意味
「非の打ち所がない(ひのうちどころがない)」とは、どこを探しても欠点らしい欠点が見当たらないほど、完璧に仕上がっている状態をいいます。
対象の優れた様子に対する、非常に強い肯定や手放しの称賛を込めて使われます。
- 非(ひ): 欠点や短所、良くない点。
- 打ち所(うちどころ): 非難すべき箇所や、欠点を指摘するポイント。
語源・由来
古くは、文章を批評して評価の印をつけることを「批点を打つ」と呼んでいました。
同じように、人の悪いところを指摘して非難することを「非を打つ」と言い、江戸時代の随筆『蘐園雑話』(明和年間・1764〜72年頃の成立とされる)にも、この言葉が見られます。
それに悉く非を打て標出せられしを見たりき
この「非(欠点)を打つ(指摘する)所(箇所)」が全く存在しないという事実から、現在の完璧さを称賛する意味として定着しました。
使い方・例文
「非の打ち所がない」は、人柄や能力、作品の完成度、計画の緻密さなど、あらゆる対象を最高レベルで評価する場面で使われます。
- 展覧会に出品された風景画は、構図から色彩まで非の打ち所がない。
- 彼の冷静な判断と迅速な救助活動は、誰の目から見ても非の打ち所がないものだった。
- 地域の防災訓練の準備は、細部まで非の打ち所がないほど入念に行われた。
誤用・注意点
「火の打ち所がない」と書くのは誤りです。
「非」は欠点のことで、火打ち石の「火を打つ」とは関係がありません。
類義語・関連語
「非の打ち所がない」の類義語には、以下のような言葉が挙げられます。
- 完璧(かんぺき):
欠点や不足がなく、非常に優れている状態。 - 申し分ない(もうしぶんない):
不満や非難すべき点がなく、十分に満足できる状態。 - 十全(じゅうぜん):
まったく欠点がなく、すべてが十分に備わっている様子。
「非の打ち所がない」と「完全無欠」の違い
どちらも欠点や不足がなく、非の打ち所のないことを表す、意味のごく近い言葉です。
違いは言葉の成り立ちと使う形にあります。
| 非の打ち所がない | 完全無欠 | |
|---|---|---|
| 意味 | 欠点として指摘すべき箇所が 全くなく、完璧な様子 | 欠点や不足がなく、 完璧に備わっている様子 |
| 成り立ち | 「非(悪いところ)を打つ(指摘する)所」が 無い、という慣用句 | 「完全」と「無欠」という同じような意味の語を 重ねて強めた四字熟語 |
| 使う形 | 「非の打ち所がない」 「非の打ち所のない〜」 | 「完全無欠な〜」 「完全無欠の〜」 |
対義語
「非の打ち所がない」の対義語には、以下のような言葉が挙げられます。
- 欠点だらけ(けってんだらけ):
良くない点や不十分な部分が非常に多く存在している状態。 - 穴だらけ(あなだらけ):
物事の計画や論理に、矛盾点や見落としが多数ある様子。 - 不備(ふび):
必要なものが十分に整っておらず、完全ではない状態。
英語表現
flawless
意味: 傷ひとつなく、欠点がない完璧な状態
Her piano performance was flawless.
(彼女のピアノの演奏は非の打ち所がなかった。)
beyond reproach
直訳: 非難を超えている
意味: 非難のしようがなく、申し分ない状態
His conduct at the ceremony was beyond reproach.
(式典での彼の振る舞いは非の打ち所がなかった。)
明治の講談は美女も名馬も「非の打所もない」
寄席の講談を文字に起こした明治の本には、「一点の非の打所もない」という言い回しがたびたび出てきます。
1899年の本では美しい女性を、1911年の本では大名が乗るのにふさわしい名馬を、この言い回しでほめています。
「打ち所」の代わりに「打ちよう」を使う形も、同じころの小説に出てきます。
泉鏡花の『白鷺』(1910年)は、背丈・顔立ち・着こなしを並べて「何処に非の打ちようもない」と書きました。
夏目漱石の『彼岸過迄』(1912年)は、友人の家の二階を「これと云って非の打ちようのない」部屋と書いています。











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