もない(ゆだんもすきもない):
少しも気を許すことができず、相手が巧みに付け入ろうとしてくる様子。 - 海千山千(うみせんやません):
世の中の裏表を経験しており、悪賢くてしたたかに立ち回る人物のたとえ。
対義語
「生き馬の目を抜く」と反対の意味を持つ言葉には、以下のものがあります。
- 愚鈍(ぐどん):
判断力や行動が鈍く、気が利かずに素早い対応ができない様子。 - 温厚篤実(おんこうとくじつ):
性質が穏やかで情に厚く、誠実で他人を騙すような振る舞いをしないこと。
英語表現
cutthroat competition
熾烈で無慈悲な、食うか食われるかの激しい競争を表す表現。
They survived the cutthroat competition.
(彼らは生き馬の目を抜くような競争を生き残りました。)
He’d take the shirt off your back
「あなたが着ているシャツまではぎ取っていくだろう」という意味で、take the shirt off one’s back(法外な金を巻き上げて相手を困らせる)を使った言い方。
相手から何もかも奪いかねない油断ならない人物を表す表現
Be careful with him. He’d take the shirt off your back.
(彼には気をつけて。生き馬の目を抜くような男だから。)
「生き馬の目を抜く」は人物をほめる言葉に向かない
古い用例を見ると、この言葉が向けられてきたのは油断のならない悪者です。
室町時代の御伽草子『鴉鷺合戦物語』は、カラスとサギの合戦に集まった小鳥たちが、押し買い(= 無理に安く買い取ること)や、よその田の稲を勝手に刈り取る乱暴を働いたと書いています。
そして、すきがあれば味方の物まで奪い、「いき馬の眼をもくじりつべし」(生きた馬の目でもえぐり取りかねない)、法を外れた荒くれ者だと続けます。
「抜く」の代わりに「くじる」(= えぐる)を使った異形です。
江戸時代の『東海道中膝栗毛』では、主人公の一人の北八が、道でぶつかった田舎の老人をののしります。
ところがその老人に、あとで酒と料理をおごるふりをされて勘定を押しつけられ、北八は「ごうはらな生馬の目をぬきやがった」(腹立たしい、すばやく出し抜きやがった)とくやしがります。
どちらも、この言葉で言われているのは奪う側やだます側です。
素早さだけでなく手口のずるさまで含む言葉なので、目上の人の手腕をほめるつもりで「生き馬の目を抜く方ですね」と言うと、悪口に聞こえます。
同じく、ひどく驚いた様子を表すのに使うのも誤りです。














コメント